狸穴ジャーナル・別冊『音動楽人(みゅーたんと)』

連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第3回ー

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前書き LPレコード " ハイレゾ 説"は"都市伝説"にすぎない!

「アナログLPレコードにはたくさんの情報が入っていて、自宅でハイレゾデジタル化したほうが素晴らしい音が聞ける???...」

というのも"真っ赤なウソ"とまでは言いませんが「都市伝説」の一つぐらいに考えておいたほうがよいでしょう!

フルディジタル・プロセスで制作された国内制作アナログLP盤?とUSBアウト付きのチープな「オモチャLPレコードプレーヤー」の組み合わせではノイズ・歪の発生源が増やしているだけです!

WEB配信コンテンツを iPhon + Bluetoothヘッドフォン で聞いたほうが"よほどまともな音"が聞けます!

第3回 LPレコード「ハイレゾ・ハイファイ説」は"都市伝説"にすぎない! の目次

第1節 疑似アナログLP?の問題...

デジタル嫌いアナログメディア懐古趣味・信奉論者の貴方に問題提起...

別項でも詳述しましたがデジタル嫌いの方は、「デジタイズの際に捨てられるデータ」に起因する「量子化歪み」と「幽霊音」に代表される「ディザノイズ」が「耳につく」ようで...

今のLP盤復活人気はiPhone+WEB配信に対抗して、レコード制作・オーディオ機器メーカー連合が業界に関係の深い一部ジャーナリストやミュージシャンを巻き込んで「生き残りをかけたプロパガンダ・一大キャンペーン」にすぎないでしょう?!

LPレコードに代表されるアナログオーディオの世界は、「クオリティー=お金」の世界です。

CDやネット配信に代表される「ディジタルオーディオコンテンツ」のように比較的「リーズナブル」に高音質=忠実再生 ができる代物ではありません!

金に糸目をつけなければ、ある程度のクオリティーは得られるかもしれませんが...、数万円の範疇では「LP」に刻まれた情報をすべて「音」として取り出すことは不可能!でしょう!

Iphon+BluetoothヘッドフォンでWEB配信のストリーミングコンテンツを楽しむほうがずっとお手軽に良い結果(※1)が得られます!

参※1)当サイト関連記事 《オーディオ・マニア的クラシックコンテンツ・ナビ》その1 デジタヌ流着眼(聴)点とは...はこちら。

ナンセンスの極み玩具LPプレーヤーについて

最たるものは数万円のUSBインターフェース付きの「オモチャLPプレーヤー?」

この手の「オモチャLPプレーヤー」を使って「高音質?を標榜」する最新の「企画もの重量級LP」を「デジタイズ」して「高圧縮のMP3音源として」「iPhone」に取り込んで、そこから「Bluetooth」接続の「チープなヘッドフォン」を"トランスデューサー"として音声変換して聴取して一体全体どこが「アナログ」なの???

今や原音収録は全てデジタルの時代!

日本国内の録音スタジオは

東京の各所にある録音スタジオはすでに全部デジタル化されていて、アナログTAPE RECODERはBuck Up予備機としてすら存在しません!

つまりいろいろな問題(※2)を抱えているにはせよ、今や収録は全てデジタル記録の時代。

維持管理が大変なので嘗てのアンペックスやスチューダー、3Mなどの2インチマルチトラックレコーダーはすべて姿を消しているし、第一Tape そのものが製造されていなくて入手できません!

さらにアナログレコーディングに必需品のアナログミキシングコンソールや後述するドルビーAタイプに代表される"NR(ノイズリダクション)ユニット"も国内ではメジャーレーベルスタジオ以外では見かけなくなりました。

但し、国内メジャーレコード会社では総合S/Nが96dB(実質Dレンジ50dB)しかない昔の機材(※1)に収めるために、Dレンジ圧縮に使われたドルビーAタイプNRユニットは"音源"Tape再生用として大事に維持管理されています)

どうしてもアーティストがアナログ録音に拘るとすれば「渡米」してメジャースタジヲを使うしか手はないでしょう!

参)dB(デシベルとは)比率を表す"表記"で20xlog(実数比)で表される数値で、20㏈で10倍、40㏈で100倍!と大きな倍率を(対数目盛で)圧縮して表すことができて便利です。

更に、人間の「音圧」感知は「リニアスケール」ではなく「対数スケール」になっているので音圧(音量)測定などによく用いられる表記です。(つまり実際には100dB=100,000倍の音でも100倍程度にしか感じない!)

後述する騒音測定の場合では「健常者」の最低感知できる音圧(音量)の平均値を"0dB"としてそこからの倍率(+表記)で表されていますが、オーディオ機器ではPeek値からの-dB表記となるのが一般的です。

参※1) 量子化bit数と総合S/N比、ダイナミックレンジの関係。

詳しくわ第1回参照願います。

  • 16bit:32,768step≒90㏈(実ダイナミックレンジ10bit;約54dB)

但し、後述する「量子化ノイズ」はこれとは異なりますので総合的なS/N比はこの値とは異なります。

つまりWikipediaの解説にもあるように、16bit量子化(32,768step:90 dB)のCDでは量子化ノイズはS/N比で96 dB ある訳ですが「ダイナミックレンジが96dBあるわけではありません!」

実際にはA/D変換では、DCレベルをデジタル変換するので、AC波形の振幅範囲としては、1bit差し引いた値(※21)となり16bitでは15bit:16,384step≒84㏈という事になりさらに楽音の最低分解能6bit;32stepのうち片側5bit;16stepを差し引いた10bit;512step≒54㏈が有効ダイナミックレンジという事になります。

それにしても、44dB程度しかなかったアナログ録音当時のダイナミックレンジからは飛躍的に向上したわけです!

参※21)一般サイトのA/D変換の仕組みについての解説はこちら。

参※11)2進数の換算サイトはこちら。

編集もデジタルマスタリングが主流に

マルチマイクマルチトラックの"デジタル音源"から2CH・STEREOへのトラックダウン・ミキシングを主とする"いわゆる「マスタリング」"もいろいろ問題を(※0)を抱えていても、今やノンリニアのデジタル編集が定着していて、アナログミキシングコンソールを備えたミキシングスタジヲは国内にはなくなっている状況です。

つまり現在国内で制作されているAnalog LP盤はフルデジタルプロセスで制作されていて、カッティングマシーンへの送り出しに用いられるマスタートランスポート(媒体)も「デジタルトランスポート(CDR)」で制作されてプレス工場に送られていて(※21)、後述する分類で言うと「フルデジタルプロセスで制作されたアナログLP?」という事になります。

参※21)国内製作盤ではプレス工場の設備の(カッティングマシンがアナログマシンにしか対応していない)都合で、マスタリングの段階済みの32bitデータをD/A変換して2トラックアナログレコーダーに収録しなおしてプレス工場に送られているようですがつまりDDAプロセスですが...輸入盤ではプレス工場の設備も対応していてCDRもしくはWEB経由でデジタル転送!されています。

原盤(ラッカーマスター)制作&LPプレス段階での問題

さらにはLPプレス工場で使用されるカッティングマシーンについているカッターヘッドのノイマンSX68の維持管理やドライブ用の「300W」管球式Amp」の維持管理も大変でまともにSX68登場当時の「1960年代の性能」が維持されているかどうかは?...

2020年現状の国内製作アナログLPでは「ノイズ・歪」の発生プロセスが増えてノイズが増加するだけ!

つまり現状では国内製作アナログLPは原音採取から一般音楽愛好家が聴取するまでに「ノイズ・歪」発生デバイス(プロセス)が増えているだけ!

参※3)海外(ヨーロッパ)では、一部の「お金持ちハイエンドオーディオマニア」のために原音採取(録音)時点から、CD制作班とは別建ての「アナログ」収録特別部隊が録音機材(Tapeデッキ&ノイズリダクションユニット)を用いてアナログ録音を行い、「アナログ原音」はアナログ機材のあるミキシング・スタジオでミックスダウン・マスタリングを行い、2CH・STEREOアナログマスターTapeとして「プレス工場」にアナログ持ち込みして「入口から出口」までフルアナログプロセス!で制作した「プレミアム盤」が少ロット生産されているそうです。(なんとまあ...贅沢な!)

