タヌキがゆく

《 公共ホール 計画 の手引き 》 「夢殿」は夢見ても設計するな!

ー「失敗しない・ホール計画の手引き」講座2017ーその7

多角堂フェチのデザイナーに警鐘を発する!

どうしても,.「多角形に憧れる」なら、以下を守るべし!

1)基本正多角形は避ける

共円多角形なら対抗する面と並行する面が生じ無いようにCidic形状、Equlangular形状、を選ぶべし。

polygon_types.svg.png

Attribution: Salix alba at English Wikipedia

2)天井は高くしろ

gasometer_2.jpg

ガスホルダー
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Zwickau_old_gasometer_2_(aka).jpg (auther:Andre Karwath aka Aka)

異様な写真で恐縮だが数少ない成功例では

上に示した「瓦斯タンク」のように、高さが12分に取られており!しかも凸型逆ドーム天井などで上下間の並行対策も講じてある。

数少ない成功例(竣工年代順)

1961年竣工 東京文化会館小ホール/変形4角形 ※奇才作品例1(※ホール音響ナビはこちら)
1965年竣工 三鷹市公会堂・光のホール/変形6角型(2013年3月改修工事竣工)(※ホール音響ナビはこちら)
1967年竣工 2016年リニューアル会館・岡崎市民会館・あおいホール/1スロープ1テラス(高床テラス)6角型(※ホール音響ナビはこちら)
1994年竣工 みやまコンセール/ 霧島国際音楽ホール/変形8角型※奇才作品例(※ホール音響ナビはこちら)
2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型 ※奇才作品例(※ホール音響ナビはこちら)
2005年竣工 軽井沢大賀ホール/正5角型(※ホール音響ナビはこちら)

2005年竣工 兵庫県立芸術文化センター・小ホール/正8角型(※ホール音響ナビはこちら)

何れも天井が十二分に高い!か又は 変形多角形のホールである。

3)低い天井は禁物!

「がんもどき」型と言うか、「原油タンク」のようなと言うか、天井が低い建てやは最低。

このタイプ」の平べったいホールで上手くいっている(良好な音響)例は皆無!

oiltank.jpg

原油備蓄タンク
画像出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Shibushi_Oil_Stockpile_Site_2009.JPG

時代を追って微妙に進化したデザイン?

1960年台の東京文化会館・大ホール開館当時は完全な正多角形・垂直壁の多角堂であったが、年を追うにつれ、コンピューターの発達などで、CADによる製図、施工面では測量機トータルステーション(※1)の電子化による飛躍的な進化により、各辺の内角(外角)が割り切れる数値で構成された正多角形(正6多角形/外角60度、正8多角形/外角45度)から、各辺の内角・外角が異なる変形多角形に微妙に進化しては来ている。

しかし相変わらず「完全並行対抗壁」を残したまま単に多角形を押しつぶし、各辺の内角を120度から外したような(音響的に)厄介なホールも造り続けられている。

正多角形の例

1960年竣工  旧京都会館第1ホール(2015年閉鎖・解体)/正6角型(故前川國男先生作)(※ホール ナビはこちら
1962年竣工  神奈川県立青少年センター・ホール/正8角型(故前川國男先生作)
(※参考・1964年竣工 日本武道館 正8角型アリーナ  14,471席!/コンサート(1階仮設2,946席含む))
1964年9月竣工「東京エレクトロンホール宮城」/3フロアー(2重バルコニー)正6角堂

1966年 竣工「埼玉会館」小ホール/1フロアー正方形(※ホール ナビはこちら)※故前川國男先生作)

1967年竣工  豊橋市民文化会館 大ホール/1フロアー円形(変形14角型!)

