タヌキがゆく

「夢殿」は夢見ても設計するな!。ー「失敗しない・ホール計画の手引き」講座2017ーその6

第6回。多角堂フェチに警鐘を発する!

法隆寺夢殿に代表される、正多角型(偶数角形)は憧れても、計画するな!。

奇才以外の凡人は手を出すな!

ご注意;※印は当サイト内の紹介記事リンクです。
但し、その他のリンクは当事者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

モダニズム建築の大家、「正多角形・フェチ」の権化?奇才・故前川國男教祖が...。

  • 1960年3月31日に旧京都会館第1ホール
  • 翌年1961年に東京文化会館・大ホール&小ホール、
  • 翌々年1962年に神奈川県立青少年センター

を竣工させていらい、1964年には同じルコルビッジェ門下の先輩である晩年の故山田守氏が夢殿をモチーフに「日本武道館」を完成させるにいたり全国に「多角形ホール病」が蔓延してしまい現在に至っているが...。

基本的にホールとしては適さない形状で有る!

「偶数・正多角形ホール」は対抗する並行面が多く、基本的にホールとしては適さない形状で有る!

故前川國男・教祖も1964年開館の 弘前市民会館からは音響的に面倒で手間暇かかる「正多角堂」デザインを捨て、オーソドックスな「変形扇形ホール」に回帰している。

特に1982年開館の「ザ・シンフォニーホール」(※照会記事はこちら)以来、残響の概念が広まり、スケールモデル実験やコンピュータによるシュミレーション技術が発達・定着してからは、1983年竣工 熊本県立劇場(※照会記事はこちら)、最晩年の1985年 石垣市民会館(※照会記事はこちら)に至るまで「正多角堂」には手を染めていない。

※1、事実、前川國男教祖の代表作の1つとされる旧京都会館第1ホール(ロームシアター京都)は、京都市が

「建物の形状自体がホールとしての機能を低下させており、改修ではデザイン性・機能性とも要求を満たせないため、委員会の意見を取り入れた上で改築を行う」<当時の広報より引用>

以上の理由で2012年3月限りで閉鎖されその後解体され、 2016年1月10日に香山壽夫建築研究所の設計によるオーソドックスで手堅いデザインの4フロアー4層バルコニーの「モダン芝居小屋」に近い意匠の「ロームシアター」が新装開場した。

彼(前川國男)の愛弟子故丹下健三氏も師匠の教訓(正多角堂には手を染めるな!)を守りオーソドックスな「変形・扇形ホール」しかデザインしていない。

さらにはもう一人の巨匠故菊竹 清訓氏(※注1もアバンギャルドな作品群をデザインした偉人・奇才では有るが、同胞の故黒川紀章氏共々正多角形には手を染めていない!

菊竹 清訓氏の代表作の1つ1969年竣工旧久留米市民会館(2017年現在解体中)にしても,後述するCydic と Convexを組み合わせた平面形状を用い、対抗する壁面を極力少なくした形状であり、更には客席スロープ形状や天井反響板にも留意しホール内部から並行面を極力排除したデザインになっている。

  • 多角形に挑みたいなら、奇数形、5角型、9角型、とすべし!

どうしても作りたいなら「奇数角」を用いよ!

7角型・11角型は内角がそれぞれ約128.57度、約147.27度と作図?も実際の施工も困難では有るが。

5角型・9角型は内角108度、140度と割り切れる数値であり、CADによる作図、並びに現場施工時においても現在の測量機器「トータルステーション」で比較的容易に実現できる。

事実 軽井沢大賀ホール/正5角型はこの形で成功している。

多角形フェチ?のデザイナーに...。

どうしても,.「正多角形に憧れる」なら、以下を守るべし!

