タヌキがゆく

音響工学の基礎《 公共ホール 計画 の手引き 》 音響工学の基礎から観てみると、壁面・天井からの反射波は...

理工系出身の自治体施設課・建築課の担当者に捧げるシリーズ「失敗しない・ホール計画の手引き」講座その4。

※だんだん難しくなりますが、付いて来て下さい!

第4回 音響は視界以上に重要なファクター

ホールはエコーガンガンのカラオケ音響ではダメ!

コンサートホールの「響き余韻」を語るときに「残響時間2秒/500hz」と言う数値が金科玉条の如く誇示される場合が多いが...。

心地よい響き、ほどよい韻(ひびき)が重要(※1)

劇場である限り、確かに視界確保は必要であるが、観劇にしろ(音楽)鑑賞にしろ、音響は重要なファクターになってくる。

肉声で演じられる伝統芸能(芝居・能狂言・歌舞伎)の観劇や、渡来舞台芸術(オペラ、ミュージカル、現代演劇、)の場合でも、クリアーなトランジェントの良い響きが求められる。

エコールーム的デザインの「定在波対策」のみに終始したデザインで、壁面が「石壁」や「タイル張り」、「打放しコンクリート(※2)」等の「音響インピーダンスの大きい壁材」でできた初期反射の大きいホールは「芸術ホール」には適さない!


音圧反射率、入射角反射角一定の法則、と指向角と共振・共鳴

指向性(指向角)

音には「指向性」という物が有り、
平面振動子の場合は、振動子直径をDmm、波長をλmmとすると、角度θ=λ/d×係数 となる。
つまり、同じ周波数(同じ波長)では大口径になるほど、指向角が小さくなり広がらなくなる。

スピーカーの場合はこれを考慮して、高い音を受け持つツイーターと称する高音用のスピーカーは指向角を大きくとり良好なリスニングエリアを稼ぐために小口径とする。

逆に言えば、人間も含めてアクースティック楽器は点音源に近い球面波なので、拡散による損失は距離の2畳に反比例する音圧だけで、周波数特性は変化しない!

だから、遠くから聞こえてくる声は小さくても、誰の声か判るし、何の楽器なのかも判る。


野外コンサートなどで使用されるPAも、更には昨今流行の音響支援装置でも大型の良質球形スピーカ(そんな製品は無いが)をホール随所にちりばめでもしない限りは、リスニング位置(座席)によって、声や楽器の音色が変わってしまうのはこの理由による。

つまり野外コンサートやアリーナ(体育館)コンサートでは、PAシステムの指向特性の影響で、低音ばかりうるさく聞こえ、歌手の声が変わってしまうのはこのせいでもある。(※2)

反射の法則(入射角=反射角)

更に、反射の法則(入射角=反射角)で壁にぶつかった角度で反対側に反射する、

音圧反射率

更に音圧反射率(※4)という物があって、平べったく言えば、空気中を伝わった音は「固くて重いモノ」に当たると「ほぼ100%」つまり同じ強さの音が跳ね返ってしまう。
つまり並行する面が有ると、その間で距離による拡散損失以外の損失が無くなりいつまでも反響が続くわけである(鏡を2枚立てて、間に立ったときの光景と同じイメージ)

だから、できるだけ空気に近いもの、つまりは軽くて柔らかい材質を吸音材に使うわけである。
但し、建築基準法並びに消防法の規定で、難燃処理をほどこした、木材かカーテン、若しくわ不燃材のグラスファイバーウール、ロックウール、しか壁材としては使えない(※5)。(ウレタンフォームは外壁・内壁間の充填剤として使用可。

だから打放しコンクリート壁や、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードに頼らざるを得ない「安普請のホール」では後述するように、内壁の、軒形状、天井形状、柱や梁と言った突起物(凸形状)の形状と角度が重要になってくる。

<音響工学の基礎2応用編ーパラボラ収束音場クロス拡散法について に続く>

補足説明

音響学的には物質の不連続面すなわち界面では必ず反射が起こる!

1)異なった物質間の反射

異なった音響インピーダンスを有する物質1と物質2の境界について考えるた場合、反射音(圧)は音響インピーダンスZの値の「積と差の関係」になる。このことを音反射率Rという。

R%=(Z1・C1-Z2・C2)/(Z1・C1+Z2・C2)

音響インピーダンスZ=音速C(m/sec) X 密度ρ(kg/?)

音速C(m/sec)=√K/ρ なので置き換えると。K;体積弾性率

Z=√ρ・K となり 密度と体積弾性率の積の平方根となる。

さらに、Z1<Z2すなわち、音響インピーダンス小→大と進み反射した場合位相変化はない。

2)反射波の位相

閉鎖された空間(ホール)で定在波が発生した場合、ホールの空間は空気で満たされておりZ1の値は微小、それに対して壁面は個体なのでZ2の値は大、すなわち、解説1番のように壁面では特定の周波数(定在波)において常に音圧が0に近い状態となる!


3)ミステリースポット

ミステリーゾーン・スポットとは(※6)定在波の悪影響で、特定周波数の音が消失する領域。

ホールは空間両端が閉鎖なので前項の現象がホール中央部でも現れる。

結果としてその場所では周波数特性に「うねり(山(peak)や谷(trough)」)が生じ楽器の音色が変化したり、最悪 幻聴ではなく「幽霊楽器」が聞こえたり、特定の楽器が消失したりする現象が発生する(している)場所。

4)護岸などの水内際での現象

実際に、目にすることのできる現象として、プールなど護岸された垂直な堰堤などにさざ波(表面波)が進行してきた場合には、入射波と反射波が打ち消しあって、堰堤直近では波はほぼ消滅しているのを目にすることができる。

参照覧

※1、残響について語った記事「都市伝説・良いホールの条件「残響2秒以上」は本当か?」はこちら。

※2打放しコンクリートについてのWikipediaの解説はこちら。

※4,音圧反射率。「北九州市立大学国際環境工学部建築デザイン学課の解説」はこちら

※5吸音材の種類 

※6、関連記事「ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?」はこちら。

ご注意;※印は当サイト内の紹介記事リンクです。
但し、その他のリンクは当事者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

公開:2017年10月21日
更新:2018年10月24日

投稿者:デジタヌ

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