狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

佐賀市文化会館 《 ホール 音響 ナビ 》

,

左右非対称をデザインコンセプトにした左右対称の壁面構成を持つ変形6角形の多目的ホール。

1989年生まれとちとお年を召していらっしゃるので、多少"癖のある洞窟音"が気になるが、"薄化粧の佐賀美人"といったところで残響の少ない好感の持てる音響のホールである。

佐賀市文化会館のあらまし

Official Website http://www.shinpoo.jp/

毎年秋の『佐賀インターナショナルバルーンフェスタ』(※イベントNaviはこちら)で全国的に知られる、佐賀市ご自慢の文化施設。

佐賀県内最大の収容人員1,811席を持つ大ホールと814席の中ホールの2つのホールを持つ総合文化施設。(公財)佐賀市文化振興財団の積極的な自主興行策のお影で、「大都市福岡」に拮抗する賑わいを見せている。

佐賀市文化会館のロケーション

  • 所在地  佐賀市日の出一丁目21-10

新幹線を断ったJR佐賀駅、北口大通りを北へ国道34号との交差点「国立病院前」交差点を東に北に進んだ263号線の路沿いに、佐賀県総合体育館、佐賀県青年開館と共に佇んでいる。サブトラックを備えた立派な国際規格の陸上競技場を持つ佐賀県総合運動場が拡がっている。この辺りは佐賀県のスポーツ文化・エリアとなっている。

佐賀県庁、さが県立美術館などがあるもう一つの文化エリア「佐賀城跡」エリアは、駅を挟んで反対側に当たる。

佐賀市と周辺にある観光スポットについてのトリップアドバイザーの 口コミ ナビはこちら。

佐賀市文化会館へのアクセス

最寄り駅 JR長崎本線佐賀駅より徒歩20分

佐賀駅バスセンターより佐賀市営バスまたは昭和バスに乗車し、文化会館前下車、徒歩1分。

マイカー利用の場合

収容台数約500台!の無料駐車場が準備されているので、マイカー利用も可能。

佐賀市文化会館これまでの歩み

1910年以来さが衛生病院として町外れの「療養所」から出発した当時の「国立佐賀病院」と農地が拡がっていた町外れの一帯に、1976年に第31回国体(若楠国体)のメイン会場として総合運動公園が整備された、 1985年3月28日に旧大和町に長崎自動車道が完成し佐賀大和インターチェンジが出来て国道236号が佐賀市の背骨となりこれを祝って1986年にお隣佐賀県総合体育館が開館し、1989年に残っていた遊休地に本館が建設された。

佐賀市文化会館のある佐賀市のあらまし

推計人口、235,082人/2017年10月1日。

佐賀-(鳥栖乗り換え)-博多 1時間13分 1110円/53.6km

佐賀県の県庁所在地で、同県最大の人口を擁する市。

かつては九州で唯一「空港」が無かった県として知られており20世紀の終焉に近い1998年7月28日に「九州佐賀国際空港」が開港し実質的にも佐賀県の表玄関としての体裁を整えた町。

年齢別人口比率では

20代から40代ののいわゆる若年労働層が全国平均を大きく下回り、「九州佐賀国際空港」開港も企業誘致にとってはそれほどの魅力共ならずここ20年間の「工場進出の停滞ぶり」を象徴している。

また『迷惑「長崎新幹線」通り抜けお断り!』宣言をして「お偉いお大臣様方」を困惑させたことで全国に「此処に佐賀ありき」を知らしめた都市でもある。

佐賀市文化会館がお得意のジャンル

大ホール

オーケストラコンサート、オペラ・バレエ公演以外にもミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

中ホール

ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなどのクラシックコンサート以外にも、ジャズコンサート、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショーまでジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

佐賀市文化会館の公演チケット情報

大ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

中ホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

施設面から見たホールの特色

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

(公式施設ガイドはこちら)

大ホール

(公式施設ガイドはこちら)

2層1バルコニーのプロセニアム形式扇型多目的ホール

平土間部分と後半部両翼に「左右非対称な高床テラス」を持つ緩やかなスロープを持つ1階フロアーと、両翼から「左右非対称」なサイドテラスが前方に伸びた2階バルコニーで構成されている、「左右非対称」をデザインコンセプトの一つとした多目的ホール。

