サンパルホールぬまくま《 ホール 音響 ナビ 》福山市沼隈サンパル
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福山市沼隈サンパルのあらまし
サンパルホールぬまくまホール、練習室、会議場、多目的室をメインとした実習棟などを備えた複合文化施設。
2005年2月1日平成の大合併で、神辺町共々福山市に併合された町が沼隈町時代の1989年に、第2次ホール建設ブームに乗せられ、お上のご意向に従って専門業者(音響設計事務所)こぶつきで建設した?「石造りの殿堂」。
福山市沼隈サンパルのロケーション
ところ 〒720-0311 広島県福山市沼隈町大字草深1890-4
常石造船で有名な街で、坂の町尾道市に接している。
鉄道は走っておらず、最寄り駅は山陽本線福山駅の2つ西隣「松永駅」からバスに頼っている、
福山市沼隈支所、 図書館、ぬまくま文化館、商工会などが集まった町の「中心部」にある。
幹線道の県道47号と県道389号(バス道)に囲まれているが、ハールの周りは駐車帯でしっかりガードされ、騒音・振動問題は無い良好な環境にある。
福山市沼隈サンパルの施設データ
- 所属施設/所有者 福山市沼隈サンパル/福山市。
- 指定管理者/運営団体 公財ふくやま芸術文化財団/福山市。
- 開館/竣工 1989年4月22日
- 設計 伊藤喜三郎建築研究所
- フロアー配置図・フロアマップはこちら
付属施設・その他
館内付属施設
- 館内施設;教室、文化教養室、練習室、会議室、実習棟(多目的室)、コインロッカー等。
施設利用手引き
建築音響工学から眺めた『サンパルホールぬまくま』
(公式施設ガイドはこちら。)
1スロープ1フロアーのプロセニアム形式コンサート講堂?
プロセニアム形式でありながら、袖舞台が無い「コンサート専用」の講堂となっている。
このホールの美点は平土間部分が無い1スロープ構成の天井の高い小規模ホールであること。
伝統芸能の盛んな瀬戸内沿いにありながら、脇花道はおろか、脇舞台も殆ど"0"に近い、コンサート専用の講堂(公会堂)。
コンサートやお稽古事発表会以外には、成人式、県会議員、市会議員先生等の「演説会」「各種セミナー」や地元出身功労者の「お別れ会?」などの各種セレモニーぐらいにしか利用されていない?
壁面
客席周辺は建設当時、一世を風靡していた表面凹凸処理を施した「打ち放しコンクリート」の垂直壁!
一応、申し訳(申し開き?)程度のアンギュレーション(シワ?)処理はされている。
大向う背後壁面
下手側大向こうは通路と思いきや?なんと壁面にへばりついた客席(S列)が...!
背後壁はもちろん?、音響ネットで表装された全面吸音(遮音)壁、で下手側には親子室のガラス窓が!
下層部の上部には空調ガラリになっており、上層部は定番の客室側に張り出した、映写・照明・音響調整室になっており、前面は下層部客室大向こう壁同様に音響スクリーンで表装された全面吸音壁になっている。
どういう訳か、上層部は内傾(前傾)スラント設置されている?
ステージ回り
プロセニアムとステージ反響板
がステージ被り付き部分の前面には立派な?打ち放しコンクリート製のプロセニアムあり、ステージには、半固定された回転壁風のサイド反響板と固定設えの、後部&上面反響板(プラスターボード製)が設えられている。
作り付けのホリゾント反響板は「ツンツルテン」でシワすらよってていない!
伝統芸能が盛んな旧・沼隈町でありながら、脇花道設備等無く、プロセニアム形式でありながら、コンサート専用設計?となっている。
据え付けホリゾント反響板→舞台前縁が約9.1mもあるのに、ホリゾント反響板手前の床に埋め込まれたホリゾントライトのガラスフードの為に、実質奥行き8mしかなく、壁忍者屋敷スタイルの半固定回転壁を用いたコンサート専用デザインなのに、プロセニアムと側面反響板には隙間(約92㎝)があり、有効奥行きは7m(ホリゾント床照明→上部反響板前縁)に制限されている!
典型的な、チャンバー形状のステージ反響板は四角いホールから「出窓」の様に突出しており、可成り癖の強い「洞窟音」となっている。
天井
プラスターボード製の大型、段付き水平反響板!
