レクイエム/フォーレ作曲《オーディオ的コンテンツNavi》
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レクイエムといえばモーツァルトで変わったところでは「無神論者!であったはずの!ベルディーの曲」も有名ですが...
忘れてならないのが「近代フランス」の作曲家「フォーレ」のレクイエムです。
「アニュス・デイ」が無い構成でも知られており、仏教徒でもなく神道でもない「西洋かぶれ?」の「熱狂的な日本人洋楽ファン」が多い曲でもあります?
フォーレは「ベルディ」のような罰当たりものではなくて、ブルックナー同様に敬虔なキリスト教徒だったようです!
《温故知新シリーズ》
アンドレ・クリュイタンス盤
そんな、フォーレのレクイエムの名盤中の名盤!決定打がこのクリュイタンス盤。
指揮 : アンドレ・クリュイタンス
演奏団体 : パリ音楽院管弦楽団
その他
合唱 : エリザベート・ブラッスール合唱団
バリトン : ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
ソプラノ : ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘレス
オルガン : アンリエット・ビュイグ=ロジェ
ワーナー クラシックレーベル2009年再発(1962年EMI新譜)
【録音】1962年2,5月
当時としては恐ろしく「広帯域」で全体的にレベルは控えめですが25Hz付近の「オルガンのぺダル音」もバッチり!
1962年の録音ですから、テレコはおそらくはスイスStuder(民生用Revoxブランド)製業務用「Studer A27」、(1インチ幅76cm/sec,2トラックステレオ)勿論ドルビーシステムなどのNRは無し!
という事で?S/Nはあまりよくなく、総合で55dB程度?
現在のデジタル録音と比べて、全体的に+5dB程度レベルは高め。
ダイナミックレンジが50dB+ぐらい。
但し強力なリミッターのおかげで、サチリ感はあまり感じられない。
なのであまり音量は上げなくても...。
おかげで、スピーカー聴取でもなんとかなる?
全楽章を通じて、オケはオフマイク設定のメインマイクを基本に、各楽章ごとにマイクセッティングを行い各パートに補助マイクを立てて、(録音時にミキシングで)要所要所を補強した様子。
という事で、当時のEMI録音の特徴「自然な音場」を構築している。
DECCAと違って録音エンジニアの名前は記されていませんが...
マイク性能・ミキシングコンソール・スチューダーテープレコーダーの特性など、「録音機材を知り抜いて」、楽章に合わせて、マイクマイクセッティングを変えて、wellバランスでミキシングして、サチュレーションぎりぎり手前でテープに収めている!...
これはもう「すこぶる付きの名人」だったことは確かでしょう!
※以下コメントの各項目については《オーディオ・マニア的クラシックコンテンツ・ナビ》その1 デジタヌ流着眼(聴)点とは.. をご覧ください。
1)interestingness grade of the audio
●dynamic range(ダイナミックレンジ)
録音当時としては平均的な50dB+程度で、おおむね今のデジタル録音に比べて+5dB程度高めの設定。
●S/N
(GPや楽章前後の無音)部分で55dB程度、まあLow noise テープすらなかった時代だから仕方ないかも...
しかしレコーディングエンジニアの名人級の「フェーダーさばき」による「人力NR」で演奏中は(ヘッドフォン聴取でも)あまり気にならない。(SP再生では全く問題なし!)
●heavy bass sound( 重低音)
これがすごい!当時のStuder 1インチ幅x2トラックx76cm/secの録音機の凄さの1端がうかがい知れる録音。
(たぶん)ノイマン・コンデンサーマイクロフォン+管球ヘッドアンプの超低域特性がすごいのであろうが、レベルは小さい(※1)が25Hz付近のオルガンのぺダリル音」もバッチり!
しかも全奏(tutti)部分でもかなりのレベル(といってもー16dB+程度)で収録されている。
参※2)当サイト関連記事 デジタル嫌いデジタル嫌いアナログ信奉論者の貴方に問題提起... はこちら。
●clarity(明瞭度)
1点吊りステレオメインマイクが主体の録音だが、名人ミキサーのおかげで「各楽器の明瞭度」は抜群。
特に第2節などでは、独唱陣、やハープ、弦バスなどはかなりのオンマイクで拾った音をミキシングして補強?しているようで、低弦の歯切れも抜群!
●saturation(音割れ)
曲自体が、全奏(tutti)強奏ff(フォルティシモ)部分でも、ベルディーやベルリオーズのように金太鼓?がない曲なので「サチリ感」は第1節で少し感じるくらいで全楽章を通じて濁った音はしない!