しかし、前途した録音機材・LPプレス工場設備の維持管理の問題でLP全盛期の音質に迫れているかは?...。

そして最終的には「オモチャLPレコードプレーヤー」の問題

まとめますと、

1、プロ用ハイビット・ハイレゾ(24ビット、32bit )録音機材で100dB以上のダイナミックレンジを持つオーケストラの生サウンドを24bit;8,388,608step≒138dB(実ダイナミックレンジ18bit;約102dB)で収録

2、デジタルマスタリング(マルチトラックから2Chステレオへのトラックダウンミキシングと16bitへのデータ圧縮)

3、デジタルマスターをD/A変換してアナログマスターテープを製作。

4、アナログ盤をプレス。

5.おもちゃプレーヤーのチープカートリッジをトランスヂューサーとしてLPグルーブをトラッキングしてアナログ再生。

6、おもちゃプレーヤー付属のチャッチくてジッターだらけの「デジタイザー」によるUSBデジタル転送、

7、MP3「ロスだらけ圧縮」によるiPhone保存。

8、問題だらけの「Bluetooth」転送。

9、チープな(DAC使用)「Bluetooth」ヘッドフォンをトランスデューサーとして使用して聴取

となるわけで「3~6」はCDなどのデジタルコンテンツでは通過しない余分なプロセスで特に「3・4・5・6」は決定的に音質悪化!につながっています。

結果として、iPhon で同じ内容のWEB配信コンテンツを直接聞いたほうが「よほど真ともな音」という事になります!

「フルディジタルプロセスLP制作?」の問題点

32bitで記録されたデジタル録音マスターを、32bitディジタルコンソールで2CHにトラックダウンミキシング、編集、イコライジング、プリエンファシス(ダイナミックレンジ圧縮)などの32bitディジタル「ノンリニア編集」を行い16ビットにデジタル・ダウンスケーリングD/D変換して(CDRなどのメディアで)16bitCDプリントマスターを制作するわけですが、この時ついでに?マスタリングされる「アナログLP用プリントマスター」の問題点の一に「 ドンシャリマスタリング?」があります。

マスタリングスタジオでは

1954年 RIAAイコライジングカーブが標準に...

実は、、SP時代から「電気吹き込み」が始まって以来、楽音をそのまま録音すると「振幅が大きくなりすぎて」隣のグルーブと干渉!したり、それを避けるために溝の間隔を広げると結果として周回数?が足りなくなって録音時間が短くなったり、あまりにも大きな振幅になりすぎて、「針飛び」するなどの問題が生じて、各社思い思いに!

  • 振幅を抑えるために(250Hz付近~1KHzをターンオフ周波数tpして)-6DdB/oct (※22)でBassを圧縮
  • 同じく2~5kHzをターンオフ周波数として+6DdB/oct で高域(treble)強調補償

する「イコライジング」(周波数補償増幅)を用いて、(溝間隔の縮小による)録音時間の長時間化とハイファイ(treble領域の拡大)化を図っていたわけですが...、

1954年 以降はRCAが提唱してRIAA(アメリカレコード協会)が賛同して1kHzをターンオーバー周波数としてBass・treble補償するRIAA規格イコライジング補償が標準・規格化されたはずですが...。

各社、いろいろな思惑があって、特にCBSなどは、「treble側を盛り」、逆に正しく「無用の長物」である「50Hz以下の大振幅・長波長の重低音部分」をばっさりカット!して,100Hz近辺を盛って!「当時の電蓄」でもハイファイらしく「聴き栄え」するように「原盤(プリントマスターテープ)をマスタリング」してプレス工場(原盤カッティング&プレス)へ送っていたようです。

ヨーロッパでも、当時のEMI、DECCAはRCA寄りのRIAAイコライジング遵守派の「比較的素直な周波数特性で」、後に、ポリグラムとしてグラモフォンと統合されたフィリップスは、電蓄も作っていた、電機メーカーが母体だったので、電蓄サウンド?のCBS「360sound」風にドンシャリ型?

参※22) 6dB/octとはオクターブ(倍列周波数)当たり6dB(+は実数比2倍、-は実数比で1/2)増減するという事です。つまりターンオフ周波数1kHzでは500Hzで1/2の音量に、250Hzでは1/4に125Hzでは1/8にという風に、半分づつになっていき、31.25Hzでは1/32の振幅まで圧縮されているわけですが、ドンシャリマスタリングでは50Hz以下がさらに急激に(-12dB?/oct)程度カットされていて、さらに、20Hz以下はサブソニックフィルタで-20dB(実数比1/10)?/oct程度までカットされていますから、同じコンテンツでも「CD」などに比べて全くと言ってよいほどに重低音が含まれていない迫力に乏しい「ショボい音」にマスタリングされています。

しかも「やけに100hz近辺が盛り上がった「ボンボン言う」Bassと「キンキラキン」の「Treble」で、後述するように「ハイレゾ音」と勘違いしてしまうのでしょう?

参※)当サイト関連記事 現在SONYグループの一員となった嘗ての米2大レコードレーベルの音の違いとは?はこちら。

というわけでLP盤当時のピュアオーディオアンプでは

当時のピュアオーディオアンプでは、これを見越して「RIAA規格」の上乗せ補償?を逆補正!するために、RIAA曲線のターンオーバー点1kHz近辺にロールオフ周波数を設定したBass Treble(トーン)コントロールを装備した製品が多く見られました。

初期のステレオカセットデッキでFMエアチェック程度では...

当時から7寸径オープンリールの4トラ.19cm/sec ステレオテープデッキを所有しているような一部の「オーディオマニア」の間では当然「LP盤マスタリング」の問題は知っていたはずですが?

事実小生もその事実(LPマスタリング)は知らずに、「これらの機能」を駆使する以前に知人に「転売」してしまいました!(残念...)

当時テープデッキといえば当時のベストセラー"カセットデッキ"SONYのTC-2130しか持ってなく、当然ヘッドフォンにも興味はなく「重低音の重要性」には気づいていなかった時期でした。

もっとじっくりと取説を読んで「深読み」すれば...とも思いますが。

現在のLPマスタリングでも

現在新譜として発売されている「フルディジタルプロセス」のアナログLP盤?制作に使用される「LP制作専用プリントマスター」音源は、前途した以外にも、レコード盤の「製造上の問題」および「再生環境」を考慮した「LP制作専用マスタリング音源」となっていますが、このアナログ盤用マスタリングが曲者!で...

  • 「50Hz以下の重低音カット!100Hz付近大盛?のドン・スカ低域音。
  • 1kHz以上のtreble上乗せピーキング処理。

いわゆる「ドンシャリ」傾向の強いマスタリングがされています!

これはかつて、(後述する)一部のオーディオマニアを除いては、`50年代後半から90年代中頃までのLP、EPシングル最盛期であった頃の一般人のレコード盤再生環境が、ステレオ電蓄ラジオ、ラジカセ、ミニコンポ、と変遷はあったものの劣悪?で、100Hz以下の低音域は再生不可能!、10kHz以上の高音域もかなり怪しいという事で、見栄え(聴き栄え)する必要から、「RIAA」(※5)補償カーブ順守はそっちのけのマスタリングになったようで...、

現状でも、この状況はあまり変化してなくて前途した「オモチャLPプレーヤー」などではハイファイ再生には無理がある!ので?レコード盤最盛期当時そのままの「伝統的マスタリング」が行われているようです。

更に当時アナログテープで運ばれたLP原盤は「32bitハイレゾ音源デジタル・データ!」としてプレス工場に届けられている!ようです。

これでアナログLPの良さ?が発揮できるとは思いにくいのですが...。

CD・LPプレス?工場では

CDは

CDはCDプリント工場に16bitCDRのプリントマスター形態で送られてそこからCDプリント原盤を制作して→CD(16bitクローン)制作となるわけですが。

LPプレス工場には

LP制作専用プリントマスターとしてマスタリングされた32bitハイレゾ音源(SSD)をDACでアナログ変換して「300W」の管球式駆動アンプ→SX-68カッティングヘッドとなるわけです!?

これで一体どこがアナログLPといえるのでしょうか?

現状の日本国内制作では

実際には、現状国内にある一般の「レンタル録音スタジオ」の機材は古くて最新の高品位フルディジタルコンテンツいわゆる「ハイレゾ音源制作は行えない」のが日本国内の現状です!

第2節 ハイファイ録音小史

※ここをクリックすると本項をスキップして次項にワープ出来ます!