1)基本正多角形は避ける。

共円多角形なら対抗する面と並行する面が生じ無いようにCidic形状、Equlangular形状、を選ぶべし。

polygon_types.svg.png

Attribution: Salix alba at English Wikipedia

2)天井は高くしろ。

gasometer_2.jpg

ガスホルダー
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Zwickau_old_gasometer_2_(aka).jpg (auther:Andre Karwath aka Aka)

異様な写真で恐縮だが数少ない成功例では、

上に示した「瓦斯タンク」のように、高さが12分に取られている!しかも凸型逆ドーム天井などで上下間の並行対策も講じてある。

数少ない成功例(竣工年代順)

1961年竣工 東京文化会館・大ホール/正6角形(※1)奇才作品例1(※照会記事はこちら)
1965年竣工 三鷹市公会堂・光のホール/変形6角型(2013年3月改修工事竣工)(※照会記事はこちら)
1967年竣工  2016年リニューアル会館・岡崎市民会館・あおいホール/1スロープ1テラス(高床テラス)変形6角型
1994年竣工 みやまコンセール/ 霧島国際音楽ホール/変形8角型(※1)奇才作品例(※照会記事はこちら)
2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型(※1)奇才作品例(※照会記事はこちら)
2005年竣工 軽井沢大賀ホール/正5角型(※照会記事はこちら)2005年竣工兵庫県立芸術文化センター・小ホール/正8角型(※照会記事はこちら)

何れも天井が十二分に高い!か変形多角形のホールである。

3)低い天井は禁物!

「がんもどき」型と言うか、「原油タンク」のようなと言うか、天井が低い建てやは最低。

このタイプ」の平べったいホールで上手くいっている(良好な音響)例は皆無!

oiltank.jpg

原油備蓄タンク
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shibushi_Oil_Stockpile_Site_2009.JPG

「物まねの紛い物」大失敗の悲惨な例。(竣工年代順)

1971年竣工 山口市市民会館・小ホール/菱形(※照会記事はこちら)
1971年竣工 山口市市民会館・大ホール/正6角型(※照会記事はこちら)

1990年竣工 日立システムズホール仙台・シアターホール(※照会記事はこちら)

1991年竣工 草津音楽の森国際コンサートホール/正6角型(※照会記事はこちら)

1994年竣工 ティアラこうとう・小ホール/6角堂(※案内記事はこちら

1995年竣工  京都コンサートホール・小ホール/正6角型(※照会記事はこちら) 

1998年竣工  りゅーとぴあ・コンサートホール/6角堂(※照会記事はこちら)

※同じアリーナでも体育館しか経験のない設計者がモデル実験はおろか、シュミレーションもせずに果敢に6角堂にチャレンジし見事に「討ち死に」した例?。

悲惨とまでは行かないが、音響的に「かなり癖のある」ホール。(竣工年代順)

1960年竣工  旧京都会館第1ホール(2015年閉鎖・解体)/正6角型(故前川國男先生作)
1961年竣工 東京文化会館・小ホール/正4角型(※1)(故前川國男先生作)(※照会記事はこちら)
1962年竣工  神奈川県立青少年センター・ホール/正8角型(故前川國男先生作)
(※参考・1964年竣工 日本武道館 正8角型アリーナ  14,471席!/コンサート(1階仮設2,946席含む))
1964年9月竣工「東京エレクトロンホール宮城」/3フロアー(2重バルコニー)6角堂
1966年 竣工「埼玉会館」小ホール/1フロアー菱形

1967年竣工  豊橋市民文化会館 大ホール/1フロアー変形14角型!
1972年竣工  倉敷市民会館 大ホール(2009年11月改修工事竣工)/正6角型
1973年竣工、藤井寺市民総合会館・パープルホール)/1フロアー変形等辺6角型 変形6角堂
1973年竣工  八千代市民会館大&・小ホール(2013年4月改修工事竣工)/2フロアー変形等辺6角型 
1975年開館 八戸市公会堂文化ホール(2020年改修予定)1フロアー6角堂 
1975年開館 神奈川県民ホール・小ホール(2014年9月リニューアル)/変形4角形
1981年開館  福岡サンパレス ・ホール  /変形6角型 
1982年開館 あましんアルカイックホール・オクト/正8角堂。

1983年9月 名古屋市芸術創造センター/(6角堂)

1990年竣工  水戸芸術館・コンサートホールATM/正6角型 ※永田音響がかなり苦労をして何とか聞くに堪えるレベルに...。(※照会記事はこちら)

1990年11月竣工 日立シビックセンター・多目的ホール(正方形)

1993年竣工  倉敷芸文館 大ホール/8角堂 
1993年竣工 所沢市文化センター・キューブホール/正方形(※照会記事はこちら)
1995年竣工 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール/正8角堂 (※ガイド記事はこちら)
1999年竣工  トロントロンドーム/石壁8角堂!(※照会記事はこちら)
2006年竣工  ラポルトすず/変形6角型ヤマハが「凹凸山形壁面内装」や大がかり「マジックボックス」を駆使し,無理やりねじ伏せた例。※現代の巨匠?長谷川逸子先生、いい加減にしてよ......。ヤマハさんもいい加減手助けするのはおよしなさい!
2015年竣工 しいきアルゲリッチハウス/正方形(※照会記事はこちら)

真打ち登場!アルゲリッチさんにお悔やみ申し上げます?

