狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第2回ー

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第2節 録音・音源共通の問題点、「saturationノイズ」と「楽音消失?」「イコライゼーション」

アナログ録音・デジタル録音に共通している問題はこの3点です、言い換えればレコーディング現場でのミキシングミスによる過大入力「音割れ」と低レベル設定による「楽音消失!」、そして"マスタリング"工程での「ドンシャリイコライゼーション」!

第1項 クリッピング(サチュレーション)ノイズとは

録音コンテンツ全般に共通して、基本的に避けなければならないノイズの代表格は「saturationノイズ」といわれる録音飽和ノイズ!です。

一般的に「サチり音」といわれるもので、録音時のオーバーレベルに由来するもので、アナログ時代には「ガシャ」という感じで「音が割れる」という表現がよく用いられていました。

デジタル録音における「クリッピングノイズ」

デジタル録音の場合の「クリッピング(ビット飽和)」ノイズは 曲中に入る"鞭を打った"ような「パチパチ」「バリ」「ブツ」というようなノイズに代表されます!

デジタルの場合は量子化ビット(音圧の諧調)を使い果たすと、DA変換した場合に本来滑らかに繋がっているはずの波形が山頂を切り取ったような台形になり、山頂の前後に角張った部分が生じて、高周波数となり「パチパチ」といった鞭を打つ音ような矩形波(矩形波・パルス音)になって波形が崩れてしまう結果、上記の音となっていしまいます!

フルディジタル化されていない民間レンタルスタジオでは

24bitディジタル伝送マイクロフォンやディジタルミキシング設備のない一般のレンタル録音スタジヲでは、アナログマイクロフォンを使ってアナログミキサーでミキシングしてからAD変換してデジタルマスターを収録するわけですが、A/D変換前のアナログアンプにいまだに「リミッター」などが用いられている理由はここにあります!

第2項 最弱音(pp)での楽音消失?

アナログ崇拝のオーディオーショップの的外れな指摘!

生き残り(生活!)をかけて必死にアナログオーディオ(テープレコーダー、LP)を擁護している人たちは、

『アナログ録音では「弱奏(弱音)」ノイズに隠されるだけだが、デジタル録音では「音が消失!」してしまう』

と指摘しますが、これは完全に的外れの指摘です!

LP全盛期のアナログテープレコーダーでも楽音消失はあった!

前途したように最初期の13bitや16bit量子化ディジタル録音機の時期では、ドルビーNRシステムを用いてDレンジ圧縮しないと100㏈以上あるオーケストラ曲のDレンジは記録できず、サチュレーション(レベル飽和)を起こしたり、楽音消失など録音時の「ミスによるトラブル」は避けられませんでしたが。

現在の録音現場で用いられるハイビット(ハイレゾ)録音機材では音の入り口の24bitデジタル伝送マイクロフォン(内部A/D変換デバイスS/N130dB)でも100dB以上のダイナミックレンジを持つオーケストラの生サウンドを最弱・楽音比で36dB以上のS/Nを保ったままでほぼ「無圧縮で収録可能」となっています。

つまり録音時によほどのミスでもしない限りは、「楽音消失」などありえません!

さらにLP全盛期のアナログテープレコーダーでも楽音消失事故?は起こっていました!(※31)

参※31)当サイト関連記事 第3回 アナログ・テープレコーダーの問題...をご参照ください。

基準録音レベルとpeekレベルメーターの普及について

オープンリールのころは記録レベル監視にはプロ。アマ共にVUメーターが広く使われていました。

アマチュアのエアチェックが磁気飽和の影響を受けやすいカセットデッキの時代になって「Peekレベルメーター」が普及して、さらにDATなどのテープ式デジタル録音機の時代になって必需品となりました。

Peak levelメーターとVUメーター、ハイレゾ録音基準レベルー18dB(実数比0.2倍!)の関係

嘗てアナログテープレコーダー録音の時代は

嘗てアナログテープレコーダーの時代にはVUメーターが「録音レベル監視」の主役でした。

理由はアナログ方式磁気記録では「ヒステリシスカーブ」の都合で直線部分だけを使うわけにはいかずに、「磁気飽和」(サチュレーション)直前まで有効に?利用してダイナミックレンジを稼いでいたからです。(※32)

デジタル録音の時代になって基準録音レベルはPeak level( 入力)ー18dBとなってこれは、初期の16bit量子化録音(DATなど)時代から24bit集音32bitデータ記録の今日の「ハイレゾレコーディング」迄受け継がれています!(※33)

参※32)当サイト関連記事 第3回アナログ磁気記録の問題..をご参照ください。

非現実的な値Peak -18dB=0VU換算

実際には一般サイトの暴露記事?にもあるように、国内のレンタルスタジオの機材(PCコンソール)は前世紀の遺物?状態の代物で、ミュージシャン・録音エンジニアは「押し出しのある音」を求めて、これよりかなり高い記録レベルでレコーディングしているそうです!