デジタル録音事始め

世界初の2チャンネルステレオによるPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作品(放送用VTRをトランスポートとして利用!)を1969年5月に完成させたのは我が国のNHK放送技術研究所で、その試作機を借りて世界初のデジタル録音を1970年9月14日に行ったのは当時の日本コロムビア株式会社(現コロムビアミュージックエンタテインメント株式会社)。

1972年からはPCM方式による自社製のデジタル録音機第1号機 を作り、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始すると同時に「PCM」が同社の登録商標となった。

denonpcm1.JPG

1972年4月に東京ン青山タワーホールで録音されたモーツァルトの「狩り」(廃盤)は御覧の通りDENONレーベルではなく「ColombiaレーベルのNCC-8501」として発売されました!(もちろん初回プレスを購入)

1974年には、より小型で持ち運び可能なPCM方式 自社製デジタル録音機第2号機を完成させてヨーロッパでのPCMデジタル録音を開始しています。

Denonレーベル

1973年、PCM(デジタル)録音の本格稼働にあわせて、呼称とロゴをリニューアルして登場!

当初は主に高音質を期待されるクラシックやジャズの作品も発売されていました。

ジャズは次第に別レーベルで発売されるようになり、2020年現在はほぼクラシック専門レーベルとなっています。

「DENON」の商標権は2001年10月1日 - AV・メディア関連機器部門を株式会社デノン(後の株式会社デノン コンシューマー マーケティング)として分離した際に、移転して株式会社デノンが日本マランツと経営統合してディーアンドエムホールディングスとなり、同社から許諾を受けて使用されています。

ハイファイ録音の旗手Deccaとハイファイ録音の歴史

一方Decca Recordsがデジタル録音機を本格的に使いだしたのは、DENONに遅れること7年後の1979年 1月1日、の「ニューイヤー・コンサート」(ボスコフスキー指揮)からの事で、同年春に同社初のデジタル録音レコードとして発売されました。

独自開発、自社製のサンプリングレート48kHz18ビット直線量子化のデジタル録音機 を開発した1978年以前は、有名なショルティ盤の「ニーベルングの指輪4部作」(1958年9月から1965年にかけて録音)もノイズリダクションシステム無しの普通?の「マルチトラックレコーダー」で録音されていました。

ノイズリダクションシステムをつかいだしたのも1966年 になってからの話で、ドルビー研究所が開発したドルビーNR-Aタイプを採用して、以後はドルビーNR使用のアナログ録音となりました。

録音機材の発達史

機械式吹き込みとSPレコードの登場

1877年 トーマス・エジソン 「ヴァーティカル振幅(立て振幅)」溝記録方式ろう管録音機発明。

1887年 エミール・ベルリナーにより78r.p.m.の円盤状のSP盤が商品化される。

1898年 ピアノ線を用いた磁気録音式ワイヤーレコーダー「テレグラフォン(Telegraphon)」誕生

20世紀初頭 電気吹き込みが始まる

1925年 アメリカWestern Electric社が開発した電気吹き込みが普及しだす。

1926年 ごろ当時実用化トーキー映画の光学式サウンドトラックで録音を行い「ラテラル(水平)」振幅するレコード盤がブランズウィック社により製品化されるが旧来の機械式ラッパ型の「ヴァーティカル振幅(立て振幅)」再生機では再生できず、「ラテラル(水平振幅)」記録レコード盤「専用」の「管球式電蓄」が必要だったために敗退!(その後戦後のステレオLP開発時に再評価される!)

1928年 ドイツでテープレコーダーが開発され、1935年に「マグネトフォン(Magnetophon)」として独AEGが製品化。

1929年 英国DECCA設立。

1931年 英グラモフォン(HMV)と「英コロンビア」が合併してEMI誕生。

1941年頃 第2次世界大戦中に、潜水艦の音を聞き分ける目的として、ffrr(Full Frequency Range Recording)電気吹き込み高音質録音方式をDECCAが開発。

1939年~1941年にかけて化学メーカーBASF社によるテープ材質の開発と、1938年ごろ同時期に日本、ドイツ、アメリカで交流バイアス方式が発明されて以後実用に耐える長時間高音質録音が可能となりナチスドイツのプロパガン放送のツールとして使用された。

ヨーロッパ戦線終了後この技術がアメリカに接収されて、アンペックス社などの誕生につながった。

1944年 アンペックス(Ampex)社設立

1945年 第2次大戦ヨーロッパ戦線終了後、英DECCAffrr方式による高音質録音のSP盤を発売開始。

戦後 LPレコード盤の登場と「テープレコーダー」の実用化

1948年3月1日  米CBS LP盤を商品化。

1949年 - 米RCA初の1/4インチ幅磁気テープ用のオーディオ・テープ・レコーダー(RT-1?)を開発、製造。

同年 RCAビクター ドーナツ版商品化販売開始!

同年9月 EMIテープレコーダー録音を開始。

同じ頃 英DECCAもテープ・レコーダーを使った録音を開始。(それまでラッカー原盤記録!)

同年 スイスStuder社が テープレコーダー「ダイナボックス」製品化。

1950年6月 英DECCA、ffrr方式を採用した高音質LPの発売開始。

1951年 スイスStuder(民生用Revoxブランド)社民生用のREVOX T26、と業務用「Studer A27」発売開始

1952年 米RCAがRIAA補償カーブを考案自社レコードに使用開始し同時にRIAA(アメリカレコード協会)に標準化提案。

ステレオ録音の時代へ

1953年10月6日 - RCA 2チャンネルステレオ実証録音を行う

1954年 アメリカレコード協会 RIAAイコライジングを規格化制定

1954年5月13日  英DECCAジュネーブにあるビクトリア・ホールで、米アンペックス社のステレオ・テープ・レコーダー(350 model 1)を使い、ステレオの実用化試験録音を開始

1955年 - RCA 2チャンネルステレオ・テープ・ソフト発売(ライナー指揮、シカゴ交響楽団によるリヒャルト・シュトラウス作曲「英雄の生涯」「ツァラトゥストラはかく語りき」ほか)

同年2月 EMIもステレオ録音開始。

1956年  米CBS ステレオ録音開始。

ステレオLP時代到来

1958年6月 米RCA 45・45方式 ステレオ・レコード発売
同年7月1日  米CBS ステレオ・レコード発売。

同年10月 EMIもステレオLPの発売を開始

1958年7月 英DECCA ffss(Full Frequency Stereophonic Sound)と銘打って45/45方式ステレオ・LPレコード発売開始。

同年 映画会社ワーナー・ブラザースが音楽子会社ワーナー・ブラザース・レコードを設立。

1961年  米CBS「360°SOUND」マーク使用開始。

1962年  ドイツ・グラモフォン(DGG=シーメンス)とフィリップスがDGG/PPIグループとして業務提携開始。

1963年 英DECCA「フェイズ4」レコードと銘打って、アンペックス製4トラック・テープ・レコーダー使用開始。

1964年 4トラック・テレコ Studer J37 登場

ノイズ・リダクション(NR)・システムが実用化

1966年 米国ドルビー研究所が開発したドルビーAタイプノイズ・リダクション(NR)・システムを英DECCAが採用。

1967年 EMIのアビーロードスタジオがStuder J37 2台採用使用開始。ビートルズが「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を録音。

デジタル録音時代の幕開け

1969年5月 NHK放送技術研究所で、トランスポートに放送用VTRを用いた世界初のPCMデジタル録音機(サンプリング周波数47.25kHz、量子化ビット13bit)の試作機開発。

1970年 究極のアナログレコーダー「Studer A80」登場。モノラル仕様、ステレオ・チャンネル、4チャンネルから、最大24チャンネルまでのバージョンがありデジタル時代に入った1988年まで製造された。

1971年  シーメンス・フィリップス両者合弁でポリグラムを設立。グラモフォン・フィリップスが傘下に入る。
1972年  ポリドール・レコードと統合し、ポリグラムに移管。

同年 EMI 管球式8チャンネル入力4チャンネル出力ミキシングぐコンソールに代わる、トランジスタ式24チャンネル入力8チャンネル出力TG12345ミキシングコンソールを自社開発し自社のアビー・ロードスタジオに設置。

同年 当時の日本コロンビアがPCM方式自社製デジタル録音機第1号機 開発、本格的なPCM録音によるレコード製作を開始。

1978年 英DECCA18ビット直線量子化、サンプリング周波数48kHzのデジタル録音機を自社開発、
1979年 1月1日、英DECCAボスコフスキー指揮ウィーン・フィルによる「ニューイヤー・コンサート」をデジタル録音、英DECCA初のデジタル録音レコード発売。

同年4月 米サウンド・ストリーム社製デジタル録音機を採用してRCAもデジタル録音開始。

同年7月2・3日 - EMI 自社のアビー・ロードの第1スタジオにて、デジタル録音開始。

同年11月 ポリグラム(グラモフォン・フィリップス連合)初のデジタル録音を行う。

1980年 DECCAがポリグラム(グラモフォン・フィリップス連合)に買収される。

1982年10月1日 CD登場!

