狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第3回ー

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★第3節 最新のフルディジタルプロセスCD制作とは

最1項 最新のプロユースは音に入り口からディジタル化

嘗て(20世紀)はトランスヂューサー(マイクロフォン&プリAmp)も含めてミキシングコンソール出口まではフルアナログでミキシングコンソールOutからデジタイザを通ってマルチトラックデジタル録音されていましたが今世紀に入って「ディジタルマイクロフォン」開発と規格統一が進み、現在、メジャーレーベルのスタジオではフルディジタルプロセスでCDが制作されています!

インディーズレーベルではアナログマイク!

ここが、アマチュアと違うところで、アマチュア(インディーズ含む)は「アナログマイク→マルチチャネルPreAmp」USBデジタル転送→パソコンでミキシング&マルチトラック記録しているわけですが、メジャーのスタジオでは「フルディジタルプロセス」になっています(※4)

2001年に ASEEBU(欧州放送連合)や、ノイマン、ゼンハイザー、SONY、などのマイクロフォン有名メーカー、が参加してデジタル伝送マイクロフォンに関するAES(オーディオ技術者協会) 42-2001という 24bitの2ch伝送のディジタルマイクロフォンに関する伝送規格が制定さえました。

録音現場で用いられるコンデンサーマイクロフォンにはDC48vの給電ラインが必要で、長年マイクロフォンヘッドアンプ(ブースとプリアンプ)から供給するファントム電源方式が主流で、マイクロフォンのデジタル伝送化を阻んでいましたが「高性能なリチウムイオンバッテリー」の登場で「マイクロフォン本体」に48V供給電源が一体化できるようになり、デジタル伝送が可能となりました。

つまり2001年以降に収録された最新録音「DDDプロセスCD」(詳細後述)では、フルデジタルプロセス化が達成されているコンテンツが増えている訳です!

これによって、1965年当時の「ショルティの神々の黄昏」録音の中に混入した有名な「19Khz」付近にある「謎のピークノイズ」などの障害がなくなったわけです!

これを簡略化した民生用の規格がおなじみのS/PDIF規格で、パソコンでも端子が用いられています。

具体的に録音現場では

デジタルマイク→(24bit=16,777,216諧調総合SN約144dB )→録音スタジオミキシングコンソール→(32bit;4,294,967,296諧調・約192dB ・マルチトラックマスター音源;SSDなどのメディアで記録)

但し現在最高の性能を持つ24bittデジタル伝送マイク・32bitミキシングコンソールでも総合S/N130dB(デバイスのS/ N)程度といわれています!

更に極端なオンマイクでのマルチマイク録音「マイクロフォン」の耐音響(音圧)レベルオーバーの問題もあります。

最近はマイク・デジタルコンソールの性能(明瞭度)が上がったので、昔のような極端なオンマイク設定は、放送録音以外は少なくなってきています。(※昔は逆に放送録音では天吊りステレオマイクロフォンによるオフマイク設定1点収録が主流でした。)

マスタリングスタジオでは

32bitで記録されたマスターメディアを、32bitディジタルコンソールで2CHにトラックダウンミキシング、編集、イコライジング、プリエンファシス(ダイナミックレンジ圧縮)などの32bitディジタルマスタリングを行い16bit:32,768step、総合S/N96dB)にデータ圧縮D/D変換して(CDRなどのメディアで)16bitプリントマスターを制作するわけですが、LP制作用のマスタリングでは後述する「アナログLP用マスタリングの問題点 「ドンシャリマスタリング?」があげられます。

CDプレス?工場では

16bitプリントマスターからCDプリント原盤を制作→CD(16bitクローン)制作となるわけです。

が実際には、現状国内にある一般のレンタル録音スタジオの機材は「古くて」(※41)このような高品位フルディジタルコンテンツ制作は行えないのが日本国内の現状です!

参※41)当サイト関連記事 《本物の重低音を求めて!》 世界の大砲比べ!はこちら。

★第2項 デジタルメディアは庶民の味方!

量子化による基本的な問題(量子化ノイズ)や、陰で囁かれることの多い民間レンタルスタジオの「録音機材」の技術的問題...などいろいろ問題を抱えたデジタル記録(※0)ですが、LP時代に比べれば飛躍的に記録音源としての信頼性が向上していることは事実です。

別項で詳述しましたように「LPレコード再生」は「クオリティー=お金」の世界で、とても数万円の「オモチャLPプレーヤー」などで再生できる代物ではありません!

デジタルメディアの最大の美点は「データ保存性」と「リーズナブル」の2点に尽きるでしょう!

サイマル放送は実はハイファイ

余談として、ラジコ・らじるらじるはNTTのDOKOMO電話と同程度の音だと説明されることが多いですが、これはあるいみ正解でもあり、ハイファイ程度から見れば間違いです!

周波数特性は「FMアナログ放送」と同じソースなので、Dレンジ は40㏈程度に圧縮されていますがそれでも周波数特性は20~17KHzはあります。

第3項 参考データ、デジタル録音維新の歴史をたどると...

