狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第8回ー

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★第2節 ハイファイ録音小史

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デジタル録音事始め

世界初の2チャンネルステレオによるPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作品(放送用VTRをトランスポートとして利用!)を1969年5月に完成させたのは我が国のNHK放送技術研究所で、その試作機を借りて世界初のデジタル録音を1970年9月14日に行ったのは当時の日本コロムビア株式会社(現コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社)。

1972年からはPCM方式による自社製のデジタル録音機第1号機 を作り、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始すると同時に「PCM」が同社の登録商標となった。

denonpcm1.JPG

1972年4月に東京ン青山タワーホールで録音されたモーツァルトの「狩り」(廃盤)は御覧の通りDENONレーベルではなく「ColombiaレーベルのNCC-8501」として発売されました!(もちろん初回プレスを購入)

1974年には、より小型で持ち運び可能なPCM方式 自社製デジタル録音機第2号機を完成させてヨーロッパでのPCMデジタル録音を開始しています。

Denonレーベル

1973年、PCM(デジタル)録音の本格稼働にあわせて、呼称とロゴをリニューアルして登場!

当初は主に高音質を期待されるクラシックやジャズの作品も発売されていました。

ジャズは次第に別レーベルで発売されるようになり、2020年現在はほぼクラシック専門レーベルとなっています。

「DENON」の商標権は2001年10月1日 - AV・メディア関連機器部門を株式会社デノン(後の株式会社デノン コンシューマー マーケティング)として分離した際に、移転して株式会社デノンが日本マランツと経営統合してディーアンドエムホールディングスとなり、同社から許諾を受けて使用されています。

ハイファイ録音の旗手Deccaとハイファイ録音の歴史

一方Decca Recordsがデジタル録音機を本格的に使いだしたのは、DENONに遅れること7年後の1979年 1月1日、の「ニューイヤー・コンサート」(ボスコフスキー指揮)からの事で、同年春に同社初のデジタル録音レコードとして発売されました。

独自開発、自社製のサンプリングレート48kHz18ビット直線量子化のデジタル録音機 を開発した1978年以前は、有名なショルティ盤の「ニーベルングの指輪4部作」(1958年9月から1965年にかけて録音)もノイズリダクションシステム無しの普通?の「マルチトラックレコーダー」で録音されていました。

ノイズリダクションシステムをつかいだしたのも1966年 になってからの話で、ドルビー研究所が開発したドルビーNR-Aタイプを採用して、以後はドルビーNR使用のアナログ録音となりました。

録音機材の発達史

機械式吹き込みとSPレコードの登場

1877年 トーマス・エジソン 「ヴァーティカル振幅(立て振幅)」溝記録方式ろう管録音機発明。

1887年 エミール・ベルリナーにより78r.p.m.の円盤状のSP盤が商品化される。

1898年 ピアノ線を用いた磁気録音式ワイヤーレコーダー「テレグラフォン(Telegraphon)」誕生

20世紀初頭 電気吹き込みが始まる

1925年 アメリカWestern Electric社が開発した電気吹き込みが普及しだす。

1926年 ごろ当時実用化トーキー映画の光学式サウンドトラックで録音を行い「ラテラル(水平)」振幅するレコード盤がブランズウィック社により製品化されるが旧来の機械式ラッパ型の「ヴァーティカル振幅(立て振幅)」再生機では再生できず、「ラテラル(水平振幅)」記録レコード盤「専用」の「管球式電蓄」が必要だったために敗退!(その後戦後のステレオLP開発時に再評価される!)

1928年 ドイツでテープレコーダーが開発され、1935年に「マグネトフォン(Magnetophon)」として独AEGが製品化。

1929年 英国DECCA設立。

1931年 英グラモフォン(HMV)と「英コロンビア」が合併してEMI誕生。

1941年頃 第2次世界大戦中に、潜水艦の音を聞き分ける目的として、ffrr(Full Frequency Range Recording)電気吹き込み高音質録音方式をDECCAが開発。

1939年~1941年にかけて化学メーカーBASF社によるテープ材質の開発と、1938年ごろ同時期に日本、ドイツ、アメリカで交流バイアス方式が発明されて以後実用に耐える長時間高音質録音が可能となりナチスドイツのプロパガン放送のツールとして使用された。

ヨーロッパ戦線終了後この技術がアメリカに接収されて、アンペックス社などの誕生につながった。

1944年 アンペックス(Ampex)社設立

1945年 第2次大戦ヨーロッパ戦線終了後、英DECCAffrr方式による高音質録音のSP盤を発売開始。

戦後 LPレコード盤の登場と「テープレコーダー」の実用化

1948年3月1日  米CBS LP盤を商品化。

1949年 - 米RCA初の1/4インチ幅磁気テープ用のオーディオ・テープ・レコーダー(RT-1?)を開発、製造。

同年 RCAビクター ドーナツ版商品化販売開始!

同年9月 EMIテープレコーダー録音を開始。

同じ頃 英DECCAもテープ・レコーダーを使った録音を開始。(それまでラッカー原盤記録!)