 ソニー、日立(Lo-Dブランド)、日本コロムビア(DENONブランド、日立のOEMで発売)から、世界初のCDプレーヤーが発売。同日、CBSソニー、EPICソニー、日本コロムビアから、英DECCA、独ポリグラム(グラモフォン)も初のCDコンテンツを発売開始!

同年11月 東芝EMIlからもCD発売。

1983年 - RCA コンパクト・ディスク・発売開始する

1986年、販売枚数ベースでCDがLPを追い抜く。

1989年 ワーナー・コミュニケーションズ(旧ワーナー・ブラザース・レコード)と出版社タイムが合併し、タイム・ワーナーに改名。

1990年代前半にかけて、LPは国内では生産されなくなって行きましたが、ヨーロッパなどではまだまだ主流で日本国内でも輸入盤などは手に入っていました。

1998年 ポリグラム(DACC・グラモフォン・フィリップス)が「ユニバーサルミュージック」に吸収(売却)される。

21世紀 に入ってフルディジタルプロセスの時代となる

2001年 AES 42-2001としてデジタル伝送マイクロフォン規格制定

2001年以後放送録音も含めクラシックコンテンツを主体にフルディジタルプロセスの時代となる。

同年「PHILIPS」がレコード事業から撤退してクラシック音楽制作部門を「ユニバーサルミュージック」グループに譲渡(売却)DECCAレーベル事業と統合される。

2010年以降徐々にLPレコードが売れるようになり、欧米だけでなく、日本国内でもメジャーレーベル各社から相次いでアナログLP盤が発売されるようになり、落ち込んでいたCD生産枚数を補う形で順調に販売枚数を回復してきた?

2012年 9月28日 - EMIのレコード部門が「ユニバーサル・ミュージック(SONY関連会社)」の一員となる。(買収される)

2013年2月7日 - ユニバーサル・ミュージックのEMIレコードのポップス主要部門レーベルをワーナー・ミュージック・グループ売却。

付録 クラシックメジャーレーベルの変遷

classicsrabel2.gif

※画像をクリックすると拡大できます。

classicsrabel2.pdf はこちら。

★第3節 アナログ・テープレコーダーの問題...

アナログ記録信奉論者は

(以下注記(※)印のない専門用語はWikipediaの該当サイトにリンクしてあります。)

一部のアナログ記録信奉オーディオショップ関係者は

「アナログ録音時代のように(テープヒス)ノイズに埋もれて楽音がかき消されるいるのではなくて...。」

等といいますが...。

ヒステリシスカーブ」の問題で、全奏での強奏(チュッティー・フォルテッシモ)部分での「非直線記録部分の歪」と「サチュレーション(磁気飽和)ノイズ」は避けられず、最弱奏(ピアニッシモ)でのS/N悪化!楽音消失(記録不可能)避けられない問題で、クリッピング感(サチュレーション)歪感、ヒス(磁気記録)ノイズ感は常に付きまとっていたわけです!

磁気記録小史 ワイヤーレコーダー当時から

磁気テープはもともと「ヒステリシスカーブ」と呼ばれる「入力:保持力」の相関関係で直線性はあまりよくありません!

最小記録保持力以下では記録できないので、軟鉄の線材を用いた「ワイヤー録音機」の当時から録音ヘッドにはつねに一定レベルの「バイアス(最低)磁化」をかけていたわけです。

テープレコーダーの時代になってからも

紙やアセテートを用いたテープに磁性材を塗布した初期のテープレコーダーではワイヤー録音機当時から続く「直流バイアス磁化」が用いられていましたが、ヘッドそのものの"磁化"やバイアスノイズ(ヒスノイズ)などの基本的問題で「ハイファイ」とは程遠い、ワックス円盤録音機以下の代物でした

「交流バイアス」と「磁性材の進化」でヒスノイズ(磁気記録ノイズ)は低減したが

そこで「バイアス(基本磁化)」を交流にした「交流バイアス磁化」方式が考案されて、機材の性能が飛躍的に向上しました。

その後、テープ素材や塗布する磁性材の研究開発が進み、磁性材そのものも「コバルト添加」「メタルテープ」などによる高抗磁力・保持力のものが開発されて、より一層の「微細化」や「針状化」が行われ、2層塗布や磁性材メッキ!などの荒業?も開発されて「ロウノイズ・ハイアウトプット」化がどんどん進んでカセットテープのような「1/4インチ4トラック、4.75Cm/sec」の究極の条件でも、オープンリール1/2iインチ、38・2トラデッキと同等それ以上のDATに迫る高性能(※31)を発揮していましたが...。

しかしこれは民生用カセットデッキ用テープのお話で、規格を重んじるプロ用オープンリールデッキではLow-noiseテープ化はあまり進まず当時の公称S/N(Low Noiseテープ使用オープンテープでは「テープヒスノイズ」とあまり変わらないレベルのー60dB程度)以下の「あまりにも小さな信号」は記録できない!訳です。

なのでドルビーに代表される、ノイズリダクションシステムで「ダイナミックレンジを圧縮」する手法が考案されたわけです!

しかし前途

参※31 民生用デッキの性能比較
当時の民生用フラッグシップオープンリールデッキの一つ AKAI GX 400D-PROで
  • 周波数特性 30~27,000Hz!/̟̟±2dB/0VU(概ねpeek-3dB)/Low Noise テープ使用38・2トラ
  • S/N  58dB以上
  • ドルビーNRtypeS ONで87㏈!/メタルテープポジション、
  • ワウ・フラッター  0.035%/RMS以下
当時世界最高性能を誇ったカセットデッキ AIWA XK-S9000 では
  • 周波数特性 13~24,000Hz!/̟̟±3dB/-20dB/メタルテープポジション
  • S/N 裸 65dB!/メタルテープポジション
  • ドルビーNRtypeS ONで87㏈!/メタルテープポジション、
  • ワウ・フラッター 測定限界ぎりぎりの 0.018%/±0.035%
普及価格帯DAT?Victor XD-Z505 で
  • 周波数特性 13~24,000Hz/48kHzモード
  • 綜合S/N  91dB/48kHzモード
  • ワウ・フラッター(ジッター) 測定限界測定限界値±0.001%以下

Peak levelメーターとVUメーター、0VU基準録音レベルの関係

嘗てアナログテープレコーダーの時代にはVUメーターが「録音レベル監視」の主役でした。

※ PDFファイル ピークレベルメーターについて(TEAC取扱説明書より一部引用) peak_level1.pdf vumeter.pdf はこちら

vumeter01.jpg

かいつまんで、説明しますと...アナログ方式磁気記録では前途した非直線の「ヒステリシスカーブ」の都合で直線部分だけを使うわけにはいかずに、「磁気飽和」(サチュレーション)直前まで有効に?利用してダイナミックレンジを稼いでいたからです!

それでTEACさんの説明にある通り、0VU≒-8dB VUメーターの0VU(サイン波): Peak levelメーターの-8dBでキャリブレーションを行うようになったわけです。

コンパクトカセット当時は

(※ Nakamichi 550 取説引用 nakamich5501.pdf はこちら)

更に、1/4インチ(6.3mm)幅テープ2chステレオ(往復4トラック)4.75cm/sec記録の:カセットレコーダーがオーディオマニアのメインツールになってからは「ダイナミックマージン」さらに少なくなったので、磁気テープの「非直線」部分を5dB相当とみなして、VUメーター+8dBを0dBとする「ピークレベルメーター」が一般化したわけです。

デジタル録音の時代になって

DAT(遅れてMD)録音の時代になって、0dB=bit飽和 となってマージン(低歪領域)は無くなり、-18dB≒0VUとなってい、いらい「32bit量子化のハイレゾ録音」の現在でも"基準録音レベル"として規定されているわけです。

※JVCのVictor XD-Z505 取説からの引用 dat_recordinnglevel01.pdf はこちら。

余談 DAT16bitによる素人生碌は難しかった

デジタル録音黎明期のDAT(16bit直線量子化)による(インディーズミュージシャン含む)アマチュアデジタル録音は難しかったのは事実です。

嘗てのDAT(16bit量子化)による生碌での問題点は総合S/N96dBによるダイナミックレンジの狭さ!だけではなく「記録モニタリング不可能」であったことです!