1967年竣工  岡崎市民会館・あおいホール/1スロープ1テラス(高床テラス)正6角型(※ホール ナビはこちら)※2016年リニューアル

1971年竣工 山口市市民会館・小ホール/菱形(※ホール音響ナビはこちら)
1971年竣工 山口市市民会館・大ホール/正6角型(※ホール音響ナビはこちら)

1975年開館 八戸市公会堂文化ホール(2020年改修予定)1フロアー6角堂 (※ホール ナビはこちら

1975年開館 神奈川県民ホール・小ホール(2014年9月リニューアル)/変形4角形 (※ホール ナビはこちら

1983年9月 名古屋市芸術創造センター/(6角堂)(※ホール ナビはこちら

1990年竣工 水戸芸術館・コンサートホールACM/12角型! (※ホール音響ナビはこちら)

1993年完成 所沢市文化センターミューズ・キューブホール/正方形(※ホール ナビはこちら)

1995年竣工 京都コンサートホールムラタ・小ホール/正6角型(※ホール音響ナビはこちら) 

2002年開館 名古屋市千種文化小劇場/変形8角形(※ホール音響ナビはこちら

2005年竣工 兵庫県立芸術文化センター・小ホール/正8角型(※ホール音響ナビはこちら)

2015年竣工 しいきアルゲリッチハウス/正方形(※ホール音響ナビはこちら)

真打ち登場!アルゲリッチさんにお悔やみ申し上げます?

変形多角形A;不等辺・不等角引き伸ばしタイプ(※2対以上の対抗並行壁面あり!)

1961年竣工 東京文化会館・大ホール/6角型(※1)(故前川國男先生作)(※ホール音響ナビはこちら)

1966年 竣工「春日井市民会館」/1スロープ6角堂(※ホール ナビはこちら)

1967年竣工  2016年リニューアル会館・岡崎市民会館・あおいホール/1スロープ1テラス(高床テラス)変形6角型(※ホール ナビはこちら

1968年9月完成 島根県民会館/6角型(※ホール音響ナビはこちら)

1970年11月開館 メルパルクホール(大阪)/6角堂

1972年竣工  倉敷市民会館 大ホール(2009年11月改修工事竣工)/変形8角型(※ホール ナビはこちら)

1973年竣工、藤井寺市民総合会館・パープルホール)/1フロアー変形6角型 変形6角堂

1973年竣工  八千代市民会館大&・小ホール(2013年4月改修工事竣工)/2フロアー変形等辺6角型

1982年開館 あましんアルカイックホール・オクト/正8角堂。(※ホール音響ナビはこちら)

1989年11月  アトリオン音楽ホール(秋田市)/変形6角型(※ホール ナビはこちら)

1990年竣工 日立システムズホール仙台・シアターホール/変形6角形(※ホール ナビはこちら

1990年11月竣工 日立シビックセンター・多目的ホール/(正方形)

1991年竣工 草津音楽の森国際コンサートホール/変形6角型(※ホール音響ナビはこちら)

1993年竣工  倉敷芸文館 大ホール/8角堂(※ホール ナビはこちら

1993年竣工 所沢市文化センター・キューブホール/正方形(※ホール音響ナビはこちら)

1993年10月 とりぎん文化会館(鳥取市)/変形6角形(※ホール音響ナビはこちら)

1994年竣工 ティアラこうとう・小ホール/6角堂(※ホール音響ナビはこちら

1995年竣工 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール/8角堂 (※ホール音響ナビはこちら)

2006年開館 姫路市文化センター/8角堂(※ホール音響ナビはこちら)

変形多角形B; 不当辺不当角変形多角形(並行対抗壁面無!)

