タヌキがゆく

永田音響設計は神ではない?

ご注意※印は当サイト内の紹介記事リンクです。

但し、その他のリンクは事業主・関連団体の公式サイト若しくはWikipedia等のWEB辞典へリンクされています。

全能の神が如く もてはやされている永田音響設計。

現在日本のホール、造営において(株)永田音響設計が絡んでいない施設を探すのが難しいくらい、同社の名声は全国・世界にまで「響き渡っている」!

しかし、彼らとて人の子「全能の神」などではない!

彼らの手がけた、もしくは計画に巻き込まれた先品の中には、全く箸にも棒にもかからないホール(※関連記事はこちら)も数多く存在する。

そもそも「音響設計(Acoustic Design)」とは何なのか?

建築物の設計には大まかに分類して、

①意匠設計(外観、外装や内装の施設アウトライン設計)

②構造設計(構造計算)

③設備設計

等の各部門に分かれ、それぞれデザイナー・アーキテクト構造エンジニア 、設備エンジニアと呼ばれる人達が関わっている。

このうちの①意匠設計に関する部分に音響設計(Acoustic Design)は含まれる。

(株)永田音響設計の公式サイトによると。

コンサートホール、劇場をはじめとして、スタジオ、学校講堂、会議場、体育館などの音響設計は当社の中心的な業務です。その特色として次の2点があげられます。
(1)騒音・振動防止から室内音響、電気音響まで、"音"に関する一切の環境、設備を対象に音響設計を行います。
(2)建物の基本計画、基本設計、実施設計の各段階における音響条件の検討、建築および電気音響設備の設計から施工段階における工事指導、工場検査、完工時における音響性能検査まで建築の設計と施工の各段階に応じて、一貫した方針のもとに音響コンサルティングを行います。<同社公式サイトより引用>

となる。

つまりは、建築設計事務所、でもありコンサルタント、でもあり時によっては事業を請け負う共同企業体(ジョイントベンチャー)の一員にもなるわけである。

(株)永田音響設計の関わった施設は、

概ね、以下のそれぞれの用途に最適の「音響空間」を目指してプランニングされていた(はず?)。

1)舞台芸術センター(※俗に言う多目的ホール)

2)コンサートホール(※音楽専用ホール)

3)劇場(※主に演劇用途)

4)スポーツ施設・大空間(※アリーナ、ドーム、コンベンションセンター

5)教育施設(※学校法人・自治体の講堂、音楽堂。教育施設)

<以上同社、HPのプロジェクト(関わった事業区分け)より。>

(※は狸穴音響工学研究所の補足説明。)

これらの施設分類は、「お国の補助金」の出所にも関係している。

究極の「多目的ホール」の数々、

一覧に目を通されると判るが幾つかの施設は「重複して紹介」されている、

つまりは究極の「多目的ホール」と呼んでも構わないかも。

但し、各々のプロジェクト覧の「その他(大勢)のプロジェクト」で紹介されている施設は、彼らにとっては何らかの不本意(又は満足のいかなったプロジェクト)なのかもしれない。

又満足のいかない結果に終わっていても、それなりのコンサルタント料を頂いた施設へは、それなりのアフターサービス(※1)として、「プランニングBy永田音響設計」ブランドとしてプロジェクト一覧に加えられているのであろう。

彼らのこだわり部分は、ホール紹介における残響時間の注釈(測定条件)部分にある、

(満席/500Hz) と言う条件がそれである。

500Hzという周波数は肉声のスペクトラム(周波数分布)における1番大事な部分で、このあたりが人の聴覚においても最も感度が良い部分でもある。

肉声や楽器の基音の多くがこのあたりの周波数にあり(世界標準ピッチA(ピアノの真ん中のラ

)=440Hz)、耳になじんだ心地良い部分でもあるわけである。

舞台芸術センターについても同様、肉声(話し声)の基本スペクトラム(周波数分布)はこの500Hz当たりである。

劇場として紹介されている、施設は概ね1秒以下の残響で反響対策に重点を置き、透明感のある肉声の遠逹に留意しているだろうことがうかがえる。

反対にNHK等の音響研究所と異なる部分も...。

金科玉条の如く500Hzの連続音にこだわられているようだが、

音は客席(リスニングポイント)により直接音・生音と反響(残響の元)とが重乗され、時として不快な歪み(高調波)を生む場合があることも重々ご承知のはずなのに...。

特に大理石や、大谷石、打放しコンクリートなどの石材系のホール内壁ではこの傾向が強いことも関係者では周知の事実。

高い周波数(倍音)は音色や響きを決定し、音の明瞭度、楽器のセパレーション、ロケーション分解能に500Hz前後の音声退帯域の周波数スペクトラムが効いてくるので重要ではあるが、同時に減衰特性と楽器にはあり得ない奇数次の倍音=高調波ノイズの検討も重要になってくる。

生音(原音)より大きな反響音では耳障りなこだま(エコー)、でしかならないし、同じく楽器音が大きく歪む様では耳障りな反響でしかならない。

銭湯の浴場の響きはもはや心地よいレベルを超えているのは万人の認めるところではないか!