想定される定在波と定在波障害回避策評価について
※以下、音速は室温28℃、海面標準気圧1013hPaの時の348.6m/sec で計算してあります。
間口方向想定定在波
ステージ被り付き完全平行部分
- 側壁間約14.5m;約24Hz/1λ、約36Hz/1.5λ、約48Hz/2λ、
- ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
- ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
前半スロープ完全平行部分
- スロープ壁面間16.7m;約20.9Hz/1λ、約31.3Hz/1.5λ、約41.7Hz/2λ、
- ※両側壁のシワ(アンギュレーション?)処理で高次定在波抑制。
- ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
- ※扇形(ハノ字)段床配列座席で定在波層を回避。
後半スロープ完全平行部分
- スロープ壁面間16.7m;約20.9Hz/1λ、約31.3Hz/1.5λ、約41.7Hz/2λ、
- ※両側壁のシワ(アンギュレーション?)処理で高次定在波抑制。
- ※両側壁際通路配置で定在波「節部」を回避。
奥行き方向想定定在波
ステージホリゾント反響板→大向こう壁面)
- 最大奥行き約28.7m;約12.1Hz/1λ、約18.2Hz/1.5λ、約24.4Hz/2λ、
- ※「壁面間隔20m超のセオリー」適用で1波長定在波を可聴帯域(20~20KHz)外にチューニング。
- 客席スロープで抑止。
- ※高次定在波は、大向こう背後壁面処理(吸音構造)で抑制?
ステージ床面&・平土間床→天井最高部高さ方向
- 客席平土間部約14m;約24.9Hz/1λ、約37.4Hz/1.5λ、約49.8Hz/2λ、約87.2Hz/3.5λ
- 高次定在波の節(7波長)・腹(3.5波長)に当たる14mの天井高さ!
赤字は可聴音域内重低音。
という訳で、定在波(※1)の音響障害(※2)の実被害(スロープ後半で、1波長の定在波による音響障害実被害席中央部15.16番席/「定在波の節」、8&9番席で「定在波の腹」に当たるミステリースポット(※3))がしょうじているが、20.9Hzと可聴音ギリギリの際どい値であり、今回は定在波障害エリア点をー1点(後半スロープ)規定通り有効な対策が3つ以上講じられてい無いので基礎点は25点、実被害席は不問?とした。
総評
N田音響設計らしく、定在波対策(※4)は最初からあきらめている?というか「無指向?」というか、あーあ...。
確かに、理屈上1波長の定在波は神戸女学院小ホール(ホール音響ナビはこちら)位極端(35度以上)に壁面スラントをさせない限りは、抑止出来ないが...。
それにしても、申し訳程度の壁面のシワ、それに幾ら全フロアー平土間無しのスロープ席でも、水平(段付き)天井は無いでしょう!
このホールは天井が高い(5階吹き抜け相当)以外は取り柄が無い!と言っても過言ではない。
今後大規模な改修を望む!
例えばYAMAHA(※5)等、N田音響設計以外の建築事務所に改修設計を依頼し、以下の点を改めれば、結構よいホールになるであろう。
1)かぶりつき側壁の改修
最前列A列の側壁は一般的な「ハノ字」に改修すべし!
2)壁面改修
客席周囲床面+1.8mの範囲で良いから、木質グルービングパネルの内傾スラント設置に改修する。
3)S列撤去!
大向のS列は撤去し、床面を切り下げたうえで、R列後方に手摺を設け立見席に改修する。
ホール音響評価点:得点69点/100点満点中
※500席(車椅子スペースX4台含む)のコンサートホールとしての評価。
※評価ポイント詳細は「"ホール音響ナビ"に用いた用いた評価法とは」をご参照ください。
§1 定在波対策評価;得点24点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※スラント設置されていない「垂直平行側壁部分」と「平土間部分」の処理において、
「音響障害回避策」が3つ以上講じられていない場合は基礎点を配点50点満点x0.5=25点満点に減じます。
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点23点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点13点の間6段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点18点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点4点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
定在波評価
※音響障害席数は1波長の基本定在波に基づき定在波の「節」「腹」に当たる重大音響障害席数を評価対象としてカウントする。
基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数1=24点
定在波障害実被害席総計;0?席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質が吸音壁なので素材基礎点25点とした。
基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数1=24点
初期反射障害1 壁面障害席 ;20席/1階S列全席、
初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0?席席)
重複カウント ;ー0?席
音響障害席総計;20?席
客席配置評価
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点
眺望不良席数;0?席/平土間部分無し。
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;20?席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0?席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;20席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
サンパルホールぬまくまのホール施設データ
※以下、畳表示は中京間(0.5坪)サイズ表示です。
ホール様式
プロセニアム型式コンサートホール。
舞台設備
※以下、畳数は全て中京間(1/2坪)サイズ表示です。
反響板設置時;
- (ステージ最大幅約18.8m)x(最大奥行き約9.1m)有効奥行き約7m?/緞帳→ホリゾント床埋め込み照明、、
- プロセニアムアーチ:間口約12.9m、高さ不明!
