狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

なんばグランド花月 《ホール音響Navi》

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なんばグランド花月のあらまし

Official Website http://www.yoshimoto.co.jp/ngk/

お笑い界の大大名吉本興業の「西の本丸」

2つのホールと飲食店街(芝居茶屋)を備えた吉本の中核施設、。

900人収容の、全面木質壁面でできた響きの良い劇場と、地階に一般貸出も行ている365人収容のYES THEATERを備えている。

なんばグランド花月のロケーション

ところ  大阪市中央区難波千日前11番6号

旧なんば花月(1987年閉館現吉本スウィングビル)から一本東の千日前筋(道具屋筋)商店街に面している。正面にはNMB48劇場がある。

なんばグランド花月 へのアクセス
鉄道・バスなどの公共交通

もよりの駅

Osaka Metro;御堂筋線・四つ橋線・千日前線、「なんば駅」11番出口より徒歩約5分400m


南海電車;「難波駅」東出口より徒歩約3分250m

近鉄・阪神 「大阪難波駅」より徒歩約8分600m

近鉄・大阪メトロ(千日前線・堺筋線)「日本橋駅」4番出口より徒歩約6分450m

JR西日本;「JR難波駅」中央出口より徒歩約12分1km

マイカー利用の場合

1階にトラストパーキング(3ナンバー1BOX車可)の有料駐車場ありマイカーりようの可能。(但し収容台数は30台程度)

阪神高速 

夕陽ヶ丘出口より約4分/1㎞

道頓堀出口より約5分/1.2㎞

港町出口より約11分/1.9㎞

※所要時間はいずれも平日昼間時間帯の目安です。

なんばグランド花月

吉本興業お笑い芸人のフランチャイズとなっている。

※吉本興行特別企画として「スギテツ」などのクラシック(セミクラシック)スペシャルイベントも時折開催されている。

YES THEATER

吉本興業自主公演以外にも、一般にも貸し出しされており、小演劇グループや、アマチュア演劇グループなども利用している。

建築音響デザイン面から眺めたグランド花月

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

なんばグランド花月

(公式施設ガイドはこちら。)

2スロープ2フロアーのプロセニアム形式ホール

最前列2列の平土間から続く緩やかなスロープを持つメインフロアーと、2階バルコニー席で構成される2層構造のプロセニアム形式演劇ホール。

ホール両側壁は全面木質パネルを用いて、階段状に情報に向かってホール内部にせり出している。

但しプレーンな垂直平面の段付き構成なので、ホール左右方向の定在波対策(※1)にはなっていないが、後期残響嬢出(※2)のための音響拡散体(※3)にはなっている。

セグメント天井

天井はプラスターボ―ド(※4)製のセグメント反響板を隙間を於いて並べたデザイン。

1・2階後方側壁上部、同じく大向うジョブは音響格子で表装した吸音壁になっている。

天井最前部、左右両側壁前部にはむき出しの照明器具が配置され音響拡散体(として利用するコンサートホール流行りのデザイン。

総評

コンサートホールとしても通用する、豊かな響きで、演劇ホールとしてみた場合にも、初期反響(エコー)を抑制した「肉声の良く通る」それでいて豊な余韻もあり、通常ピンマイクと場内拡声器?を使用する現代演劇・演芸場としては素晴らしい音響である。

ここまで凝った表装をするなら、メインフロアー周辺両側壁も、内傾スラントか、アンギュレーション配置にしてほしかった。

いずれにせよ、当代随一の演芸ホールであることには違いない。

想定定在波と定在波対策評価について

  • 間口約16.5m;約21Hz/1λ、約31.7Hz/1.5λ、約42.3Hz/2λ、約52.8Hz/2.5λ、約63.4Hz/3λ、
  • 天井高さ約14.3m;約24.4Hz/1λ、天井が凸面セグメント反響板なので高次定在波は生じにくい?