3ヘッドアナログテープデッキのように、録音ヘッド直後の再生ヘッドでの記録モニターができないので、レベルメーターだけが頼りになっていました。

一般家庭でのFMエアチェックの場合は、別項で記したように(※3)、S/N確保の目的でDレンジ は約40dB程度に収まるように「コンプレッサーでダイナミックレンジ圧縮(プリエンファシス)」されており、(これがFMクラシック番組の「足かせの一つ」ともなっていますが...。)

逆にクリッピング(サチュレーション)も低レベル(楽音消失)も気にしなくて済み(特にBSのBモードステレオ放送、CSデジタル放送やCDからのリッピングなどのデジタル媒体コピー)「エアチェック時のレベル設定」が楽になるったわけですが。

ライブ録音では、レベル設定を間違えると

アマチュア(インディーズ・ミュージシャン)のライブ録音では、レベル設定を間違えると「ビシ・バシ・ガリ」のクリッピング(ビット飽和ノイズ)や逆にレベルが低すぎると「楽音消失」(プロの録音エンジニアでもたまに発生させていた)などが発生しやすかったわけで、ピークレベル計と「睨めっこ」する監視役の補助が必要で、それまでの38・2トラデッキのように、リハでレベル設定して、あとは回しっぱなしでほっておく?ことは難しくなったわけです。

それで、DAT(48kHzサンプリング、16bit,直線量子化)当時の「アマチュアの生碌」では意外と記録レベルで「コケる」ことが多く、特にアマオケの生碌では1/2インチ幅ローノイズテープを贅沢に使い38/2トラのテープデッキでアナログ記録したほうが、DATのように失敗せずに録音がしやすかったことにもつながっていたわけです!

アナログレコーダーのクロストーク

各トラック間にはわずかなガードトラックとしてギャップを設けてありますが...。

民生用の38・2トラ AKAI GX-400DPRO で クロストーク比45dB/30~27KHz(38㎝/secローノイズテープ使用時)まあこれが標準ですから「アナログ当時のNHK送り出し」も同程度、当時の2インチ幅16トラックのスタジオ用のアンペックスや一斉を風靡して世界中のスタジオで使用されたスチューダーでもこの程度(トラック間のガード幅が同じため!)

それでも米国系のメジャーレーベルのマスターテープには

1950年代ステレオ初期のRCAとCBS(現SONYエンタテイメント)の「米国系2大レーベル」録音は当時から2インチ(50㎜幅)Tapeを贅沢(※6)に使用したアンペックス、スチューダー、や3Mなどのスタジオ用8~16Chマルチトラックテープレコーダーで遮蔽ブースで囲まれた各パート(楽器郡)に極端なオンマイク?のマルチマイク・マルチトラック収録されていて、マスターテープの各トラックには各パートのクリアーな楽音が記録(※32)されていました。

もちろん、弦バス、パーカッション、パイプオルガンに至るまでかなりの至近距離のオンマイクで...。

最近になって、デジタルリマスター版CDが多く再発売されるようになったこれらのレーベルでは、CD製作用のデジタルリマスターのおかげで、「エ~!こんなにすごい音が記録されていたんだ!」と驚かされることが多くなりました!(※32)

参※6)戦後間もない復興期真っただ中の日本では「VTR」テープはもちろんのこと「音源」収録用の録音機用の録音テープまで「使いまわし」再利用が当たり前で、そのためにラッカー盤に電気吹き込みしていた戦前・戦中・敗戦後の復興期よりも高度成長期当時の貴重なテープ音源が残っていない場合が多いようです。

参※32)但し当時のマイクロフォン&ヘッドアンプはS/N、ダイナミックレンジともに小さく、弱音でのソノリティを保とうとすると、大音量ではサチって(飽和)する傾向にあり、いくら遮音壁で遮蔽しても、ffffでは後述する大オーケストラの絶対音圧でマイクロフォンが飽和してしまい「音割れ」する傾向にはありました!

ノイズリダクション録音の問題点

現状のCD製作システムでは「CD制作側」でのダイナミックレンジ・コンプレッション(プリエンファシス)は行われていますが、基本再生側はリニア増幅となっています。

それでも総合S/N96dB とダイナミックレンジ50dB 以上は確保されており、これ以上のダイナミックレンジは正直SP再生では不要ではないでしょう?(詳細後述)

「静かな住宅地(環境騒音レベル40dB程度)」にある一般家庭の場合、特別な防音処理でもしない限りー50dB以下の最弱奏pp(ピアニッシモ)部分でVolume設定したら、最大ピーク値0dBつまり強奏ff(フォルティシモ)部分では近所から苦情が来るほどの(環境基準レベル80dBを軽く上回る)大音響になってしまうでしょう!

まあヘッドフォン聴取なら問題はありませんが.。

嘗てのアナログ録音の時代にはカラヤンの逸話を紹介したようにpeekー50dBの弱音部を40dB以上のS/Nで記録することは難しく、

ために1966年 に元アンペックスでテープレコーダーの開発をしていたドルビーが設立した米国ドルビー研究所が開発したドルビーAタイプノイズ・リダクション(NR)・システムx2重連!などという荒業を用いるしか手立てがなかったのでしょう。

しかし「Dolby A-type Noise reduction System 」(※33)に限らず、「ノイズリダクションシステム」は突発的な衝撃音「ピアノやパーカッション」には弱い欠点があります!

参※33)現在も広く用いられているシステムで可聴帯域の20~20,000Hzを4分割して、各帯域で圧縮、伸張を行うシステム。約10~15dBのS/N比の改善効果がある。

「ブリージングノイズ(息継ぎノイズ)」と呼ばれる現象も

ブリージングノイズとは、コンプレッサーの応答遅れで生じるランダムな非周期ノイズの事です!

「コンプレッサー」の一種リミッターでfff部分を非線形増幅してTapeがサチュレーション(飽和)しないようにして、なおかつコンプレッサーで全体のダイナミックを圧縮してS/Nを改善する手法がとられて(現状も)LP制作されていたわけです。

前途したように現在もFM放送の実行ダイナミックレンジはCDより約10dB程度圧縮して40dB程度になるようにして放送されています。

ためにFMで聞くクラシックCDはDレンジが40dB程度にまで圧縮されていて!

逆にオルガン曲などではCDよりも弱音部分で重低音が誇張されて聞こえるわけす。

可聴帯域を4分割して「細かく」制御したのがスタジヲ用のドルビーNR-Aシステムで、これを簡略化して高域だけに効くようにしたのがご存じカセットデッキの必需品ドルビーNR-Bシステムとなるわけで「飛躍的に」1/4インチ幅テープと4.75Cm/secという低速送りを用いたカセットのS/Nを向上させてくれたわけです。

しかしノイズリダクションシステムでは常にブリージングの問題は付きまとっていました。

特に録音時・マスタリング時に起こると事態は深刻で..

例えば「アナログ時代?最後の迷録音」の一つ

サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン」、メシアン:昇天 CD
ミョンフン(チョン) (アーティスト, 演奏), メシアン (作曲) 2016年グラモフォンエーベル再発売

 録音時期:1991年10月
 録音場所:パリ
 録音方式:デジタル録音

データでは一応デジタル録音ということになっていますが...。

どういうわけか最近のデジタル録音に比べて弱音部のレベルが+10dB 程度持ち上がっておりDレンジがFM放送並みに40dB程度しかなくて、見かけ上?(25Hz)前後のオルガンのペダル音がハイレベルでマスタリングされています!

更に、本来は弱音部で気になるはずの高域の「ヒスノイズ」は意外と少なく、代わりに大きな周期の極低周波のブリージングが生じていて全体のレベルが不安定な状態になっています。

このCDはグラモフォンレーベルでありながら「AADADDDADDDD」といった表記が見当たりませんが、新譜発売年代と「Digital Recording」の表記がないことから、AADかDAD、いずれかのマスタリングで制作されたCDだと思われます。

マルチトラック録音機で収録されて、マスタリング(編集、2chミックスダウン、プリエンファシス;ダイナミックレンジ圧縮処理、イコライジング処理)を行うの際に、収録したアナログレコーダーと異なった機材を使用したためのアジマスエラーやその他の理由でドルビー動作閾(しきい)値に誤差が生じたか、

ダイナミックレンジ確保のためにNRを併用してデジタル録音したが、(アナログ)マスタリングを行う際のD/A変換時にNRでデコーディングするのを忘れてブリージングが生じたのではないかと思われます。

マルチチャネル・マルチトラックから2chにミックスダウン(マスタリング)する際のミスではないでしょうか?