最終的には32bit→16bit圧縮変換を行うわけですが...

後工程のマスタリングで、最終的には32bit→16bit圧縮変換を行うわけですが。

それにしてもpeak level ー18dB(実数比0.2倍!)ではミキシングコンソールのS/N130dB の大方を捨てることになるので、録音時から「アナログテープレコーダー時代の0VUつまりー8db+マージン5dB=|peak-13dB|以上でレベル設定して、13dB(実数比4.5倍)の録音マージンはアナログマイクロフォンのヘッドアンプ出力を強力なアナログリミッター(非直線アンプ)回路でサチらないように圧縮して24bit「A/D」変換後に「ディジタルミキシングアンプ」(パソコン処理)で処理して「8~16cHのマルチチャネル・マルチトラック・24bit音源データ」としてマスタリングスタジヲに持ち帰っているみたいです。

更にこれは国内製作ポップス関連のお話で...

クラシック関連では、弱音6ビットを目安に、レベル設定(マイク感度調整)して18bit(131,072step)102dBのダイナミックレンジに収まるように「デジタルリミッター処理」をして24bitデータ(ないしは32bitデータ)として持ち帰るみたいです、 、

24bit記録だと

前途したように1bit 減じた23bit;4,194,304step≒132㏈が有効に使えて -18dB(1/8)つまり3bit マイナスしても20bit;524,288step≒114㏈ がのこりさらに(AC波形6bit)片側5bit;16stepの最低波形データを差し引いても、15bit:16,384step≒84㏈のダイナミックレンジが確保できます。

参※21)一般サイトのA/D変換の仕組みについての解説はこちら。

更に32bit記録だと -18dBのマージン(余裕)を設定してもダイナミックレンジ126dB以上が実現できる!

更に32bit記録だと片側31bit:1,073,741,824step≒180㏈18dBから18dB=3bit マイナスの28bit:134,217,728step≒162㏈が有効に使えて,、リミッター無しでしかも楽音最少記録レベル(分解能)を8bit(128step)に持ち上げても、-18dB(1/8)に相当するマージンを持ちながら20bit;524,288step≒114㏈の広大なダイナミックレンジで記録できるわけです!

勿論もはやリミッター、やNRシステムの必要はなくなります!

という事で、クラシック音楽(オーケストラ曲)のハイレゾ録音に用いられるわけですが...。

肝心の「デジタル伝送・マイクロフォン」が32bit伝送に対応しておらず、大編成のオーケストラ曲録音では、録音現場で未だにマイク内蔵のアナログリミッター回路で圧縮された?24bit伝送が使用されているわけです!

(※しかしコンデンサーマイクの耐(音圧)入力、感度ともにデジタル録音初期に比べて格段に向上していて、かなりのOff Micセッティングでも、最弱音(ピアニッシモ)を拾えるようになり、オンマイク設定による弊害、大音量時の各楽器の「サチリ感」はかなり解消されてきました。

但しこれは、メジャーレーベルの専用スタジオや、大掛かりな録音の話であり、国内のレンタルスタジオでは前途した通り、"不毛"状態が続いているわけです!

嘗てのDATなどによる16bit直線量子化録音はレベル設定に苦労した!

第3回でも取り上げましたが、かつてのアマチュア用16bit量子化ディジタル録音機では、カセット録音機の時代にはついていたリミッターもついておらず、取説通りに-18dBを目安にレベル設定すると、サチュレーション(クリッピングノイズ)は回避できますが、有効15bitの量子化のうち3bitを失うわけで、さらに楽音最低分解能5bitを差し引くと7bit(36dB)しかダイナミックレンジ幅が取れずに、ホール備え付けのかなりのOff Mic設定天吊りステレオマイク集音のアマオケライブといえどもさすがにこの範疇では収まり切れずに、「クリッピング(音割れ)や楽音消失」が起こり、融通の利く38・2トラ録音のほうが「大きな失敗もなく確実に」ライブコンサート録音ができていたように記憶しています!

そういう意味では、アマチュア(やインディーズプレーヤー)が「レベル設定に」神経をすり減らす?ことなくパソコンを用いて気軽に?ライブ録音できるようになったことは素晴らしいことかもしれません?

しかしどのみち、プロのエンジニアにお願いして16bitデータにマスタリングし直してもらわないと、友達に配布もできないし、録音した本人も「ハイレゾ対応モニターヘッドフォン」でしか聞くことができず悔しい思いをするだけでしょう!