※以下、畳数は全て中京間(1/2坪)サイズ表示です。
各種・図面・備品リスト&料金表
- 座席表(客席配置図)はこちら
- 楽屋、などのフロアー配置図 はこちら;
- 施設別図面setはこちら;(舞台平面図、ホール(客席)平面図)
サンパルホールぬまくまホール付属専用施設
- 控室x2、
各種・図面・備品リスト&料金表
サンパルホールぬまくまホール付属専用施設
- 控室X2室
サンパルホールぬまくまがお得意のジャンル
ばらのまち福山国際音楽祭 《 マミニャンのお気楽"音楽祭Navi " 》の、サブホール、となっている。
主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、ジャズコンサート、落語・演芸寄席、トークショー、大道芸、パフォーマンス・ショーなどの色物などジャンルに拘らないバラエティーに富んだイベントが行われている。
またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体も利用している?
その他の付属施設
練習室
1室の練習室を備えている。
壁面は部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、同じく部分的に有孔音響ボードで表装された一般建築用の石膏ボード製の天井、を持つ。
- 練習室;床面積約98㎡(約59畳)天井高さ;約2.7m フローリング床、バレエ・ダンスレッスンバーを装備した壁面ミラー(カーテン付き)を備えている。
ルーム音響評価点:40点
§1「定在波対策」評価点:20点/50点満点
- ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:20点/50点満点
- ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
多目的室
壁面は、部分的に有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、同じく部分的に有孔音響ボードで表装されたアンギュレーションを持たせた、プラスターボード製の波状天井を持つ。
- 多目的室;床面積約229㎡(約138畳)天井高さ;約3.2m 、Pタイル床、
ルーム音響評価点:70点
※会議室、宴会場、展示会場などがメイン用途のためルーム音響評価を適用しました。
§1「定在波対策」評価点:40点/50点満点
- ※ルーム低層部がプレーンな垂直壁で囲まれ、天井・床面を含む「並行した対抗面」が1対以上ある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
§2「初期反射」対策評価点:30点/50点満点
- ※ルーム低層部壁面3面以上がアンギュレーションやカーテン設備などが無い「プレーンな壁面」の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。
豆知識
サンパルホールぬまくまへのアクセス
もよりの駅
バス停「沼隈支所」下車すぐ。
山陽本線松永駅より「おのみちバス」 約27分/12.1㎞/¥470-?/令和元年現在
マイカー利用の場合
公共交通機関をご利用ください!
(※共用・専用駐車設備(有料駐車場)収容台数 150台 が少ないので公共交通機関利用がおすすめ)
サンパルホールぬまくまがある広島県福山市とは
推計人口、463,618人/2017年10月1日。
福山ー広島 1時間59分/1940円/JR在来線/103km
福山ー品川 3時間29分/17660円/新幹線/784.4km
広島県の東端に位置する市でお隣は岡山県。
『JFEスチール』最大の「西日本製鉄所」(福山地区)を持つ製鉄所城下町。
デジタヌの思い出
嘗ての沼隈町時代、常石造船に技師として友人が就職し、彼が寮長(牢名主?)を務めていた当時、彼の独房?に泊めてもらったことがあった。
とにかくもの凄い部屋で最近「YouTube動画]でよく見かける廃墟旅館シリーズさながらの「隠し部屋?」であった。
周囲に洗濯物や布団が渦高く積み上がった4畳半の部屋のど真ん中にのまるでカルデラのようなところに半固定?の「雀卓兼、炬燵」がおいてあり、そこに足を突っ込んで一晩泊めてもらった!。
流石に、この惨状?は直属の部長に伝わったらしく、部長の紹介でお見合いし、無事ハウスキーパー?に恵まれ、当地に1っ戸建ての新居を構え、定年を過ぎた現在も当地に永住!している。
その後数十年が過ぎ、トラックヤローをしていた20年ほど前(2000年頃)に、この街(常石造船)の前を通ったことも何度かあったが、時の流れが止まったような町であったことを思い出す。(最も、都心部JR難波から20分少々の小生の住まいする柏原市も同じように半世紀前!から時が止まったままだが。※6)
参照欄
※1、定在波に関する解説記事 『定在波』とはこちら。
※3、第2章第2節『ミステリーゾーン』で起きる現象はこちら。
※4 第3章 ホールデザインの基本"定在波の根絶・阻止・駆逐" 法
※5、関連記事『老ホール に朗報 預言者 YAMAHA 現る!』はこちら。
※6、関連記事「懐かしいレトロシティー柏原!?」はこちら。
公開:2019年6月25日
更新:2019年6月25日
投稿者:デジタヌ