連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第4回ー
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第2章第1節 ハイレゾオーディオ はWEB配信音楽コンテンツに席巻された!
前書き(要約)レコード業界の生き残りをかけた敗者復活戦?
21世紀に入ってiPhoneに代表される「スマホ」によるWEB配信音楽コンテンツの聴取が一般化して、CDの販売は急激に落ち込みました。
そこでBluetoothヘッドフォン、やBluetooth アクティブスピーカーしか売れ筋商品ががなくなってしまった"オーディオ機器メーカー"と"レコード会社"が生き残りをかけて「プロパガンダ」しだしたのがハイレゾリューションオーディオ俗にいうハイレゾです。
本来はプロ用録音機材であるはずのハイレゾオーディオの一般消費者への押し付け?は、スマホによるMP3音楽コンテンツWEB配信に席巻された!レコード業界・オーディオ機器メーカーの生き残りをかけた"敗者復活戦"といえるのではないでしょうか?...
第1項 プロ用途としてのディジタル録音機材は素晴らしい技術革新ツール!
第1目 デジタル録音初期はDADプロセスがほとんど
1969年5月 NHK放送技術研究所で開発・試作した世界初のPCMデジタル録音機はトランスポートに放送用VTRを用いてサンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bitでした。1972年に当時の日本コロンビアが開発した実用PCM録音機もおなじ13bit。
初回で述べましたように
実際のA/D変換では、DCレベルをデジタル変換するので、AC波形の振幅範囲としては、1bit差し引いた値となり16bitでは15bit:16,384step≒84㏈という事になり、さらに楽音の最低分解能6bit;32stepのうち片側5bit;16stepを15bitから差し引いた10bit;512step≒54㏈つまり量子化ビット数から6bitを引いた値が有効ダイナミックレンジという事になります。
なので共に、Peekレベル周辺は旧来通りのアナログ非直線処理(リミッター)でダイナミックレンジ圧縮を行っていました。
1969年5月 NHK放送技術研究所で放送用VTRをトランスポートに用いた世界初のPCMデジタル録音試作機とそれに続いて1972年に当時の日本コロンビアが開発した実用PCM録音機(サンプリング周波数47.25kHz)も量子化ビット数は13bitでした。
1978年に 英DECCAが独自開発したデジタル録音機は18ビットで直線量子化でダイナミックレンジ圧縮は行っていません。
1982年10月1日に販売開始したデジタル媒体コンパクトディスク;CDでは量子化ビットが16bitしかないので、楽音必須再現能力6bitを差し引いた10bit約54dBがダイナミックレンジとなり、これではオーケストラのDレンジ100㏈以上のリニア記録は不可能なので、コンプレッサーを使った圧縮処理と旧来のアナログリミッター回路で54dBに収まるようにマスタリングしてA/D変換して16bitの直線量子化CDとして販売されています。(※CD発売当初は汎用コンピューターが無くてノンリニア編集ができなかったのでデジタル→アナログ→CDのいわゆるDADプロセスでCD制作されていました。
参※1)
- 6bit;64step≒36㏈(最低波形分解能)
- 13bit:4096step≒72㏈(実ダイナミックレンジ7bit;約36dB)
- 16bit:32,768step≒90㏈(実ダイナミックレンジ10bit;約54dB)
- 18bit:131,072step≒102㏈、(実ダイナミックレンジ12bit;約66dB)
- 20bit;524,288step≒114㏈(実ダイナミックレンジ14bit;約78dB)
- 24bit;8,388,608step≒138dB(実ダイナミックレンジ18bit;約102dB)
※更に前回記したように「量子化ノイズ」はこれとは異なりますので総合的なS/N比はこの値とは異なります。
グラモフォンレーベルが考え出して表記したCD制作分類表記
以下はアナログ・デジタル機材混在時期に制作されたCDに関してフォノグラム(グラモフォンレーベルが考え出して表記した分類表記で現在はほとんど表記されなくなりました(フルデジタルプロセスで必要がなくなった?)