ある意味、まあ怪我の功名とでも言いますか...。

お手軽重低音チェックコンテンツ?としてこの曲の中では人気が高いようで...、

よく売れるので?、再度マスター音源からデジタルリマスターして「せっかくの重低音」がレベルダウンして「人気もダウン」するのを恐れて?新譜盤発売当初そのままのマスタリングで再発売(増刷)が続けられているようです。

(過渡期にあたる)この時期のCD制作の問題点を象徴している迷録音?の一つでしょう。

第6項 データ保存性の問題

テープレコーダーによるアナログ記録方式では「前途の例」のように同じメーカーの同じ機種でも個体差で「微妙なアジマスエラー」(※34)や、ヘッド汚れによる感度低下や磁気テープの感度邑(むら)でNR動作レベルがずれて、前途のような状況が起こりやすいわけです!

更には、長期間保存すると「テープの経年変化・劣化」で最悪の場合「わかめ状」になったり、保磁力が変わり、高域の減衰(およびS/N低下)が発生しやすくなります。

また、アナログレコーダーのコンディションを長年にわたり維持するためのメンテナンスも大変な費用と、手間暇を要します。

この点トランスポートに複雑な機構の「VTR」を使用した、初期のデジタルレコーダーはともかくとして、HDD記録の現行のシステムでは、アナログ記録に比べると経時変化に強い、すなわちデータ保存性が高いといえます。(※35)

※34)テープに対する磁気ヘッドギャップの角度誤差ずれのこと。

参※35)事実、小生は膨大なアナログデータ「放送録画、放送録音、ライブ記録」を「再生するすべ」をなくしてしまいました!悔しい!

小生自慢のAKAIはとっくに会社がなくなり、究極のカセットデッキAIWAもSONYに吸収されて数十年がたちスペアパーツ消滅!で修理不可能に?

★第4節 アナログLP再生機器の問題

ピックアップカートリッジのチャネルセパレーションの問題

今となってはお笑い種のchセパレーション、LP当時の左右ch間のクロストーク比は20㏈程度(つまり左右のステレオ信号がそれぞれ1/10ずつ混じっていたわけ!)

これは再生側のステレオピックアップカートリッジに起因するところ大で。(もちろんカッティングヘッド側の問題もありましすが)

当時の代表的放送用MCカートリッジ DENON DL-103で 25㏈/1KHz程度。(オルトフォンも同じ)
1970~80年代の世界標準MM型?シェアーV15 でも同じ程度。
当時の先鋭機種オーディオテクニカ AT150EaG で30dB/1KHz

一般的なMM方式のFR-5E 30dB/1KHz、25dB/10KHz
Victor 4MD-!Xが周波数特性10~60KHz!30dB/1KHz、20dB/30KHz!。
といったところで現行の普及品オーディオテクニカ AT-VM95で 22dB(1kHz)程度

参※)ピックアップカートリッジの周波数特性例

現状入手可能?な世界で最高額のオルトフォンのMCカートリッジ The MC Century(日本国内定価¥1,260,000(税別)!)でも

  • ●チャンネルセパレーション(1kHz):25dB 、(15kHz):22dB 
  • ●周波数特性(20Hz-20,000Hz):+/-1.5dB
  • 針圧/2.4g
  • スタティックコンプライアンス/9×1μ/dyne

オルトフォンと並んで有名なMC型として日本における放送局標準となったDL-103」の現行バージョンが

  • ●再生周波数/20Hz~45kHz/ +3dB,-
  • ●チャンネルセパレーション(1kHz):25dB以上 、
  • 針圧/2.5±0.3g
  • スタティックコンプライアンス/5×1μ/dyne

※ 但しこれらの2製品は「MC型」なので適当なステップアップデバイスが必要です。

通常、高品位なステップアップトランスが組み合わされますが、ご存じ通りトランスには「インピーダンス(交流抵抗)」があり「DL-103」の高域特性はがた落ち!となります。

高性能なディスクリート構成の半導体ヘッドアンプもありますが「デバイスノイズ」が付きまとい「S/N90dB」以上は難しいでしょう。

オルトフォンをまともに動作させるために、さらに数十万円から、数百万円の「ヘッドアンプ」が必要になってくるでしょうしかも「S/N90dB」以上は難しいでしょう!

という事で小生は「MMカートリッジ派」でした。

最近まで製造されていたシェアーのM44Gで

  • Frequency Response: 20 Hz - 19 kHz
  • Stereo Channel Balance: 2 dB
  • Channel Separation (at 1kHz): 20 dB
  • 針圧0.75~1.5g

シャアーと並んで当時国内トップの性能と製造数を誇りで現在もピックアップカートリッジ製造メーカーとして生き残ったオーディオテクニカの 現行機種 AT-VM95Eで

  • 再生周波数範囲 20~22,000Hz/ +3dB,
  • チャンネルセパレーション 20dB(1kHz)
  • 針圧 2.0g標準
  • ダイナミックコンプライアンス 7x1μ/dyne/100Hz
  • スタティックコンプライアンス 17x1μ/dyne40!

ところがLP盤全盛当時は

SHURE V15 TYPE IIIが

  • Frequency Response: 10 Hz - 25 kHz
  • Channel Separation (at 1kHz): 20 dB
  • 針圧0.75~1.25g
  • スタティックコンプライアンス 30x1μ/dyne40!

AT-150EaGが

  • 再生周波数範囲 10~23,000Hz/ +3dB,-
  • チャンネルセパレーション 30dB以上!(1kHz)
  • 針圧1.25g標準
  • ダイナミックコンプライアンス 10x1μ/dyne/100Hz
  • スタティックコンプライアンス 40x1μ/dyne40!

普及型のAT-VM35ですら

  • 再生周波数範囲 10~25,000Hz/ +3dB,-
  • チャンネルセパレーション 30dB以上!(1kHz)
  • 針圧1.5g標準
  • スタティックコンプライアンス 24x1μ/dyne

一般的な(中級クラスの)FR-5で

  • 再生周波数範囲 20~20,000Hz/ +3dB,-0.5dB!
  • チャンネルセパレーション 30dB以上!(1kHz),25dB以上!(10kHz),
  • 針圧1.5g標準
  • スタティックコンプライアンス 12x1μ/dyne

物理特性のチャンピオンホルダーとしてはディスクリート4cHレコード"CD-4"再生用として開発されたVictor 4MD-!Xが

  • 周波数特性10~60KHz!/ +3dB,-
  • 30dB/1KHz、20dB/30KHz!
  • 針圧1.5g~2g
  • スタティックコンプライアンス 35x1μ/dyne

しかしシェアー、DENON以外は交換針入手不可能で、この当時の物理特性を再現することはできません!トホホ...。

FM放送はもう少しだけよくて

アナログチューナー時代のTRIO(その後のケンウッド)KT-7500で 45dB/400Hz(35dB /50~10kHz)

少し以前のデジタルシンセサイザーチューナー PIONEER F-777 で

70㏈/1kHz(54㏈//20~10kHz,)

S/N比92㏈/ステレオ放送受信時となっていますが...。

さらに言えばFM放送の公称帯域は公称値50 Hz~15,000 Hz、/-3dBで、実質で25~17Khz/-10dB程度は確保されているみたい?ですが19khzのステレオパイロット信号とのからみで「せいぜいそこ止まり」。

「さらにダイナミックレンジ」についてはプリエンファシスと称してpeek-40dB程度に圧縮されています!(一般のFM受信機の性能がせいぜい70dB程度のため)

デジタルだと

所有器TEACのUSBDAC DSD USD301で S/N比105㏈ クロストーク"0"(完全左右セパレートモノラル構成のため)

ここで問題になるのが伝統的?ドンシャリ・ボンスカ?マスタリング

アナログ盤全盛時代の1860年代から1980年中ごろまでは一般家庭の一般人は前途した通りまだまだ「LowFi全盛」でステレオ電蓄やラジカセ、当時の最新メディアのCDも「ちゃっちいミニコンポ程度」で聞く有様!