同年 スイスStuder社が テープレコーダー「ダイナボックス」製品化。

1950年6月 英DECCA、ffrr方式を採用した高音質LPの発売開始。

1951年 スイスStuder(民生用Revoxブランド)社民生用のREVOX T26、と業務用「Studer A27」発売開始

1952年 米RCAがRIAA補償カーブを考案自社レコードに使用開始し同時にRIAA(アメリカレコード協会)に標準化提案。

ステレオ録音の時代へ

1953年10月6日 - RCA 2チャンネルステレオ実証録音を行う

1954年 アメリカレコード協会 RIAAイコライジングを規格化制定

1954年5月13日  英DECCAジュネーブにあるビクトリア・ホールで、米アンペックス社のステレオ・テープ・レコーダー(350 model 1)を使い、ステレオの実用化試験録音を開始

1955年 - RCA 2チャンネルステレオ・テープ・ソフト発売(ライナー指揮、シカゴ交響楽団によるリヒャルト・シュトラウス作曲「英雄の生涯」「ツァラトゥストラはかく語りき」ほか)

同年2月 EMIもステレオ録音開始。

1956年  米CBS ステレオ録音開始。

ステレオLP時代到来

1958年6月 米RCA 45・45方式 ステレオ・レコード発売
同年7月1日  米CBS ステレオ・レコード発売。

同年10月 EMIもステレオLPの発売を開始

1958年7月 英DECCA ffss(Full Frequency Stereophonic Sound)と銘打って45/45方式ステレオ・LPレコード発売開始。

同年 映画会社ワーナー・ブラザースが音楽子会社ワーナー・ブラザース・レコードを設立。

1961年  米CBS「360°SOUND」マーク使用開始。

1962年  ドイツ・グラモフォン(DGG=シーメンス)とフィリップスがDGG/PPIグループとして業務提携開始。

1963年 英DECCA「フェイズ4」レコードと銘打って、アンペックス製4トラック・テープ・レコーダー使用開始。

1964年 4トラック・テレコ Studer J37 登場

ノイズ・リダクション(NR)・システムが実用化

1966年 米国ドルビー研究所が開発したドルビーAタイプノイズ・リダクション(NR)・システムを英DECCAが採用。

1967年 EMIのアビーロードスタジオがStuder J37 2台採用使用開始。ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を録音。

デジタル録音時代の幕開け

1969年5月 NHK放送技術研究所で、トランスポートに放送用VTRを用いた世界初のPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作機開発。

1970年 究極のアナログレコーダー「Studer A80」登場。モノラル仕様、ステレオ・チャンネル、4チャンネルから、最大24チャンネルまでのバージョンがありデジタル時代に入った1988年まで製造された。

1971年  シーメンス・フィリップス両者合弁でポリグラムを設立。グラモフォン・フィリップスが傘下に入る。
1972年  ポリドール・レコードと統合し、ポリグラムに移管。

同年 EMI 管球式8チャンネル入力4チャンネル出力ミキシングぐコンソールに代わる、トランジスタ式24チャンネル入力8チャンネル出力TG12345ミキシングコンソールを自社開発し自社のアビー・ロードスタジオに設置。

同年 当時の日本コロンビアがPCM方式自社製デジタル録音機第1号機 開発、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始。

1978年 英DECCA18ビット直線量子化、サンプリング周波数48kHzのデジタル録音機を自社開発、
1979年 1月1日、英DECCAボスコフスキー指揮ウィーン・フィルによる「ニューイヤー・コンサート」をデジタル録音、英DECCA初のデジタル録音レコード発売。

同年4月 米サウンド・ストリーム社製デジタル録音機を採用してRCAもデジタル録音開始。

同年7月2・3日 - EMI 自社のアビー・ロードの第1スタジオにて、デジタル録音開始。

同年11月 ポリグラム(グラモフォン・フィリップス連合)初のデジタル録音を行う。

1980年 DECCAがポリグラム(グラモフォン・フィリップス連合)に買収される。

1982年10月1日 CD登場!

 ソニー、日立(Lo-Dブランド)、日本コロムビア(DENONブランド、日立のOEMで発売)から、世界初のCDプレーヤーが発売。同日、CBSソニー、EPICソニー、日本コロムビアから、英DECCA、独ポリグラム(グラモフォン)も初のCDコンテンツを発売開始!

同年11月 東芝EMIlからもCD発売。

1983年 - RCA コンパクト・ディスク・発売開始する

1986年、販売枚数ベースでCDがLPを追い抜く。

1989年 ワーナー・コミュニケーションズ(旧ワーナー・ブラザース・レコード)と出版社タイムが合併し、タイム・ワーナーに改名。

1990年代前半にかけて、LPは国内では生産されなくなって行きましたが、ヨーロッパなどではまだまだ主流で日本国内でも輸入盤などは手に入っていました。

1998年 ポリグラム(DACC・グラモフォン・フィリップス)が「ユニバーサルミュージック」に吸収(売却)される。

21世紀 に入ってフルディジタルプロセスの時代となる

2001年 AES 42-2001としてデジタル伝送マイクロフォン規格制定

2001年以後放送録音も含めクラシックコンテンツを主体にフルディジタルプロセスの時代となる。

同年「PHILIPS」がレコード事業から撤退してクラシック音楽制作部門を「ユニバーサルミュージック」グループに譲渡(売却)DECCAレーベル事業と統合される。

2010年以降徐々にLPレコードが売れるようになり、欧米だけでなく、日本国内でもメジャーレーベル各社から相次いでアナログLP盤が発売されるようになり、落ち込んでいたCD生産枚数を補う形で順調に販売枚数を回復してきた?

2012年 9月28日 - EMIのレコード部門が「ユニバーサル・ミュージック(SONY関連会社)」の一員となる。(買収される)

2013年2月7日 - ユニバーサル・ミュージックのEMIレコードのポップス主要部門レーベルをワーナー・ミュージック・グループ売却。

付録 クラシックメジャーレーベルの変遷

classicsrabel2.gif

※画像をクリックすると拡大できます。

classicsrabel2.pdf はこちら。


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日

投稿者:デジタヌ


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