2)musicality(演奏・音楽性)
何度聞いても思わず涙ぐむ名演でもある!(実は若いころ(半世紀前)は、さほど好きな曲でもなかった、当時は「レクイエムといえば、ベルリオーズかベルディ」つまりド派手な「怒りの日」がついた、スペクタクル?な作品が好きだった。」
●Individuality(個性度合い)
お一切の誇張がなく、オーソドックスで「抑制のきいた演奏」ではあるが、独唱陣のうまさ、合唱の素晴らしさで...
芸術性ではこの曲のBEST1ではないだろうか!
●Dependence(繰り返し愛聴度:依存ド愛?)
何度でも聞きたくなり、何度聞いても思わず涙ぐむ。
(※実は若いころ(半世紀前)は、さほど好きな曲でもなかった、当時は「レクイエムといえば、ベルリオーズかベルディ」つまりド派手な「怒りの日」がついた、スペクタクル?な作品が好きだった。)
近年の秀作 ジョン・エリオット・ガーディナー盤
フォーレ:レクイエム(オリジナル版)
キャサリン・ボット 、 ジル・カシュマイユ 、モンテヴェルディ合唱団 & オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク & ジョン・エリオット・ガーディナー PHIIPS 1994年新譜
録音1992年 デジタル録音
とにかくオルガンのペダル音がすごい(かなりの高レベル)、重低音ファンにはたまらない!
但し最初に断っておきますが、録音現場のミキシングエンジニアのミスか?
マスタリングエンジニアのミス?なのかは、再度「デジタルリマスター」盤が登場しないと判明しない謎ですが...
最終章の、レベルセッティングミスで「弦による伴奏が消失しています!」
1992当時には別項で詳しく解説しましたようにまだ「ハイビット録音機材」が録音現場にく?
おそらくは、英DECCAが1978年 に開発した18ビット直線量子化、サンプリング周波数48kHzのデジタル録音機は貸出してもらえたのではないかと思われるので...
推論その1)
18bit録音(262144step;総合SN108dB、許容ダイナミックレンジ11bit=66dB)は出来ていたはずですが、当時の世界標準であったスチューダーの1インチテープレコーダー「Studer A80」(1988年まで製造)が(ドルビーNR無しの)
裸で70dB以上のS/N、さらに1966年に登場して世界中どこのスタジヲにもあったドルビーA Type NRシステムが全体域にわたり10~14㏈のノイズリダクション効果があったので、全体(各楽章間の)の音量バランス調整だけに神経を使いすぎて、アナログ録音のつもりでレベルメーターの監視を怠り、弦が許容ダイナミックレンジPeekー66dBを下回ってしまって、波形記録が困難になり、楽音消失となった可能性が一つ...
推論その2)
当時はPCの性能が悪くノンリニア編集ができなかった時代なので、マスタリングスタジオではデジタル録音テープから、一度DACで(ドルビーNR使用の)アナログテープにダビングしなおして、昔ながらのハサミとスプライシングテープで切り貼り編集して、イコライゼーションを行い、コンプレッサーで非直線圧縮(プリエンファシス)してCDの許容Dレンジ54dBに収まるように、マスタリングしてから改めてA/D変換してサンプリングレート44.1kHz16bit直線量子化、でCD原盤をCD-Rに焼いて「プレス工場」に持ち込む「いわゆるDADプロセス(※Wikipedia解説)でCDが制作されていました、同時にドルビーNR使用のアナログマスターテープも作成されて「プレス工場」にマスターテープとして持ち込まれていたわけです。
その際、アナログテープレコーダーでは「録音ヘッド」の隣の「再生ヘッド」でテープに記録された音をモニタリングできるわけですが、当時のデジタル録音機ではそれができないので「ピークレベル計」だけが頼りになるわけですが、マスタリングエンジニアが「過小レベル」を見落としたことは考えられます。
アナログLP輸入盤をお持ちの方はぜひ比較試聴してみてください。
アナログLP盤に正常に記録されていれば、CDでも「デジタルリマスター」処理で消えた楽音が「蘇る」ことはできるでしょう!
全般的には素晴らしい録音・演奏
オルガンの重低音・ペダル音(25hz近辺)は、クリュイタンス盤よりも新しいだけあって、-25~ー30dBでたっぷりと記録されていて大迫力!
全体的にオフマイクセッティングで、マルチマイク収録のはずなのに「天吊り、1ポイントステレオのような自然な広がり感」でオーケストラの後ろにコーラスと独唱陣を配置した自然な音場を形成しています。
但し、現場ミキシングの2chステレオマスターテープのようで現在のレベルでみる(聴く)と「明瞭度はさほどでもない」その分音場は自然。
演奏はガーディナー得意の特別編成の「ピリオド楽器」集団によるノンビブラートのピリオド奏法。
とりあえず「最終章」の楽音消失が惜しまれる1枚!
公開:2020年2月17日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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