本物の重低音などは庶民が聞けるはずもなく...

限られた極一部の「超お金持ち」の人が「タンノイ」などでスピーカー再生された重低音を楽しめる程度で...。

お金持ちオーディオマニアが自慢していた?「アルテックの映画館用大型スピーカーシステムA-7」ですら38Cmウーファー&ホーンスコーカー」の構成で大音量は出せても「低音再生は大したことはなく」(小生が務めていた外資系会社の食堂兼休憩室に、社長の趣味とかで、SMEアーム、シュアーカートリッジ、デンオンDDターンテーブル、マランツアンプの組み合わせで設置されていたので毎日聞いていた!)

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一般家庭では100Hz程度の低音再生がやっとの時代

一般人は、重低音どころか100Hzがやっと、オーディオマニアですら40Hz/-10dBていどのスピーカーががほとんどで?

そろそろ重低音も聞けるヘッドフォンが出だしたかな...、程度で今ほど重低音(カーオーディオ?)に関心があったわけではありません。

更に「ステレオ電蓄」ラジカセ程度では高域特性も十分ではなく、それらの諸事情を考慮して、100Hz近辺を持ち上げて、50Hz以下の重低音はスパっとカットして更に、1kHz以上の高域をRIAAカーブ以上に持ち上げハイ上がりの「ドンシャリ・マスタリング」が幅を利かせていたわけです。

貧乏オーディアマニアを自認していた小生のSPシステムは

当時一世を風靡した? ONKYOU F-500

3ウェイ・3スピーカー・セミバスレフ方式(バッフルに穴が開いているだけ!)・ブックシェルフ型(と言ってもデカイ!)

クロスオーバー周波数 1kHz、6kHz

使用ユニット 低域用:25cmコーン型
中域用:12cmコーン型
高域用:ホーン型
公称再生周波数帯域 40Hz~20kHz/-12dB
特に低域は

  • 70Hzで-6dB(実数比1/2)
  • 60Hzで-10dB(実数比1/3)
  • 40Hzは-12dB(実数比1/4)で耳を凝らして?やっとこさ状態

しかもスピーカー中心軸上(真正面の1mぐらいの位置で)のお話。

といったところで、100Hz以下はほとんど出ていない状態でした!

現在もドンシャリマスタリング

現在でも事情は変わっておらず、というより前途したようにアナログ盤全盛期に比べて一般人が入手できる「ピックアップカートリッジ」の物理(電気)特性は退化しており?

つまり日本では別表のように1990年代前半にLP盤の需要が途絶え、2010年頃まで製造が中断したので当然アナログLPレコードの再生環境は崩壊して?、

1980年代半ば当時世界最高水準を誇っていた「日本のオーディオ専門弱小企業」がどんどん統廃合されて、当時の製造設備や(職人ワザの)技術継承が途絶えてしまって、機械時計並みの「超精密加工技術」がいる「ピックアップ・カートリッジ」と「交換針」の製造技術が廃れたことがあげられます!

しかし、LPレコード用の「マスタリング」マニュアルは引き継がれ、当時より性能が悪くなった?「ピックアップ・カートリッジ」のためにも「ドンシャリ、ボンスカ」イコライゼーションは伝統的に受け継がれているわけです!

更にシェアー神話は、当時針圧2グラム以上が定番だった時代に「針圧1.5グラム以下」のハイコンプライアンスとハイトラッカビリティーを武器に世界中の定番になっただけで、ほとんど「シェアー神話」プラシーボの世界で「オルトフォン」や当時の「DENON103」に比べて大幅に性能が違ったわけではありません。

但し当時としては、オルトフォンなどのMC型より(ステップアップトランスがいらない分)コンプリートカートリッジ、交換針共にハイコストパフォーマンス?でした。

アナログステレオLP盤特有のノイズ

アナログ盤特有のノイズとして「ゴースト」エコー、と「内周トラッキング歪」があげられます。

しかしアスペルガー星人(発達障害者)である小生は「プチプチ・ノイズ」(盤面埃、傷)と「シャー・ノイズ」(針音&テープヒスノイズ)が苦手で、この"2大ノイズ"から解放されただけでも「ディジタルレコーディング」を大変ありがたく利用させていただいています!

特にppで雰囲気帳消し!の針音とテープヒスノイズ(シャーノイズ)は大の苦手で、SPシステムで聞くと環境ノイズも相まって「脳内フィルタリング」で何とかなりますが、ランダムに現れる「パチパチ」ノイズはイライラの種にもなり音楽に集中できなくなります!

LP盤時代にはこれが嫌で「盤面に傷がつくと」お蔵入りにする盤がよくありました。

S/Nの問題

LPのダイナミックレンジはS/N比換算で50~60dBあったといわれていますが、後述する録音機材のオープンリールテープレコーダーが、38・2トラではLow noise tape使用で60㏈(1000倍)程度ドルビーNRシステム併用で70dB程度、76cm/secの1インチ幅スタジオ用スチューダーでも同じ程度だったので、原理的にはその程度までは行けそうですが、実際は後述する問題で、SX-68課ティングヘッド登場後も極一部の輸入盤にみられるようなかなりの"ハイレベルカッティング"でもDレンジ50dB(実数比300倍)程度、たいていは46㏈(実数比200倍)程度に収まっていたようです。

ゴースト・エコー

ゴーストエコーとは、正しく幽霊音、というよりは「蜃気楼」のような音!

ディジタル録音以前の、アナログレコーダーの時代には「38㎝/secとか78㎝/sec」などの速度でテープが走っていたわですが、テープは薄いので大きな磁力が記録されるとリールに「巻き取られた」際に重なった部分で「転写」されてしまい、それが「ゴーストエコー」となってffの両側(主に後側の無音部分)で聞こえてしまう現象です。(ショルティ/シカゴのマーラーのアナログレコーディング盤などでしばしば経験させられました!)

同じことは、ラッカーマスター盤カッティングの際にも起こり(大振幅で隣の溝を押してしまう)ますが、こちらはカッティングマスターテーププレーヤーの主ヘッドの直前に「レベル監視ヘッド」を置いて、ppの時はグルーブ間隔を詰めて、大振幅(ff)の直前でグルーブ間隔を広げる「バリアブル送り」方式で長時間カッティングと両立を図っていますが...。

トラッキングエラーによるアナログLP最内周部での問題 

かつてLP時代には最弱音の「不協和音が正しく濁っていた!」

リニア送りで常に直径方向に刻んでいる「カッティングマシーン」と異なり、レコード盤の外側を中心に円弧動作している「トーンアーム」の先についた「スタイラス」の振幅方向とグルーブ直行軸に角度差(位相差)が現れて結果としてカートリッジの「左右チャネル」出力のトラッキング時差(位相差)で歪が生じる現象です。

これは特殊な「リニアトラッキング」アームを用いたとしても「LP盤」自体の「曲がり・ゆがみ」や「偏芯」で完全には解消できず、

特にこの現象が大きい最内周部で顕著に表れや少なります!(通常off set したアーム配置でレコードの記録部の中央あたりで誤差0°となるようになっています、という事は最外周と最内周ではトラッキングエラーが増大することになります、特に"周速度が小さくなる最内周"では影響が起こりやすい!わけです)

具体的にはカラヤン盤「ツァラトゥストラはかく語りき」(1973年2月ベルン大聖堂で録音)の最後のppの部分でフルート、バイオリンの最弱音が濁る(混変調する)現象は避けることが難しかったようで!

同じ音源がCD化されて初めて「きれいな不協和音」が着せるようになりました!

ほかにもカラヤンの逸話としては「1972年1月3~5日にかけてベルリンのイエスキリスト教会(※5)で録音されたヴェルディーの「レクイエム」が有名で「今では当たり前のようになっている出だしの最弱音(-50dB)を「ヒスノイズ」無しで、録音したいと言い張り「ドルビーNR」を2段直列で使用した?!という話は有名。

フォノグラム(グラモフォンレーベル)が、デジタル録音しだすのはDeccaよりさらに遅くに1980年代にいってからで、カラヤンは1969年5月の来日時にNHK放送技術研究所で開発された「デジタル録音機」で放送用に録音されたプレイバックを聞いて感動して、前途した「駄々っ子」要求を出したのではないでしょうか?

