狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第14回ー

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第5章 現在SONY傘下の義兄弟!となった嘗ての米2大レコードレーベルとヨーロッパ系レーベルの音の違いとは?

日頃クラシック音楽愛好家が何気なく聞いている「CD・レコード」ですが...

電気吹き込みに代わったSPの時代から、LP盤、CD、ハイレゾオーディオの現在に至るまで各レーベルの伝統的「マスタリング(イコライジング)」メソッド?が用いれれているようです。

現在SONYグループで義兄弟の契りをかわしているかつてのライバル、米2大レコードレーベルRCAとCBS、ヨーロッパ系のグラモフォンにみる伝統的マスタリング(イコライゼーション)の違いとは?...

ご注意;※印は当サイト内の紹介記事リンクです。
但し、その他のリンクは当事者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

第1節 録音機材の進化から眺めたハイファイ録音の進化

1887年にトーマス・エジソンが「ヴァーティカル振幅(立て振幅)」溝記録方式ろう管録音機を発明して、1887年にエミール・ベルリナーにより78r.p.m.の円盤状のSP盤が商品化されて、レコード盤の歴史が始まりました。

第1項 1925年電気録音とともにイコライジングの歴史が始まる

1925年になってそれまでワックス盤に「大型集音ホーン」で集めた音を直接刻む「ラッパ吹込み」からマイクロフォンで拾った?音を(電気信号)アンプで増幅してカッターヘッドで刻む「電気吹き込み」がアメリカで実用化されその後世界に広まりました。

この頃に、ウェスタン・エレクトリック(Western Electric)社製の単純なシステムとブランズウィック社製のlight-ray方式(※1)を用いたシステムで電気録音が始まったわけですが...。

可搬システムとして手軽?なウェスタン・エレクトリック方式の電気吹き込み「ロウ盤録音機」が主流となったわけです。

しかし、ブランズウィック社が開発した「ラテラル」レコード盤記録方式そのものはその後の45・45方式LPステレオ開発時に生かされました。

参※1)光学記録*いわゆるトーキー映画に用いられた光学サウンドトラックと同じ記録方式で録音セッションの容易化や放送録音に対応できる長時間記録を可能にして、さらに「ラッパ吹込み」で用いられていた「音量:振幅」に対応させた溝を盤面に対して「垂直方向に刻む」グルーブから、盤面に対して水平方向に刻むラテラル方式盤面カッティングを用いて78回転盤(SP盤)の音質を格段に向上(ハイ・ファイ化)させましたが...、

従来のSPと振動記録方式が90°異なるので専用ピックアップアップカートリッジを使用した「電蓄」でしか再生できなくて、おまけに専用電蓄では旧来からの「ラッパ吹込み」SPの再生ができない!1もくなどの「互換性」と「映画用」の光学(高額?)フィルムを使用するために、録音現場ですぐに「プレイバック」再生出来ないなどの問題で、普及しなくてレコード制作事業から撤退してしまいました。

第1目 この時に「イコライジング」記録・再生方式も実用化されました

SP時代に「電気吹き込み」が始まって以来、楽音をそのまま録音すると。「振幅が大きくなりすぎて」SP盤の厚みでは賄いきれず、それを避けるために小さなレベルで記録すると、一般的に普及していたバネ巻き駆動の機械式「ラッパ蓄音機」では再生が困難になったりするので、大きな振幅のBass(低音域)を小さくして、小音量(ピアニッシモ)の時に聞こえずらくなる「treble(高音域)」を強調してレコード盤に記録する「イコライジング」が用いられるようになったわけですが...。

  • 振幅を抑えるために(250Hz付近~1KHzをターンオフ周波数として)-6dB/oct (※22)でBassを圧縮
  • 同じく2~5kHzをターンオフ周波数として+6DdB/oct で高域(treble)強調補償

という風に各社思い思いの?「イコライジング」(周波数補償増幅)カーブを用いて補償量(増減量)を設定していました。

参※22) 6dB/octとはオクターブ(倍列周波数)当たり6dB(+は実数比2倍、-は実数比で1/2)増減するという事です。つまりターンオフ周波数1kHzでは500Hzで1/2の音量に、250Hzでは1/4に125Hzでは1/8にという風に、半分づつになっていき、31.25Hzでは1/32の振幅まで圧縮されているわけですが、ドンシャリマスタリングでは50Hz以下がさらに急激に(-12dB?/oct)程度カットされていて、さらに20Hz以下はサブソニックフィルタで-20dB(実数比1/10)?/oct程度までカットされていますから、同じコンテンツでも「CD」などに比べて全くと言ってよいほどに重低音が含まれていない迫力に乏しい「しょぼい音」にマスタリングされているのが常でした。

第2項 テープレコーダーの登場

1898年 ピアノ線を用いた磁気録音式ワイヤーレコーダー「テレグラフォン(Telegraphon)」誕生とともに始まった磁気記録は、ドイツで研究開発が進み1928年にはテープレコーダーの原型が誕生して1935年に「マグネトフォン(Magnetophon)」としてAEGから市販されるまでになりましたが、まだまだ音源録音に使用できるような代物ではありませんでした!