「DDD」と表示されたCDとは、
デジタル・レコーダーの実用化以降に、デジタル方式でマルチ録音されたソースを元に、デジタル・レコーダーでミキシング、あるいは2chデジタルレコーダーで直接録音するというフルデジタル工程で製作されたものを、デジタル・マスタリングしたという意味である。
「ADD」と表示されたCDとは、デジタル・レコーダーが実用化される以前に、あるいは実用化後であっても、製作者の意図で敢えてアナログ方式でマルチ録音されたソースを元に、デジタル・レコーダーでミキシング、あるいは2chデジタルレコーダーで直接録音したものを、デジタル・マスタリングしたという意味である。
「AAD」と表示されたCDとは、デジタル・レコーダーが実用化される以前に、あるいは実用化後であっても、製作者の意図で敢えてアナログ方式でマルチ録音されたソースを元に、アナログ・レコーダーでミキシング、あるいは2chアナログレコーダーで直接録音するというフルアナログ工程で製作したものを、デジタル・マスタリングしたという意味である。
「DAD」と表示されたCDとは、デジタル・レコーダーの実用化以降にデジタル方式でマルチ録音されたソースを元に、アナログ・レコーダーでミキシングしたものを、デジタル・マスタリングしたという意味になる。
これは、初期のデジタル録音がアナログ・テープのような編集が難しかったことや、デジタル信号を直接処理できるミキシングコンソールが普及する以前には...敢えてドルビーSRなどの高性能なノイズリダクションと組み合わせる形でアナログ・レコーダーを使用してミキシングや編集を行う事例があったことによる。《Wikipediaより引用》
第2項 "アナログレコード教"信者の間違った指摘
生き残り(生活!)をかけて必死にアナログオーディオ(テープレコーダー、LP)を擁護している人たちは、
『アナログ録音では「弱奏(弱音)」ノイズに隠されるだけだが、デジタル録音では「音が消失!」してしまう』
と指摘していますが、これは完全に的外れの指摘です!
現在のプロアーティストの録音現場でプロ用録音機材として用いられるハイビット(ハイレゾ)録音機材では音の入り口の24bitデジタル伝送マイクロフォン(内部A/D変換デバイスS/N130dB)でも100dB以上のダイナミックレンジを持つオーケストラの生サウンドを最弱・楽音比で32dB以上のS/Nを保ったままでほぼ「無圧縮で収録可能」となっています。
つまり録音時によほどのミスでもしない限りは、「楽音消失」などありえません!
詳しくは 第1回をご覧ください。
HD、SSD記録で録音モニターが可能に
初期のデジタル録音機と絶対的に違うのは、プレイバックモニターができるようになったことです!
20世紀の初期のデジタル録音では「18bit、20bit」のプロ用機材でも、記録媒体は「テープ」でした。
つまりヘリカルスキャン方式の放送用VTRに近い(場合によってはそのもの)テープレコーダー型でアナログテープレコーダーのように録音ヘッド直後に再生ヘッドを配置できず、プレイバックモニターが不可能で、高精度LEDピークレベル計のレベル表示だけが頼りでした。
つまりうっかりすると最弱音必須楽音レベル7bit(128step)を切ってしまい、「楽音消失」レコーディングミスが生じていたわけです。
しかし21世紀の現在では、HD:ハードディスクやSSD(半導体ディスク)媒体を使用するようになり、プロ用機材はもちろんアマチュア用の録音機材(パソコン)でもデータ書き込み(録音)処理と同時に読み出し処理で「プレイバックモニターが可能」となったわけです。
第2目 クラシックコンテンツ収録では現在でもドルビーNRとデジタルリミッターが
- 24bit;8,388,608step≒138dB(実ダイナミックレンジ18bit;約102dB)
- 32bit;2,147,483,648step≒186dB(実ダイナミックレンジ26bit;約150dB)
更に24bitデジタル伝送マイクロフォンや32bitミキシングコンソールの綜合S/N(デバイスノイズ比)が現在の最新型でも130㏈程度(2019年現在)といわれており、ポップス関連のハイレゾオーディオ(ハイビット録音)録音ではpeek 音圧(レベル)-18dBFS(実数比0.8倍;Peakフルスケール比)を基準レベル として規定されていて、レベルマージンに余裕を持たせてリミッターのお世話にならないようにしていますが...。
しかしこの設定はレベル変動が比較的少ないポップス関連の事であって、ダイナミックレンジの大きいオーケストラやピアノ曲などのクラシック音楽の録音では、24bit伝送デジタルマイクロフォン(内部アナログ回路S/N130dB)でとらえた最弱音が最低分解能6bit以上になるようにデジタルレベル設定して残り18bit(約102dB))をダイナミックレンジとして利用しているわけですが、それでも無圧縮で記録するには少々きついので...。
マイク許容Peakレベル(最大音圧)周辺では(マイク内部のデジタル・リミッター:非直線補償)処理でbitオーバー(クリッピング)しないようにレベル圧縮して24bitt伝送されたデータを、アップスケーリングして32bitt直線量子化処理(2,147,483,648step≒186dB、実ダイナミックレンジ26bit;約150dB)のミキシングコンソール(パソコン)でマルチマイク間のミキシング(バランス調整)を行って、さらに記録は8~16Ch程度32bitのマルチ・チャネルのデジタル音源(データ)として、SSD(半導体ディスク)などに記録して、マスタリングスタジオに持ち帰るわけです。
公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日
投稿者:デジタヌ
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