HD、SSD記録で録音モニターが可能に

絶対的に違うのは、プレイバックモニターができるようになったことです!

20世紀デジタル録音初期では「18bit、20bit」のプロ用機材でも、記録媒体は「テープ」でした、つまりVTRに近いヘリカルスキャン方式のテープレコーダー型でアナログテープレコーダーのような録音ヘッド直後に再生ヘッドを配置できず、プレイバックモニターが不可能で、高精度LEDピークレベル計のレベル表示だけが頼りでした。

つまりうっかりすると最弱音必須楽音レベル7bit(128step)を切ってしまい、「楽音消失」レコーディングミスが生じていたわけですが。

しかし21世紀の現在では、HD:ハードディスクやSSD(半導体ディスク)媒体を使用するようになり、プロ用機材はもちろんアマチュア用の録音機材(パソコン)でもデータ書き込み(録音)処理と同時に読み出し処理で「プレイバックモニターが可能」となったわけです。

但し、16bit(最弱音7bit許容Dレンジ9ビット(56dB以内))にマスタリングする際にうっかり圧縮設定し間違えて、最弱音(pp)の楽音を欠落させてしまうミスは可能性としては存在しますし、事実現状発売中のデジタル録音初期の18bit録音(262144step;総合SN108dB、許容ダイナミックレンジ11bit=66dB)と思わしきものの中にはいくつか見受けられるコンテンツがあるのも事実です(※34)。

参※34)当サイト関連記事楽音消失?の例 フォーレのレクイエム、ジョン・エリオット・ガーディナー盤

ジョン・エリオット・ガーディナー盤 のインプレッション記事はこちら。

第3項 意外と多いアナログ・マスタリング転用?CD再発盤の問題!

Wikipediaのハイレゾの解説にもあるように、CDなどのデジタルコンテンツにレベル管理も適切に行われていないマスタリングでは、せっかく32bitや24bitのハイビットで量子化しても、「saturationノイズ」が生じるような"ハイレベル基準音圧"(次節参照)でマスタリングされてしまっている例が多く、再生側の問題ではなくコンテンツ作成時から歪んでいる場合も多いようで、これがアナログファン(デジタル嫌い)につながっているようです!

嘗ての「LP盤ドンシャリ・マスタリング・マスターテープまんまCD化」の問題

小生のライブラリではバーンスタイン交響曲全集

Bernstein Symphony Edition ボックスセット, インポート

LP全盛時代の"国内盤"(※4)とは違い比較的新しいデジタル録音(と思わしき)作品は「素晴らしいハイファイ」ぶりですが...。

それ以外のアナログ録音時代のコンテンツは録音当時アンペックスの2インチ幅マルチトラックTapeRecoderで録音された「アナログ音源」を、AD変換してデジタルリミックスしたのではなさそうで...、

アナログLP盤新譜発売当時のマスタリング・プリントマスターをそのまま転用したようなCDが多く収録されています。

1954年 RIAA全米レコード協会の標準に...

1954年 以降はRCAが提唱したRIAA補償が行われたはずですが、アナログテープレコーダのマルチトラック録音からアナログLP用にマスタリングされた「360sound」特有の「不自然な音場」や100Hz程度が盛り上がって、50Hz以下の重低音はスパっとカットされいて、しかも「ハイ上がり」の「ドン・シャリ」傾向の強いLP盤用のマスタリング(2chトラックダウンミキシング、イコライゼーション、コンプレッション&リミッターによるDレンジ圧縮)が施された「アナログテープ、プリントマスター」がそのまま転用されている初期のレコーディングも数多く収録されていいるようで、あまり状態の良い記録音源とはいいがたいものも多数含まれています!

参※4)当時の国内のLP製作環境ではカッティングマシンなどの違いで高SN獲得に重要なハイレベルカッティングが難しかったそうです!

確かに小生も何枚かの輸入盤を持っていますが、針音(クリックノイズ)以外では気になるノイズのない素晴らしい音だったように記憶しています!もちろんシュアーのV15カートリッジ使用で...)

サチュレーションも随所に

もともとのマルチトラックアナログ録音が「サチって」いたのか「マスタリング段階で」「サチった」のかは、ほとんどアナログ原盤(LP盤)を持っていない曲ばかりなので、定かではありませんが?

重低音がカットされた分そんなに(Dレンジ45dB程度で)ハイレベル設定・ダイナミックレンジでもないのに、結構サチュレーション感の伴った箇所が散見(散聴)されます。


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日

投稿者:デジタヌ


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