タヌキがゆく

ホールの良し悪しは「大向こう」と「壁際の席」の音で決まる!ー「失敗しない・ホール計画の手引き」講座2017-その2

理工系出身の自治体施設課・建築課の担当者に捧げるシリーズ「失敗しない・ホール計画の手引き」講座。

第2回 素晴らしい音響空間とは?

残響時間2秒/500Hzが金科玉条のように唱えられ、またその値を誇示しているホールもあるが、

素晴らしい音響とはそんな珍奇な物では無い!

「目をとじても、聴覚だけで光景が浮かぶ」座席(リスニングポイント)のことで有る。

つまり、音像、定位、が明確な座席である。

一体どこで音響測定したの?

一体どこ(どの位置)で測定したの?と言いたいようなホールが全国に散見される!

S席で測定しても仕方ない、天井桟敷のC・D席での値はどうだったのか?

(その昔の体験談※1)

カラヤンは大向こうの席に座った事は無い!

カラヤンが絶讃したホールが大阪に2つあるが、カラヤンは大向こうで音を確かめた事は無い!。

アシスタント(orコンマス)に指揮をさせ、S席ぐらいには腰掛けてホールの音響を確認した事はあったかもしれないが、壁際や「大向こう」にも座った事は無いだろう。

ザ・シンフォニーホール(※ガイド記事はこちら)は1982年竣工と国内最古のシューボックス音楽専用ホールであり、ノウハウ(ツボ・押さえ処)がなく暗中模索で、ひたすらスケールモデル(1/30?)で実験を繰り返し、ヨーロッパで発展した残響測定法を導入して試行錯誤のすえ完成したホールである。

が、しかし、施主(朝日放送)がどれほど理解を示してくれたかは、疑問の残るところで、、壁際の通路を広く取ったデザインや、1階平土間は上出来として、緩やかな傾斜の1階後部席の2階テラス軒下、同じく両サイド(J~U列の1,2,39,40番席及び同補助席)2階テラス席の軒下(S~U列、)2階サイドテラスの

最後列、舞台背後テラスの後2列は優れた音響とは言い難い事実、アマオケや、国内オケの演奏会では観客も疎らないしは、発売されていない(未使用)エリアである。

実際小生も舞台下手2階テラスLDの2番に陣取ったことがあるが、残響はあるが定位はイマイチ(視覚補正がかなり必要)であった。

このあたり(テラス席)の処理は、それ以降のホールでは、かなり改善されてきた。

但し、施主に理解がないと、収容人員を稼ぐ為に奥行きの深い(3列以上)テラスのばかげたデザインのホールもまだまだ多い。

フェスティバルホールの場合

(※ガイド記事はこちら)

このホールも、狭い敷地に無理やり2700席を詰め込むために無理をして、良好なリスニングポイントが制限されている。

2012年竣工のホールで Nagata Acoustics Design快心の作?(ホールデザイン自慢レビュー記事/同社公式サイトはこちら)2008年竣工の「いわきアリオス」(※照会記事はこちら)の経験を踏まえ、鎧張り(下見板張り)からヒントを得たと思われる、異形突起を壁面に採用するなど、乱反射による「残響」(※2)には配慮しているが...。

2階両翼テラス席の軒下に当たる1階フロアー両サイド、3階フロアー席の軒下に当たる2階フロアー席の大部分、3階フロアー席の大向こう2列、実質4階テラスに相当する3階LBB-G・H、RBB-G・H席は恐ろしく見晴らしは良さそう(高所恐怖症の方には最悪)だが、背後には壁が、頭上には天井が迫り最悪の音響スポットで有ろう。(座席表/公式サイトはこちら)

無理をせず「ゆとりある座席配列」を採用(承認)した「いわきアリオス」の施主「いわき市」の建設担当者の方に拍手を送りたい!

施設例

1、扇形ホールの好例

安普請の豊中市立文化芸術センター(※紹介記事はこちら)

基本に忠実なサンポートホール高松 大ホール(※紹介記事はこちら

2、シューボックスの恒例

  • ほぼ満点の贅を尽くしたホール。

三井住友海上しらかわホール(※紹介記事はこちら)

  • 安普請でも丁寧に作ればここまでできる、秀作。

杉並公会堂(※紹介記事はこちら

  • セオリーを忠実に守った優秀作。

(※永田音響設計・代表作の一つ)

いわきアリオス・大ホール/2008年竣工(※照会記事はこちら

3, 変形ワインヤード安普請の好例?

東京芸術劇場(※紹介記事はこちら)

4、アリーナ型・ワインヤードの特異成功例

ミューザ川崎シンフォニーホール(※紹介記事はこちら)

5, モダン芝居小屋タイプ多目的ホールの好例

岸和田市立浪切ホール(※紹介記事はこちら)

<第3回 見栄を張らずに智恵を出せ!>に続く。

※1、その昔の体験談

その昔(1970年頃)、扇形ホール全盛期のころ録音エンジニアのあいだでは、「2階フロアーの最前列中央」の席が「最上のリスニングポイントである」が常識であった。

実際、オーディオブーム全盛の頃、nakamitiのデッキを担いで、母校のアマオケのコンサートをSONY製1ポイントマイクロフォンを使ってその位置で録音したことがあった。

特に有名でも無いそのホールで収録したソースは、グランドノイズ(聴衆の咳払いなど、ドアの開閉音など)は多いが各楽器の定位もしっかりした、それでいて1ポイント収録特有の臨場感のある響きの良い録音であった。

当時、舞台上にスタンドを立てたり、1階フロアー中央にスタンドを立てて録音するマニアも多かったが、変に拡がりも潤いも無い即物的な録音が多かった様におもう。

ホール、備え付けの「つり下げ1ポイントマイク」収録も高さ調整が悪い事が多く外れが多かった様に記憶している。

(通常ホールには、電気技師はいても、レコーディングエンジニアはいないのは、当時も今も変わらない。)

※2,残響、残響時間(RT60)、反射音ー残響とはー残響と反射音ー(ARI(株))

公開:2017年10月28日
更新:2018年8月10日

投稿者:デジタヌ

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