狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

3つのレーベル・3つの媒体を渡り歩いたユージン・オーマンディ...《Clasicical MusicコンテンツNavi》温故知新名盤シリーズ  

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日本ではユージン・オーマンディとして知られているハンガリー出身の指揮者は「20世紀を代表する指揮者の一人でもあり、SP、LPモノラル時代。ステレオLP時代、CDデジタルコンテンツの3つの時代を生きた音楽家でもあります。

「Eugene Ormandy」

1899年11月18日 にハンガリーで生まれた彼は 1985年3月12日 に亡くなるまで、ほぼ一世紀にわたり20世紀を生き抜いた人です。

幼いころからヴァイオリンを学び、ヴァイオリニストとしてデビューしてして1919年には母校のブダペスト王立音楽院ヴァイオリン科主任教授になっています。

病気を理由?に出演をキャンセルしたA・トスカニーニに代わってフィラデルフィアの舞台に

長年の手兵でもあり相棒であるフィラデルフィア管弦楽団との出会いは、A・トスカニーニのピンチヒッターとして1931年の定期演奏会に招かれたのがきっかけで、その後たびたび出演するようになり1936年にレオポルド・ストコフスキーと共にフィラデルフィア管弦楽団の「常任指揮者」となりました。

2年後の1938年に健康上の理由でストコフスキーが辞任してからは彼に代わってフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督となりました。

自らが後任にリッカルド・ムーティを指名して引退する1980年までの42年間に渡り音楽監督として同楽団の発展に尽くしました。

音楽監督引退後も85歳で亡くなる前年の1984年1月まで、「桂冠指揮者」として招かれてフィラデルフィア管弦楽団と共演していました。

不運と幸運に翻弄された人生

1921年にアメリカへ演奏旅行をしたときにマネージャーに旅費を持ち逃げされて無一文となり!

何とかニューヨークのキャピトル劇場専属オーケストラのオーディションに受かりその後すぐにコンサートマスターになり、オーケストラ活動の傍らリサイタルも開くようになった1923年からは「バイオリン独奏曲」も録音しています。

1924年の9月には急病で倒れたキャピトル劇場専属オーケストラの指揮者に代わり始めて指揮台に上がりジャーナリストから絶賛されて、以来指揮者の道を歩むことになったわけです。

1927年には帰化してアメリカ国籍を取得しており、1946年の共和制へのごたごた、戦後1946年から1989年の共産党独裁政権などに遭遇しなかったのは幸運といえるのでしょう。

レコード会社を渡り歩く

バイオリニストとして活動していた初期のからRCAで戦時中にCBSへそしてCD幕開け直前の1968年にRCAへの復帰と、さらには晩年にはEMIなど他レーベルにも録音を残すなど、熱心に数多くのレコーディングを行ない膨大な記録音源を残したわけです!

しかし、レコード会社の敷いた一般大衆受けのする「名曲路線」を走らされ、本人の希望とは違い「再録音」が多いのも事実です。

戦時中の1944年にLPレコード開発実用化を餌に?移ったCBSでは戦後の1948年に製品化されたLPレコードに、そして1958年以降は当時発売開始された「ステレオレコード」不朽の先兵を引き受けて多くの派手な「名曲録音」を引き受けていました。

この最初期に録音された「レスピーギのローマ3部作」はステレオ効果満点の曲で新たな「ステレオファン」獲得に大きな働きをしました。

ヤンキー初の人気指揮者バーンスタインを前面に押し出し「カラヤン・グラモフォン陣営」と商戦を展開しだした当時のCBSでは、フィラデルフィア管弦楽団のパトロンである富裕層から絶対の信頼と指示を得ていたにもかかわらず帰化人のオーマンディは分が悪く、

RCAのアーサー・フィードラー/ボストンポップス管のようにステレオ効果満点の名曲路線で「いいように」しか扱われなくて、CBSのホープ、バーンスタインとバッティングしないポピュラーなローカル名曲路線に回されていました、

それで1968年に「オーマンディの希望を最優先して録音できる」条件でRCAに再復帰したわけです。

しかし、一部を除き、多少ふるびても「売れている」CBS盤のファン層をかっさらうつもりの「RCA」でもかつての売れ筋商品の再録音ばかりが企画されて、その関係でCBSとRCAから「同じ曲」が多数出ているわけです!

ジェイ・デイヴィッド・サックス(RCAのプロデューサー)によると、当時のRCAは「誰もオーマンディでシリアスなレパートリーなど聴きたいと思っていない」「派手なショーピースの方が売れる」という考えであったため、オーマンディやオーケストラはかなりの不満を抱いていたが、同時にオーマンディは「あらゆるニーズに応える」ことに強い誇りを抱いていたので、結局はそれを受け入れたという。(BVCC-38059のライナーノートより)

シリアス?な作品でも彼の非凡さは

当時のRCAの方針がうかがえる記述も残されていますが、いま改めて「シリアスな作品」を聞いても、彼の「非凡」な音楽センスに感心させられます、フィラデルフィア管のパトロンたちが「長年」支持し続けたわけが分かるような気がします 。