心地良い響(残響)とは、

奇数次の高調波歪みの無い、減衰特性の良い微かな響きであらねばならない。

つまり、スケール・モデル実験やコンピュータシミュレーションでは500Hzの連続音だけでは無く、受信音の高調波歪み(直接音と間接音の合成音に存在する奇数次倍音,)と残響の減衰特性を測定、あるいは,シュミレーションする必要があるわけである。

具体的には1/20スケールモデルの実験なら、500HzX20倍+10、000Hzの短音(サインウェーブ)のバースト波を高性能スピーカーで創出し、100KHz(人の可聴域の5倍)以上の周波数帯域を持つハイレゾ録音機材(無視向性高性能マイクロフォン+波形記録装置)で波形を収録し、FFT等の波形解析で高調波まで含めた減衰特性を検討する必要がある、

概して、心地良い響きには「音響インピーダンスが小さく適度な内部損失のある」反射音の小さい(反射音圧の低い)木質系の壁材が良く、「内部損失」は大きいが「音響インピーダンス」も大きい石材は反射音が大きすぎ(反射音圧が大きく)、直接音(原音・生音)に大きく干渉(影響)し人間のモニター系(聴覚系)では歪み(不快なノイズ)を感じてしまう事も知られている。

つまり、

音響デザインを行う際は単純に「反響時間測定」しても、心地良い響き(残響)には結びつきにくい!

と言うことである。

客席での音響特性は、壁面,天井、等の内装材質や形状だけでは無く、満席時、空席時の聴衆の反射・吸音効果(人体そのものや衣類の素材による音圧反射率の違い)で変化し、

その影響を少なくするための材質や形状の配慮などが必要で、

単純に最新設備(可変残響システム)を導入しても解決できない問題(心地よく良くならない場合)が多い

はるか、その昔には音響設計事務所など無かった!

ウィーンのムジークフェラインザール、にせよ、コンセルトヘボウにせよミラノスカラ座にせよ、創建当時、ホールデザイナーという人はいなかった、建築デザイナーと大工などの職人が、昔からの感と経験で細部の作り込みを行ったのである。

今流行のワインヤード型のコンサートホールも、

1963年、後にカラヤンのカーカス小屋等と揶揄されたベルリンフィルのシンフォニーホールは、カラヤンの意向を組んだデザイナーと構造設計者が設計したワインヤード型コンサートホールであるが、

完成当初音響に関しては惨憺たる酷評を得た施設であった。

その後スケールモデルによる検証実験の結果、客席上部への新たな反響板設置の効果が確認され、改装工事を行い何とか我慢のできる現在のレベル(※2)に落ち着いた。

「地獄(音響)のサタも金次第!」

ホールの音響は投資金額で決まってしまう場合が多い!

「神様、仏さま、永田様」をもってしても、講堂・大教室用途に使われているような安っぽい椅子?や、人造大理石や打放しコンクリートの壁ではどうにも手の施し用(小細工の効かせようが)が無い!

内装(内壁)、絨毯やシートには予算を惜しまない姿勢が大事である。

肉厚のコンフォータブルな高価な椅子と深々とした絨毯に換装するだけでも、響きが良くなる場合が多い。

つまり、「やれシューボックス方だ、ワインヤード方だ」等と言う前に、こういう内壁・絨毯・椅子等の調度品への、金の投入具合が音響に響く場合が殆どであるといえる。

だから、

(資金に)困ったときの「永田音響頼み」は成立しないのである!

公共ホール(建設・立て替え)を計画している団体へのアドバイス。

①需要の見込めない無謀な大型施設(収容人員)建設の夢を追わず。

②何をしても中途半端になり安い多目的ホールは狙わず。

③開館後に自身のスタッフ(職員)で企画・プロデュース可能な演目に主体をおいた単機能(芸能・演劇専用or音楽専用ホール)のコンセプトに基づいた、計画を立て。

④地元に根ざした良心的な建設業者を指名し。

準備(調達)できる資金の範囲内で、絞り込んだ用途に合った最良の音響効果」

を求める姿勢が必要であろう。

(好例、※紹介記事はこちら。①八ヶ岳やまびこホール中新田バッハホール

2017/09/13   

狸穴音響研究所 酒燗(しゅかん) 微酔狸

※1)オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)の改修プロジェクトはどう考えても、同社のコンサルタント事業としてはお粗末である。

たぶんコンサルタントとしての数かずの具申はなされたとは思うが、ことごとく予算の壁にぶち当たり、採用されなかったのでは無いか?と想像している。

地方自治体の関与している事業にはこの手の予算削減が致命的は結果を招いている例が数多くある。(予算削減が招いた悲劇、※参考関連記事はこちら→※ピーチライナー敗退の分析、※永田音響設計痛恨の一作?

更にパルテノン多摩は同社の手がけた「舞台芸術センター」のその他(大勢の)施設の1つとして紹介されているが、あの「巨大ローマ風呂」では、とても肉声が通らないと思うのだが。

この辺が、事業としてクライアントの意向を汲まなければならない音響設計事務所の辛いところであるかもしれない。

※2)事実、昔の録音を聞き比べてもサーカス小屋以前のイエス=キリスト=教会 (ダーレム) で録音されていた頃の音源は、明確な定位と心地良い響きとが両立し、いまだに名録音が多い。

その後70年代初頭のサーカス小屋での録音は、小生宅のリスニングシステム(※エントランス・ホール&JBL&ヤマハ・サブ・ウーファ)をもってしても、

各楽器の音色の明瞭度や定位がホールの反響にかき乱され、繰り返して聴取しようという気持ちになれない代物も沢山ある。

公開:2017年9月22日
更新:2018年1月18日

投稿者:デジタヌ

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