この部分を美しく聞けるようになっただけでも小生としては「ディジタル(CD)メディア」は相当ありがたいといえるわけです!

参考までに、小生の使用していた機材は「ターンテーブルSONYーTTS4000、トーンアームGrace G860、カートリッジ・シェアーV15他」で、当時望むべく最良の組み合わせの一つであったはず?

参※5)教会といっても、戦前・ナチスドイツの時代にW・フルトヴェングラーとベルリンフィルの放送録音のために作られたスタジヲのような施設で、「音響的に優れた礼拝堂」として有名で、戦後もカラヤンのサーカス小屋ができるまでの70年代初頭まではこちらで録音が行われていて、各楽器が明瞭に記録された数多くの名録音が残っています。

RIAAカーブでは歯が立たないチュッティーエンディング部分

別項で取り上げた、マーラーの交響曲やサンサーンスの「交響曲第3番オルガン付き」では、RIAAカーブでイコライジングしても、25Hz近辺の大振幅の重低音が混ざったff部分ではそのままのバランスでは針飛び?するくらいに振幅が大きくなるためにレコード盤面に「刻み切れず」に致し方なく「重低音」をカット(もしくは大幅レベルダウンミキシング)してマスタリングを行い、カッティングしていたようです。

特にクライマックス(最内周部)で"重低音を含んだフォルティシモで終わるような曲では「アナログ」盤の記録限界を超えていて、「デジタル録音」でさえも「LP盤デリバリー」を前提とした初期の録音ではマスタリングで大幅に重低音域をカットしていたようです。

参※23)フォノイコライザに関するWikipediaの解説 はこちら。

ハウリングの問題

実はこれが重低音を記録できないもう一つの大きな問題でもありました。

ハウリングをなくすには「NHK]の放送送り出し調整室のように、完全にリスニングスペースとは遮断された(防音・防振)された「レコードプレーヤー室」が必要で、個人宅ではなかなか実現困難で「50Hz以下」の重重低音などは「盤面」に何とか刻めて再生できたとしても、レコードプレーヤーにスピーカーシステムの重低音振動が伝わりたちまちハウリングしてしまうことになるわけです!

そこで、その昔はハウリングの心配がない1/2インチ4トラック「オープンリール」メディアなども発売されていました!

小生の同僚はショルティの「ニーベルングの指輪」を全曲そろえていて、小生も借り受けて試聴させてもらったことがことがありました。

確かに、シェアーがどうの、オーテックのVMカートリッジがどうのこうのレベルではなく「素晴らしいチャネルセパレーション」と重低音には大感激しましたが、「テープヒス」はどうしようもなく不愉快でした!

もちろんヘッドフォンでの試聴、(テープデッキは自慢の一品 AKAI GX400Dpro)但しダビング用するには当時は「ナカミチの可搬タイプカセットデッキ」しかなく断念しました。

それに「25㎝」ウーファーx3wayのONKYOUでは、公称40Hz/-10dBでも70Hz以下の重低音はあっても仕方なく¨...。

結語 LPレコード再生→ハイレゾ変換聴取崇拝は単なる「都市伝説」!

アナログLPからの「ハイレゾデジタル収録がよい音がする?」というのは「単なる都市伝説」の一つ!

アナログLPレコードにはたくさんの情報が入っていて、自宅でハイレゾデジタル化したほうが素晴らしい音が聞けるというのは「真っ赤なウソ...」とまでは言いませんが「都市伝説の一つ」ぐらいに考えておいたほうがよいでしょう!

前途したように、マスタリングの段階で「ある程度以上の高域と重低音」はフィルタリングされています!

1966年以降の録音では20kHz以上のハイレゾ域?は記録されていない!

米国ドルビー研究所が開発したドルビーAタイプノイズ・リダクション(NR)・システムでは周波数特性は20~20KHz±3dBで超高域は保証していません!(というよりはカットされています!)

つまり1966年 以降に録音されたマスターテープではハイレゾにはなっていません!

更にマスタリングの違いを勘違いしている場合が多い!

第1節で説明したように、アナログLP盤は「ドンシャリ」傾向の強いマスタリングがされています!

それで、このピーキングされた高音域を「ハイレゾ」と勘違いされている一般オーディオマニアが多いようです!

今の国内プレスでは

それに今の(33r.p.m.等速)カッティングプロセスではノイマンのSX-68カッティングヘッドをもってしてもそんなに「超高域まで音(楽)溝を刻めません!」。

しかも、プレス用のスタンパーを作る途中のメッキ工程で更に...。

さらにはレコード再生でもっとも重要なパーツとなるフォノカートリッジは

さらに、マニア大人気の「shareV15シリーズ」やオルトフォンでは20KHz以上の超高音域の再生は全く考慮されておらず現在入手可能な「ハイレゾ領域」再生可能フォノカートリッジは放送用として細々と製造され続けているDENON 103の最新モデルに限られます!

しかしDENON 103はMC型なのでステップアップトランスで昇圧すると「トランスのインピーダンス(交流抵抗)」のためスペック通りの20KHz以上の超高域再生は難しくなります!

また、細々と生産が続けられている普及品のピックアップカートリッジでは20KHz以上の音を拾えません。(前前項参照)

つまり上記2つの理由で「LP盤」からの個人ハイレゾ化?は「プラシーボ効果」以外は期待できません!

非接触のCDと違って「花(LP)の命は短くて」

レコード針、レコード盤も100時間ぐらいは持つ?といわれていますが...。

レコード盤の"音溝"は「ハイヒールのかかと」どころではない超高圧でレコード針に痛め続けられて、10回程度で...。

しかも大事に大事に保管してあるカートリッジも磁気回路のパーマロイ(純鉄)が着磁して...さらに冬季湿度の高いマンションなどの周囲豪住宅では保管状態が悪いと湿気で...。

大事な交換用のスペア針も何年も放置すると「経年変化」でカンチレバー付け根にあるゴムダンパーが劣化してダメに!...。

メーカー純正指定の交換針も...

「嘗ての名機」でも製造メーカーが製造終了してから、10年以上いや半世紀近く経つとメーカー製の純正品は入手困難で...、入手可能な交換針は何やら怪しげな「中華製」かもしれないし?

かといって現状、新品(新作)の交換針が入手可能な、カートリッジは限られているし...。

YouTube動画でよく見かけるように「スピーカーユニット」の再生は割と容易くて熟達の職人がいる専門の「工房」は結構あるみたいでも...。

機械時計のように精密加工技術がいる「ピックアップカートリッジ」は専用の「特殊治工具」と測定機器が無いとレストアはまず不可能!で町工場では...。

LPレコード再生は自己満足とプラシーボ効果の世界では...

ここまで「苦労してたどりつくアナログLPの再生音」だから、「プラシーボ効果満点で、なんだか超素晴らしい音に聞こえて」も仕方ないでしょうが...?

実際は、Web配信の「同じコンテンツを」iPhone +BuruTouthヘッドフォン で聞いたほうがよほど...。

デジタルリマスターはメジャーレーベルに任せましょう!

現在多数所有している秘蔵LP(アナログ遺産)を何とか生かしたい!と思う気持ちはわからないではありませんが...。

メジャーレーベルが保有する良い状態で厳重に保管された「記録音源」から、これまた良い状態に補修・整備・保存されたアナログマルチトラックレコーダー&ノイズリダクション機器で直接32bitリニアデジタイジングして「最新のデジタルミキシングコンソール」でミキシングして、トラックダウン&ノンリニア編集するADD方式でマスタリングされた「デジタルリマスター」原盤によるレプリカ(CD)音源のほうが、素晴らしい音質で嘗ての名盤を楽しむ事が出来ます!

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第1章 デジタル音楽コンテンツの利点を再評価すべきでは!... の目次

第2章 ハイレゾオーディオ はWEB配信音楽コンテンツに席巻された!レコード業界の生き残りをかけた敗者復活戦? の目次

第3章 LPレコード「ハイレゾ・ハイファイ説」は"都市伝説"にすぎない! の目次

第4章 SONYが切り開くハイレゾオーディオの世界とは... の目次

appendix Ⅰ 現在SONY傘下の義兄弟!となった嘗ての米2大レコードレーベルとヨーロッパ系レーベルの音の違いとは? の目次


 

公開:2020年2月 9日
更新:2024年3月 4日

投稿者:デジタヌ


TOP連載『 ハイレゾオーディオ High resolution とは...』ー第1回ー


 



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