1939年~1941年にかけて独の化学メーカーBASF社がテープ材質の改良を行い、1938年ごろほぼ同時期に日本、ドイツ、アメリカで交流バイアス方式が開発されて以後実用に耐える長時間高音質録音が可能となり、ナチスドイツのプロパガン放送のツールとして実用化されることとなりました「振ると面食らう?」とベルリンフィルの貴重な音源がたくさん残っているのはこのおかげです。

今から見れば当時のテープレコーダーはお粗末な代物ですが、ワックス原盤直接カッティング方式に比べて、録音時間・音質(周波数帯域)ともに飛躍的向上を果たしました!

戦後アメリカで実用化した「ステレオ録音再生」もこの頃試験されていたそうです。

第1目 ヨーロッパ戦線終了とともにアメリカに持ち帰られる

ヨーロッパ戦線終了後この技術(テープレコーダー)がアメリカ軍に接収されて、アメリカに持ち去られて1944年のアンペックス社の誕生などにつながりました。

第2次大戦終戦後荒廃したドイツのBASF社に代わって「3M」社が磁気テープの改良・開発を続行して1949年 頃から米国製の業務用テープレコーダーが米国はもとよりヨーロッパのメジャーレーベルでも相次いで使用されるようになりました。

1949年 - 米RCA初の1/4インチ幅磁気テープ用の自社製オーディオ・テープ・レコーダー(RT-1?)を開発、製造。

1951年 スイスStuder(民生用Revoxブランド)社が業務用の「Studer A27」が発売開始されて、瞬く間に世界のレコード会社や、放送局の録音スタジヲに普及しました。

第2目 ステレオ録音の時代へ

1953年10月6日 - RCA 2チャンネルステレオ実証録音を行う。

ステレオ初期の「オリジナルマスターテープ」には重低音もたっぷり

ステレオ初期の録音では、当時のマイクロフォンの低感度?を補うために「極端なオンマイク収録」を行っていたようで、マスタリング前の「オリジナルマスターテープ」には重低音もたっぷり含まれていたようです。

この頃の1956年から1960年代初頭のステレオ初期の録音盤の「デジタルリマスター」盤の中には素晴らしいものも!数多くあります。(※41)(但し、"箸にも棒にも掛からない"ような粗悪リマスター!盤もあるのでご用心を...)

参※41) 録音当時66dB程度のS/Nしかなかった音源が、近年のデジタル技術(コンピューター)の進歩でTreble域では-100dB、Bassでも-80dB程度まで、楽音を損なわづにノイズ消去!できる様になりました!

つまり、アナログテープレコーダーで記録された記録音源も、デジタル記録音源並みに「Low noise化」が図れるようになったわけです!

※ハイビットA/D変換を行い、ノイズ相当のビット部分のデータを削除して、データ補完アルゴリズム(計算手法=ソフトウェア)で楽音再現修復するのが一般的な「デジタルマッピングリマスタリング」になります。

録音時の最大レベル+3VUが一般的な775mvでS/N;peak -70dBであった場合

32bitでデータマッピング(A/D変換)を行い当時のアナログテープ音源が(ヒステリシスカーブの非直線部分も含めて)総合S/N70dBであった場合は。

32bit量子化ではAC波形の片側31bitで31bit:1,073,741,824stepとなり0.7nV/stepとなるわけで、ノイズレベルが-70dBですから出力にして約0.237mV≒35step つまり 7bit以内に収まっているわけです。

そこで32bitのデータの内25ibitから21bitまでの8bit分70stepのデータを「マスキング」して残ったデータをもとに演算で波形を補完してやると、ノイズ部分が消えて楽音が残るわけです!

ある程度のp(小音量)まではこの方法で楽音を損なわずに波形が再現できます!

※波形は単純なサイン波ではなく、大きな振幅の低周波を倍音成分で変調したような細かなリンキング(高周波成分)を含んだ波形になっているので、一定レベル以上の部分では波形補完が可能となります。

更にマスキング効果で、大振幅時には小さなノイズが目立たなくなるので、ノイズ除去は基準レベル-18dB以上では必要なくなります。

マスキング効果を利用したデータ圧縮法でデータを圧縮しているのがおなじみの「MP3」圧縮や「MD」圧縮なので、その逆の理屈に当たります。

つまり、一部データが欠けていても、聴感上はあまり気にならない訳です。(というより気づかない)

第3目 ノイズ・リダクション(NR)・システムの登場

1966年 米国ドルビー研究所が開発したドルビーAタイプノイズ・リダクション(NR)・システムを英DECCAが採用。

それまで70dB程度だったS/Nが10dB以上改善されて80dB以上になり、アナログテープレコーダーの宿命「ヒズノイズ」が気にならない程度まで改善されました。

第3項 デジタル録音機の実用化!