(竣工年代順)

1961年竣工 東京文化会館小ホール/変形4角形 ※奇才作品例1(※ホール音響ナビはこちら)

1965年 三鷹市公会堂・光のホール/変形6角型(※ホール ナビはこちら

1975年2月竣工 旭川市民文化会館ホール/石造りの変形8角堂(※ホール ナビはこちら

1981年開館  福岡サンパレス ・ホール  /変形6角型 

1990年竣工  水戸芸術館・コンサートホールATM/変形6角型 (※ホール音響ナビはこちら)

1994年11月 開館 リーデンローズ(福山市)/ 不等辺6角型(※ホール音響ナビはこちら)

1994年竣工 みやまコンセール/ 霧島国際音楽ホール/変形8角型※奇才作品例(※ホール音響ナビはこちら)

1998年開館  りゅーとぴあ(新潟市)/不当辺6角形(※ホール音響ナビはこちら) 設計;長谷川逸子・建築計画工房 音響マジック設計;YAMAHA

1999年竣工  トロントロンドームサンA川南文化ホール/石壁8角堂!(※ホール音響ナビはこちら)

2004年竣工 ミューザ川崎シンフォニーホール/変形10角型 ※奇才作品例 (※ホール ナビはこちら
2005年竣工 軽井沢大賀ホール/正5角型(※ホール ナビはこちら

2006年(平成18年)7月 ラポルトすず(石川県珠洲市)変形6角形設計;長谷川逸子・建築計画工房 音響マジック設計;YAMAHA

日本で花開いた「夢殿」文化ではあるが...

世界にも類をみない正多角形ホールは、音響的には並行面が多い「非常識な形状」ではあるが、花ビラ5枚の一重桜に代表される、日本独自の形状である事には違いない。

「はかない桜」は散り際の美学?

正多角堂に挑み「はかない桜」の如く華々しく散る?のも美学かもしれないが、

「舞台芸術ホールは音響第1!」華々しく散って(失敗して)もらっては困る!

日本で多角堂が進化した背景

古来から、外角が45度の8角堂や、同じく外角60度の6角堂は、原始的な測量法や墨付け器具でも、実現が容易であり、ハチの巣に代表されるように構造的にも頑強である。

さらに、安定感あるアピアランスが見るものと「デザイナー」を引き付ける魅力(魔力)も持ち合わせている。

挑戦するなら、正統的手段・形状で勝負せよ!

今後は吸音壁やマジックボックス(反響調整箱※2)に頼る様な安直な「正多角堂」デザインは捨て、

形状に趣向を凝らしたミューザ川崎シンフォニーホールや兵庫県立芸術文化センター・小ホールのような手法をとるか、軽井沢大賀ホール/正5角型の様な奇数正多角型ホールに向かうのが適切であろう。

正多角形に挑みたいなら、奇数形、5角型、9角型、とすべし!

どうしても作りたいなら「奇数角」を用いよ!

正5角型・正9角型はそれぞれ内角140度108度と割り切れる数値であり、進化した作図システム(CAD)&測量機器「トータルステーション」を用いれば比較的容易に実現できる。

事実 軽井沢大賀ホール/正5角型はこの形で成功している。

建築技術に挑戦!正7角型・11角型ホールの建設

7角型・11角型は内角がそれぞれ約147.27度、約128.57度と現在の進化したCADシステム・測量機を駆使しても作図?も実際の施工も困難では有るが、建築技術の粋を尽くした正7角型・正11角型ホールへの挑戦など、新たなるコンセプトづくりに向かっていただきたい物である。

余談・「天井の高い変形6角形」は「靴箱」より良い結果を生む場合も!

多角堂に否定的なコラムではあったが、変形させた6角形は対抗する並行面が少なく、定在波対策の上では「下手な靴箱?」より、有利とも言えなくも無い!

シューボックに必須の扇形段床配列の座席配置に頼らなくとも、横一線の通常の段床スロープで定在波障害対策が行える利点もある。

アトリオン音楽ホール、ラポルトすず等では、高い天井の助けもあり好結果を招いているようでもある。

但し、スロープの傾斜が十分で無かったり、天井が低いと京都コンサートホールムラタ小ホールや、草津音楽の森国際コンサートホールのように、かなり癖のある音響のホールとなることも、忘れてはならない。

参照覧

※1、「トータルステーション」についての Wikipediaの解説はこちら

※2、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

公開:2017年11月15日
更新:2018年10月14日

投稿者:デジタヌ

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