上記例以外にも全国各地に蔓延?...アーア...。

日本で花開いた「夢殿」文化ではあるが...。

世界にも類をみない正多角形はホールは、音響的には円形アリーナ同様「非常識な形状」ではあるが、花ビラ5枚の一重桜に代表される、日本独自の形状である事には違いない。

「はかない桜」は散り際の美学?

正多角堂に挑み「はかない桜」の如く華々しく散る?のも美学かもしれないが、

「舞台芸術ホールは音響第1!」華々しく散って(失敗して)もらっては困る!

挑戦するなら、正統的手段・形状で勝負せよ!

今後は吸音壁やマジックボックス(音響調整箱)に頼る様な安直な「正多角堂」デザインはとらず、

形状に趣向を凝らしたミューザ川崎シンフォニーホールや兵庫県立芸術文化センター・小ホール、のようなスタンスで挑むか、

軽井沢大賀ホール/正5角型の様な奇数正多角型ホール.に向かうのが適切であろう。

建築技術に挑戦!正7角型・11角型ホールの建設。

更には、建築技術の粋を尽くした7角型・11角型ホールへの挑戦など、新たなるコンセプトづくりに向かっていただきたい物である。

<最終回 舞台芸術ホール設計のセオリーとは? >に続く

※注1)現代の巨匠菊竹 清訓(1928年4月1日 - 2011年12月26日)の作品について

福岡県久留米市し出身1928年生まれの故菊竹 清訓氏は6才年下の黒川 紀章と共に「建築と都市の新陳代謝、循環更新システムメタボリズム」を提唱し、1905年生まれのモダニズム建築の巨匠故前川国男氏とは違ったスタンスで創作し続けたデザイナーである。

一過性のはかない芸術作品?

彼の唱えたメタボリズムを象徴する作品群は、

  • 1970年;万国博覧会/エキスポタワー2003年3月解体撤去
  • 1975年; 沖縄海洋博/、アクアポリス 閉会後解体
  • 1985年;筑波科学博のパビリオンデザイン、閉会後解体
  • 1988年 なら・シルクロード博覧会/奈良公園館(2004年シルクロード交流館としてリニューアルオープン2014年閉館)
  • 2005年 日本国際博覧会(愛地球博)マスタープラン

参加に象徴されるように、

謂わば「建築物はその時々の時代の要求に\即したコンテンポラリーな現代芸術作品である!」

と言うような「哲学的観念論」から生まれている様に思う。

『建築物も人と同じ生き物、時代と共に歩む「儚い命」で有って良い』

と言った所で、「死して何々を残す」と言った普通の建築家ではなく、舞台・演劇演出家に近い「時空芸術家」であった様に思う。

従って最初から必要最小限の強度で、長期の使用に耐えるような耐用年数はあまり考慮されておらず、21世紀まで生き延びている作品は少ない、特に1981年の新耐震基準適用以前に生まれた作品は、消えつつ有る。

一流の構造設計(構造計算)屋さん。

彼の育った時代には、現在のような分業化(デザイン&構造設計(計算))がされておらず、彼は1流の構造屋サンでもあった。

事実1995年に早稲田大学より「軸力ドームの理論とデザイン」と言う論文で工学博士号を取得している。

だから、ソフィテル東京

  • 着工 1990年11月
  • 竣工 1994年6月
  • 開業 1994年6月16日
  • 解体 2008年5月

東京テアトルビル

  • 竣工1987年1月31日
  • 解体着手2014年8月25日

のようにたった18年間や27年の短い命でも、彼の存命中に解体されようが全く拘りが無かったのであろう、

むしろ2003年3月完全撤去されるまでエキスポタワー、を眺めるのはつらかったであろう!

だからこそ晩年の2005年愛地球博のマスタープランにも喜んで参加したのであろうと確信する。

晩年に至までメタボリズムを貫いた人であったように思う。

公開:2017年11月15日
更新:2018年2月13日

投稿者:デジタヌ

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