量子化bit数と総合S/N比、ダイナミックレンジの関係

  • 3bit;8step≒18㏈
  • 5bit;16step≒24㏈
  • 6bit;32step≒30㏈
  • 7bit;64step≒36㏈
  • 8bit;128step≒42㏈;
  • 9bit;256step≒48㏈
  • 10bit;512step≒54㏈
  • 11bit;1024step≒60㏈
  • 12bit:2048step≒66㏈
  • 13bit:4096step≒72㏈
  • 14bit:8,192step≒78㏈
  • 15bit:16,384step≒84㏈
  • 16bit:32,768step≒90㏈
  • 18bit:131,072step≒102㏈、
  • 19bit:262,144step≒108㏈
  • 20bit;524,288step≒114㏈
  • 21bit;1,048,576step≒120㏈
  • 23bit:4,194,304step≒132㏈
  • 24bit;8,388,608step≒138dB
  • 28bit:134,217,728step≒162㏈
  • 29bit;268,435,456step≒168dB
  • 31bit:1,073,741,824step≒180㏈
  • 32bit;2,147,483,648step≒186dB

但し、別項の「量子化ノイズ」(※20)はこれとは異なりますので総合的なS/N比はこの値とは異なります。

つまりWikipediaの解説にもあるように、16bit量子化(32,768step:90 dB)のCDでは量子化ノイズはS/N比で96 dB ある訳ですが「ダイナミックレンジが96dBあるわけではありません!」

実際にはA/D変換では、DCレベルをデジタル変換するので、AC波形の振幅範囲としては、1bit差し引いた値(※21)となり16bitでは15bit:16,384step≒84㏈という事になりさらに楽音の最低分解能6bit;32stepのうち片側5bit;16stepを差し引いた10bit;512step≒54㏈が有効ダイナミックレンジという事になります。

第1目 NHK放送技術研究所世界初のPCMデジタル録音機の試作機開発に成功!

1969年 NHK放送技術研究所がトランスポートに放送用VTRを用いた世界初のPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作機開発に成功しました。

1972年 当時の日本コロンビアがPCM方式自社製デジタル録音機第1号機 開発、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始しました。

1979年 1月1日、英DECCAが前年自社開発したデジタル録音機を用いて、ボスコフスキー指揮ウィーン・フィルによる「ニューイヤー・コンサート」をデジタル録音、英DECCA初のデジタル録音レコード発売。

同年4月 米サウンド・ストリーム社製デジタル録音機を採用してRCAもデジタル録音開始。

同年7月2・3日 - EMI 自社のアビー・ロードの第1スタジオにて、デジタル録音開始。

同年11月 ポリグラム(グラモフォン・フィリップス連合)初のデジタル録音を行う。

とこの年から「デジタル録音維新」が始まりました

参※20)当サイト関連記事 音声出力に現れるノイズ(擬音:幽霊音?)についてはこちら。

参※21)一般サイトのA/D変換の仕組みについての解説はこちら。

参※11)2進数の換算サイトはこちら。

第2目 デジタルコンテンツの隆盛

1986年、販売枚数ベースでCDがLPを追い抜く。

1990年代前半にかけて、LPは国内では生産されなくなって行きましたが、ヨーロッパなどではまだまだ主流で日本国内でも輸入盤などは手に入っていました。

この頃がLP盤製造用の「プリントマスター」から「CD用制作プリントマスター」にマスタリング「イコライジング」が変化しだした過渡期となっています。

但し、英DECCA盤の例(※3)でもわかるように、「共通プリントマスター」の時代で、ヨーロッパが主流の「クラシック盤」はまだまだLP盤製造を睨んだマスタリングが主流で、「後述するドンシャリ」がたでLP盤特有の「ハウリング」対策として「50Hz」以下は急激にカットする「盆スカ低音」のマスタリングが続いていました。

21世紀のデジタル音楽コンテンツWEB配信主流の時代到来とともに「長年のLP盤製造」の呪縛から解放されて、重低音を遠慮なく?詰め込み、極端なTreble域大盛!?マスタリング(イコライジング)が成を潜めだしました?(但し。アナログLP盤製造用のプリントマスターは相変わらず...)

参※3)流通の主流がアナログLP盤からCDに移り、さらに21世紀に入って2001年10月23日にiPod が華々しく登場して、類似の半導体miniプレーヤーが市場に出回るようになりこの頃のCD新譜リリースから「重低音」切り捨てマスタリングは影を潜め?「重低音聴取」が可能となりました!

第3目 付録 クラシックメジャーレーベルの変遷

classicsrabel.gif

 classicslabels.pdf


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 6日

投稿者:デジタヌ


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