赤字は可聴音域内重低音。

壁際通路と扇形配列座席で定在波回避

メインフロアーは平土間に近い緩やかなスロープなので、フロア全てで定在波による障害が発生しており特に中央14番座席はミステリースポット(※5)ラインとなっており、同じく定在波の「腹」に当たる各列8・20番席も音響障害エリアサプライズスポットであるが、スロープ+ハノ字配列座席+両壁際座席で定在波の音響障害を上手くかわしている。(※6)

更に2階バルコニー席は対抗する木製プロセニアム上縁前縁はスラント設置のコーナー反響板になっており前後軸方向の定在波波は発生していない、ホールを横断する定在波は発生はしているが両翼が前方に張り出した「すり鉢状」のスロープ形状になっており、1階同様に音響障害を回避している。

よって、定在波による音響障害は軽微として、実障害席は"0査定"、エリア点のみ1・2階で2点減点、プレーンなパネルの垂直設置完全平行壁面であるので、基礎点は25点とした。

ホール音響評価点:得点70点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点23点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な平面壁」で囲まれているときには 配点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点25点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。

算出に用いた値;

定在波評価

基礎点B1=配点25点ー障害発生エリア数2=23点

定在波障害顕著席数;0?席

初期反射対策評価

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0席

初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;0席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;22席/1F平土間B・C列中央部座席9番から19番

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;22席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

YES THEATER

(公式施設ガイドはこちら。)

2階吹き抜け相当の天井高さをもつ1スロープの演劇専用ホール。

プロセニアムの無いオープンステージ構成だが袖幕でサイドプロセニアムを代用している。

ホール周囲壁面は一般建築用の、板材(下層部)と石膏ボード(中上層部)を壁紙で表装した宴会場スタイルの内装。

天井は流行りの構造材、冷房ダクト類剥き出しの天井を照明グリッドで前面表装した設え。

側壁スラント・アンギュレーションなどの定在波対策'は一切講じられていない、ただのシューボックスホール。

但し最後部大向う背後壁面は浅いハの字型になっており、ステージ背後壁に対抗する中央部は1段迫あがった舞台照明エリアになっており偶然L列中央部客席の前後軸定在波障害防止にはなっている。

ホール音響評価点:得点50点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点22点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な平面壁」で囲まれているときには 配点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点15点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点11点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点2点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

総評

演劇専用ホールなので、ドタバタ喜劇でも公演しない限りは、あまり問題は発生しないであろう。

算出に用いた値;

定在波評価

基礎点B1=配点25点ー障害発生エリア数1=24点

定在波障害顕著席数;18席/D~L列の中央12・13番

初期反射対策評価

基礎点B2=素材基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0席

初期反射障害2 天井高さ不足席;57席/N~P列車椅子席含む。

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;57席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;40席/1F平土間中央部座席

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;18席/D~L列の中央12・13番

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;57席/N~P列車椅子席含む。

重複カウント ;ー10席

音響障害席総計;105席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

なんばグランド花月の施設データ

  • 所属施設/所有者 なんばグランド花月ビル/吉本興業。
  • 運営団体  株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー。
  • 竣工・開館   1987年(2012年4月7日リニューアルオープン)2015年4月4日地階YES THEATERオープン
  • フロアー配置図・フロアマップはこちら

なんばグランド花月

ホール様式

プロセニアム形式『モダン芝居小屋』

客席仕様

2スロープ2フロアー 間口約16.5mx天井高さ約14.5m
収容人員858席、(車椅子用スペースX1台、)フローリング、通路部のみタイルカーペット床。

舞台設備
  • 舞台仕様 プロセニアム形式
各種・図面・備品リスト&料金表

YES THEATER

ホール様式

セミオープン型式多目的ホール。

客席仕様

1スロープ1フロアー
収容人員326席、Pタイル張り、通路のみタイルカーペット敷。

舞台設備
  • 舞台仕様 プロセニアム形式(セミオープン形式)
各種・図面・備品リスト&料金表

付属施設・その他 

館内付属施設 

※参照覧

※1、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

※2、直接音、初期反射音、後期残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※3、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー 第9章第3節第1項 音響拡散処理と音響拡散体となる要素』をご参照ください。

※4、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

※5、定在波で起こる音響障害については『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』をご参照ください。

※6、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

 

公開:2018年9月13日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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