言っては何ですが。ストコフスキーのように「大見得を切った」歌舞伎役者のような大げさな表現もなく、バーンスタインのような「独特の」歌いまわしもなく、「トスカニーニ」「ジョージセル」「ショルティー」同様に譜面に忠実な「オーソドックス」な解釈で、ヘンデル、ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェン、ワーグナーー、ブルックナー、ブラームス、チャイコフスキー、ラベル、ドビュッシー、ストラビンスキー、ショスタコービッチ、プロコフィエフ、ヒンデミット、オルフ、シェーンベルク、マーラー、R・シュトラウス、同年代のラフマニノフ、S・バーバーなどありとあらゆる年代・地域の作曲家の作品を「得手不得手無し!」にこなして、フィラデルフィアの富裕層から絶大な支持を得ていたのでしょう。

更に、フィラデルフィア以外の全世界にいる「世俗的な一般大衆」が好む定番曲や「伝統のフィラデルフィアサウンド」で「そつなく」どころか手抜きをしない「素晴らしい」仕上がりで聞かせてくれて、改めて彼の偉大さをしった思いです。

但し演奏に抜かりはなくても、エレクトロニクスの発達とともに20世紀を歩んだマエストロなので、録音状態にはかなりの落差がありますのでご注意を...。

中華海賊版にはご注意を!RCA、CBS、EMIレーベルならばまずは安心

日本国内盤であれば現在SONY Clasiccs として発売されているものを、

直輸入盤であれば「RCA RED seal」 か「CBS classics」として発売されているものを、 もちろん晩年の「EMI」レーベルも問題はありませんが、聞いたことのないレーベルには、ひどい「中華海賊盤」もありますのでご注意を、何がひどいのかというと、版権が切れているのをこれ幸いに「あろうことか」LP盤から「採取」した復刻版迄出回っています!

これなどは封印を切れば「ライナーノート」が無いのでわかりますが全くの粗悪品で"

擦り切れたレコード盤特有の「周期的な」ゴーゴー鼾雑音も含まれ、しかも!どんなカートリッジを使用したのか「Youtube 」のアナログLP再生投稿よりひどい、まるでモノラル録音のような「左右チャネルの極悪セパレーション」やフォルテッシモ部分での盛大な「サチュレーション」や内周部でのトラッキングエラー丸出しの「ピアニッシモ」など「詐欺まがい」の"CD"も堂々とWEB通販されています!

そんな中から秀逸した盤を数点

Eugene Ormandy Conducts Tchaikovsky 2013年再発売

まずは輸入RCA Red Seal盤では 1959年から1979年にかけてRCA、CBS両レーベルをまたいで 録音されたTchikovsky 全集。

CBS丸出しの「ドンシャリマスタリング盤」も多数含まれていますが「ライナーノート」を読んでGBS当時の録音は「トーンコントロールで」trebleを-2dB程度落としてやれば、高域のヒスノイズも減少して聴きやすい音にります。

RCA Red Seal輸入盤なので、リマスターの表記はありませんが「さすがにRCA 」レーベルに恥じないような音源が選ばれています。

しかし、アメリカンハイファイマスタリングセオリーの一つ「100Hz」大盛り!50Hz以下急激にカット!で重低音域については「適正な補正」(※1)が必要です。

これには未完に終わった3番、と2番のシリアスな?ピアノコンチェルトも含まれており、必聴の価値があります。

参※1)当サイト関連記事 現在SONY傘下の義兄弟!となった嘗ての米2大レコードレーベルとヨーロッパ系レーベルの音の違いとは?はこちら。

ホルスト:惑星&ヴォーン=ウィリアムズ:タリスの主題による幻想曲他 CD

これは1968年以降に録音された正真正銘のRCA制作盤、重低音がすごい、しかも不自然なところが一切ない自然な音場で、勿論トーンコントロールは一切必要なし。

どうやら当時実験的な色合いの濃いDolby サラウンドバージョンと同じ音源で制作されたもののようです。

ラフマニノフ:交響曲第2番、合唱曲「鐘」&スクリャービン:法悦の詩、プロメテウス CD

シリアスな曲で「小生の大好きな曲」後年シャルルデュトワもこのオケと録音しています。

ブルックナー:交響曲第7番ノヴァーク版
オーマンディ(ユージン) (アーティスト, 指揮), ブルックナー (作曲), ブラームス (作曲), & 1 その他

BMG当時の正真正銘のRCA制作。

但しADDの表示があるので、録音機はStuder あたりのアナログ4chマルチトラック+DolbyNR録音の様子。

バルトーク:中国の不思議な役人;弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽(UHQCD) CD

1979年4月16日 - 米サウンド・ストリーム社製デジタル録音機を採用したRCA初のデジタル録音

イヤー凄いの一言!

今のレベルから言ってもすごい録音。

その他のCBS 録音について

最も初期のステレオ録音、「ローマ3部作」は別として、

SONY classics レーベルで再発売しているタイトルについては

3トラック以上のアンペックス2インチ幅76cm/sec 3トラック?テープレコーダーで録音された"音源"のおおく良好な状態で保管されていたようで、デジタル・リマスタリングされた音源については、低域はそのままでも問題はありません?が高域につては、

別項で詳述したように、1kHz以上のTreble帯域は-2dbほどダウン設定したほうが「自然な音色」に、さらに「デジタルリミックス(リマスター)表記」のないCDについては、音楽編集ソフトなどを使用して、100Hzを-2dBダウン、50Hzは±0㏈、25Hzは+2dB程度上昇させてやると、よりナチュラルな"重低音"となります。


 

公開:2020年12月 9日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


マエストロ 対決《 G・マーラー 交響曲全集 Navi》第1章TOPG.Prêtre《 Maestro Navi 》 ジョルジュ・プレートル さん


 



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