1969年5月 NHK放送技術研究所で放送用VTRをトランスポートに用いた世界初のPCMデジタル録音試作機完成(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)。

1972年に当時の日本コロンビアが開発した実用PCM録音機もおなじ13bitなので共に、Peekレベル周辺は旧来通りのアナログ非直線処理(リミッター)でダイナミックレンジ圧縮を行っていました。

1978年に 英DECCAが独自開発したデジタル録音機は18ビットで直線量子化でダイナミックレンジ圧縮は行ていません。

一方Decca Recordsがデジタル録音機を本格的に使いだしたのは、DENONに遅れること7年後の1979年 1月1日、の「ニューイヤー・コンサート」(ボスコフスキー指揮)からの事で、同年春に同社初のデジタル録音レコードとして発売されました。

1982年10月1日に販売開始したデジタル媒体コンパクトディスク;CDでは量子化ビットが16bitしかなくて、楽音必須再現能力7bitを差し引いた9bit約54dBがダイナミックレンジとなり、これでは生オケのDレンジ100㏈以上のリニア記録は不可能なので、コンプレッサーを使った圧縮処理と旧来のアナログリミッター回路で54dBに収まるようにアナログマスタリングしてA/D変換して16bitの直線量子化CDとして販売されています。(※CD発売当初は汎用コンピューターが無くてノンリニア編集ができなかったのでデジタル→アナログ→CDのいわゆるDADプロセス(※前項参照)でCD制作されていました。

1982年発売開始のCD、1984年5月から試験放送(1989年6月1日本放送開始)されたアナログ衛星TV放送のBモードデジタルステレオ、1987年発売開始のDAT(48KHzサンプリングモード)、1992年8月3日放送開始のCS-PCM音声放送、などの配信メディアの量子化ビットは16bitどまりでした。

嘗てのディジタル配信メディアでは

1982年発売開始のCD、1984年5月から試験放送(1989年6月1日本放送開始)されたアナログ衛星TV放送のBモードデジタルステレオ、1987年発売開始のDAT(48KHzサンプリングモード)、1992年8月3日放送開始のCS-PCM音声放送、などの配信メディアの量子化ビットは16bitどまりでした。

実際には、前途した通りダイナミックレンジは残り10bit;512step≒54㏈に圧縮せざるを得ない訳ですが。

更に衛星Aモードディジタル放送や、DATのLP(ロングプレイ32kHzサンプリング)モードでは量子化ビットが12bit:4,096step≒72㏈しかないので、FM放送同様にプリエンファシス(アナログ非直線圧縮;コンプレッサー)とリミッター処理によるPeekレベル周辺圧縮でFM放送同等のf特とDレンジ(7bit約42dB)を確保していました。

21世紀に入ってメジャーレーベルはフルディジタルプロセスに

現状はパソコンの発達で「ノンリニア編集」が可能となって、デジタルマスタリングが可能となり、2001年以降はマイクロフォンもデジタル伝送化されて、録音に関するすべてのプロセスがディジタル化されて「フルディジタルプロセス」のCDが制作可能となりました。

独自開発、自社製のサンプリングレート48kHz18ビット直線量子化のデジタル録音機 を開発した1978年以前は、有名なショルティ盤の「ニーベルングの指輪4部作」(1958年9月から1965年にかけて録音)もノイズリダクションシステム無しの普通?の「マルチトラックレコーダー」で録音されていました。

デジタル録音、コンテンツ配信の歴史

1969年5月 NHK放送技術研究所で、トランスポートに放送用VTRを用いた世界初のPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作機開発。

1970年 「Studer A80」登場究極のアナログレコーダーとしてモノラル仕様、ステレオ・チャンネル、4チャンネルから、最大24チャンネルまでのバージョンがありデジタル時代に入った1988年まで製造された。

1972年 当時の日本コロンビアがPCM方式自社製デジタル録音機第1号機 開発、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始。

1978年 英DECCA18ビット直線量子化、サンプリング周波数48kHzのデジタル録音機を自社開発、
1979年 1月1日、英DECCAボスコフスキー指揮ウィーン・フィルによる「ニューイヤー・コンサート」をデジタル録音、英DECCA初のデジタル録音レコード発売。

同年4月16日 - RCA米サウンド・ストリーム社製デジタル録音機を採用デジタル録音開始(オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団による、バルトーク作曲「管弦楽のための協奏曲」)

同年5月5日 CBS デジタル録音開始(ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」メータ指揮ニューヨーク・フィル)。

1982年10月1日 ソニー、日立(Lo-Dブランド)、日本コロムビア(DENONブランド、日立のOEMで発売)から、世界初のCDプレーヤーが発売。同日、CBSソニー、EPICソニー、日本コロムビアから、世界初のCDコンテンツが発売!

1983年 - RCA コンパクト・ディスク・発売開始する

1986年、販売枚数ベースでCDがLPを追い抜く。

1990年代前半にかけて、LPは国内では生産されなくなって行きましたが、ヨーロッパなどではまだまだ主流で日本国内でも輸入盤などは手に入っていました。

2001年 AES 42-2001としてデジタル伝送マイクロフォン規格制定、以後放送録音も含めクラシックコンテンツを主体に、フルディジタルプロセスの時代となる。


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日

投稿者:デジタヌ


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