木質パネルで表装された客席側壁

脇花道背後壁を除きホール客席部分周囲の大部分は「木質パネル」で表装された「左右対称デザイン」の壁面で囲まれている。

石積みのサイドプロセニアム

もの凄いのは1階フロアー平土間部分両サイドの脇花道背後壁、アンギュレーションを持たせた石材壁と成っている。

プロセニアム密着タイプのステージ反響板

ステージ反響板は1989年当時としては珍しく、プロセニアムと密着するタイプで、オープンステージホール同様の音響効果を狙っている、但し高さ10mの固定プロセニアム形式なので、上下高さ方向で断面積が変化し多少癖のある「洞窟音」とはなっている。

木質の天井反響板

プロセニアム上縁にはステージ反響板から滑らかに続く木質パネルでできた巨大な凸面状のコーナー反響板が設えられている。

東京文化会館大ホール(※ホールNaviはこちら)に近い装い。

天井も同じ意匠の木質のブリッジ反響板が並んでいる。

大向う背後壁

1階メインフロアー大向う背後は木製の湾曲凸型パネルを横方向に並べ、2階バルコニー背後は縦格子で表装した吸音(防音)壁となっている。

ホール音響評価点:得点90点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点20点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点3点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

総評

何か「佐賀の古狐」につままれたようであるが、変則配列の座席が功を奏したのか?高得点となった。

狸穴総研・音響研究工房厳選『後世に伝えたい・真の銘ホール50選』に選ばせていただく。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※異形6角形で対抗並行面が無いのでなので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0席

初期反射対策評価

※殆どの客席周囲壁面材質がプレーンな木質パネルなので素材基礎点23点とした。

基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数2=21点

初期反射障害1 壁面障害席 ;52席(24席/2階2C・8列全席、24席/2階2L12列・2R8列全席、4席/2階2L10・11列1番&2R6・7列12番)

初期反射障害2 天井高さ不足席;15席/1階1L16・17列全席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;67席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席千鳥配列済

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;52席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;15席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;67席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

中ホール

(公式施設ガイドはこちら)

1スロープ1フロアーの変形多目的ホール

こちらは最前列から5列までが平土間部分で6列から緩やかな1スロープ疑似扇形段床座席が続くプロセニアム形式の多目的ホール。

客室側壁

全面木質のフラットパネルで表装されている。13列かる続くホール後半両側壁は完全に並行しているが疑似扇形段床配列座席(※1)で側壁間際席以外の定在波障害(※2)を回避ている。

但し最後列は同一段床面にあるため、全席「ミステリーゾーン」(※3)にはまっており、中央部2席両サイド2席が定在波の「節」11番32番席が「腹」に当たり音響障害顕著席となっている。

上部に調整室が張り出した定番デザインの大向う

大向う背後壁は客席配列に合わせて大きく湾曲しており、大向こう席上部には上層部の調整室が張り出す定番デザインで上層部の調整室の前面壁は音響グリルで表装された吸音壁と成っている。

せっかくの天井高さが生かされずこの部分の張り出しで最後部座席の天井高さが不足している。

プロセニアム

こちらは大ホールとは異なり通常の木質プロセニアムで大ホール同様に上縁前縁はラウンドした凸型の大型反響板となっているが、こちらは断面積が急変しており多少癖のある「洞窟音」となっている。

天井

天井も木質パネルを用いた反響板で表装されている。

舞台設備

脇花道・大小迫り、奈落を備えた、大ホール並みの3面舞台相当の広いステージを持ち、回り盆、スライディングステージなどの補助設備はないが、伝統芸能にも対応している。

ホール音響評価点:得点58点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点21点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点29点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点3点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

総評

平土間部分の千鳥配列改修は褒められるが、並行側壁による定在波障害を疑似扇形段床配列で回避しようとしたのはセオリー(※1)どおりの手法だが、両側壁間際「節」の部分は通路にすべきであったし23列中央部は補助席程度にするべきであった。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※平行壁面が収容人員の1/3以上 なので基礎点25点とした。

基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数3=22点

定在波障害顕著席数;26席(2席/23列21・22番、2席/23列11・22番車椅子スペース席、22席/13~23列両側壁際1番&42番席)

重複カウント ;ー0席

定在波障害顕著席総計;26席

初期反射対策評価

※壁面材質がプレーンな木質パネルなので素材基礎点23点とした。

基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数3=21点

初期反射障害1 壁面障害席 ;22席/13~23列両側壁際1番&42番席)

初期反射障害2 天井高さ不足席;38席/23列全席(車椅子スペース6台分含む)

重複カウント ;ー2席

音響障害席総計;58席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席千鳥配列済み

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;26席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;22席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;38席

重複カウント ;ー30席

音響障害席総計;58席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

イベントホール

(公式施設ガイドはこちら)

間口約18.2m奥行き約25.5m床面積約463㎡(約299畳)の平土間多目的イベントスペース。

両側壁から折り上げた部分的に有孔音響ボードを用いた天井を備えている。

リハーサル・練習室

(公式施設ガイドはこちら)

リハーサル室と3室の練習室を備えている。

リハーサル室

壁面は、木質パネルで表装され、部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、プラスターボード製の波状天井を持つ。

床面積204㎡(約131畳)天井高さ;約3.8m 、木質パーケット床、バレエ・ダンスレッスンバーを装備した1面壁面ミラー(カーテン付き)を備えている。別料金のセミコンサートピアノを装備している。

ルーム音響評価点:50点た。
§1「定在波対策」評価点:25点/50点満点
  • ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:25点/50点満点
  • ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
総評

肝心の低層部壁面がプレーンな平行面で、平面形状にも工夫が見られず、天井が高いことだけが唯一の美点?

練習室

壁面は、部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、同じく部分的に有孔音響ボードで表装された天井を持つ。第1練習室のみアップライトピアノを装備している。

  • 第1練習室;床面積約135㎡(約81.5畳)天井高さ;約2.4m 木質パーケット床
  • 第2練習室;床面積約97㎡(約58.5畳)天井高さ;約2.4m 木質パーケット床、
  • 第3練習室;床面積約63㎡(約38畳)天井高さ;約2.4m 木質パーケット床、

施設データ

  1. 所属施設/所有者 佐賀市文化会館/佐賀市。
  2. 指定管理者/運営団体 公益財団法人佐賀市文化振興財団/佐賀市。
  3. 開館  完成 1989年 開館 1989年10月1日
  4. 設計  
  5. ゼネコン 
  6. 内装(音響マジック) 

大ホール

  1. ホール様式 、プロセニアム型式扇形多目的ホール。
  2. 客席   2フロアー 収容人員 1,811席(車椅子席5席含む)、可動床、1階平土間中央部千鳥配列、
  3. 舞台設備 間口34.5mx奥行き約16.3m、プロセニアムアーチ:間口:20m 奥行:14.5m 高さ:10m、ブドウ棚(すのこ高さ24m)、脇花道、・小迫り、、可動反響版、オーケストラピット(可動床)、)
  4. その他の設備 、楽屋x5、
各種・図面・備品リスト&料金表

中ホール

  1. ホール様式 プロセニアム型式多目的ホール。
  2. 客席   1フロアー 収容人員 814席(車椅子席6席を含む)、可動床、1階平土間中央部千鳥配列、
  3. 舞台設備 間口34.5m、奥行き14.5m 2面舞台相当 プロセニアムアーチ:間口:16m 奥行:18m 高さ:8m、ブドウ棚(すのこ高さ18.5m)、脇花道、小迫り、可動反響版、オーケストラピット(可動床)、
  4. その他の設備 、楽屋x4、
各種・図面・備品リスト&料金表

イベントホール

平土間多目的スペース

間口約18.2mX奥行約25.4m 天井高さ約3.8m タイルカーペット張り

付属施設・その他 

館内付属施設 
  • 館内施設;リハーサル室、練習室、大会議室、小会議室、和室、特別会議室、コインロッカー等。
付属施設配置・見取り図

施設利用手引き

デジタヌの独り言

中ホールの側壁後半・低層部客席周辺壁面は、両側壁間際の1番・42番の22席を撤去してでも、アンギュレーション(屈曲)処置かスラント(傾斜)設置に改善すべきである、定在波を放置したままで「扇形段床座席配列」だけで障害を回避しようというのは「姑息で甘い考え」ではあるまいか?

※参照覧

※1、定在波対策については『ホールデザインのセオリー その1 定在波対策 』こちらをご覧ください

※2-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※2-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※3、関連記事『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』はこちら。

 

公開:2018年1月24日
更新:2020年11月16日

投稿者:デジタヌ


TOP


 

 

 



▲このページのトップに戻る
▲佐賀県 の公共ホール 音響Naviへ戻る

 

ページ先頭に戻る