狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

長野市芸術館 《ホール音響Navi》 

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2016年5月登場の長野市がほこる長野市芸術館

可動プロセニアムと可動反響板でホール1体型オープンステージのシューボックスホールと成る流行のスタイル。

客席周辺前半から続く2階バルコニー席周辺の壁面は「鎧張り」を用いてアンギュレーションを与え、1階後半フロアー周辺壁は立て棧をあしらい間隔の異なる「グルーブを構成」した木質パネルを用いている。

建築音響デザイン面から眺めた長野市芸術館

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

メインホール

公式施設ガイドはこちら

2フロアーの多目的ホール。

可動プロセニアムと可動反響板でホール1体型オープンステージの扇形ホールと成る流行のスタイル。

徹底した定在波対策

メインスロープ・2階バルコニー席共に「ハノ字」配列座席配列を基本としている。

メインスロープ

最前列1列から4列までがオーケストラピットにもなる可動床部の平土間になっており、5列目からが緩やかなハノ字段床(※1)となっている。

メインフロアー側壁

客席周辺前半10列まではフロアー形状自体が台形をしており、対抗する壁面はホール後方に向かって「ハノ字」に開いており平行面はない!

後半11列から大向こう27列までの1階後半フロアー側壁(2階高床サイドテラス床囲い)は立て棧をあしらい間隔の異なる「グルーブ」を構成した木質パネルを僅かに「内傾スラント設置」し対抗する面同士の平行をキャンセルしている。

さらに前途の通り客席は「ハノ字段床」上に設置され定在波対策は完璧である。

メインフロアー最前部上部には流行のむき出しの照明コラムが設置され「音響拡散体」(※2)としても利用されている。

2階フロアー

2階フロアーは1階メインフロアー前半から連なる扇形を形つくり基本対抗する平行面はない!

さらにバイアス配置の「鎧張り」(※3)を用いてアンギュレーションを与え、音響拡散体としても機能させている。

大型の段付き一体型天井

ホール天井は3角型をモチーフに構成した段付き反響板を用いている。

ホール音響評価点:得点95点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点23点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点18点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

定在波は皆無なのでなので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0席!

初期反射対策評価

※壁面材質が木質 アンギュレーション壁面なので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数1=24点

初期反射障害1 壁面障害席 ;34席/2階37列10番~26番、46番~62番、

初期反射障害2 天井高さ不足席;0?席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;34席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席全列千鳥配列!

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;34席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;34席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

リサイタルホール

(公式施設ガイドはこちら

フロアデザイン

3階吹き抜け相当の高い天井(約10m)を持つ緩やかなスロープの1フロアーのオープンステージ、コンサートホール。

最前列1列と2列目が平土間座席で、3・4列が共用段床上、5列目から後ろが緩やかな段床上に配置されている。

最後列の15列は両端の1・21番のみ固定席で、2番~20番までの14席は取り外し可能な可動席(補助席)となっている。

壁面デザイン

ホール客席周辺壁は、メインホール同様の立て棧をあしらった「木質グルービングパネル」を「アンギュレーション」を持たせて並べてある。

天井

ホール天井は波状面をした「大型1体型反響板」。

総評

基本に忠実な良質のプレミアムホール!

基本に忠実なデザインと丁寧な設えを持った良質のプレミアムホールであるが、惜しむらくは両側壁間際は通路にするか、もう少し間隔をあけてほしかった!

この辺りは、デザイナーさんの責任ではなく「クライアント(長野市)の欲」が出たのであろう?

今後の改修に期待

入れ物はほぼ完ぺきなので、あとは座席配置を改修していただきたい!、「中央部の座席」に拘らず思い切って「中央部と両側壁間際」を「ミューズ(音)」の通り道から神様(お客様)の通り道に改修し、大向こう15列中央部の「けち臭い可動席」10席は撤去し「どうしても必要なら」スタッキングチェアーの「完全補助席」とすべきである!

この改修で間違いなしに「信州きっての100点満点プレミアムホール」となるであろう。

ホール音響評価点:得点86点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは 基礎点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点19点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点14点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点3点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら

定在波評価

※定在波障害0なので基礎点50点とした。

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0席

初期反射対策評価

※障害発生エリア壁面材質が木質グルービングパネルなので素材基礎点25点とした。

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数3=22点

初期反射障害1 壁面障害席 ;38席(28席/2列~15列1番&21番、10席15列6番~15番全席)

初期反射障害2 天井高さ不足席;0?席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;38席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点

眺望不良席数;0席/1階平土間中央部座席全列千鳥配列!

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;38席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;38席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

アクトスペース

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間口17.94mx奥行き17.1mのほぼ正方形の多目的スペース。

3階吹き抜け相当の高い天井(約10m)を持つ、ロールバック段床システムを備えた平土間多目的イベントルーム。

通常の固定席収納ロールバックシステムでは無く「ロールバック段床」という珍しい「床構成」で、引き出し状前方にせり出した段床にスタッキングチェアーを並べて使用する。

平土間イベントルームにしては珍しく「奈落」が設備され、3x6尺(91.5x182cm)の分割パネルで構成されたステージ面を持ち、多様な「舞台仕掛け」を構築でき実験劇にも対応している。

リハーサル室

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幅 17m × 奥行 12m × 高さ 4.5m 床面積210m²(約127畳)の立派なリハーサル室を備えている。

長野市芸術館のあらまし

Official Website  https://www.nagano-arts.or.jp/

旧長野市市民会館の跡地に市役所第1庁舎と合わせて建設され2016年5月8日 開館した、

メインホールとリサイタルホール、アクトスペースの三つの施設を持つ総合文化施設。

宮崎駿監督のアニメ作品でおなじみの作曲家久石譲氏を「芸術監督」に招聘し積極的な自主公演を行っている長野市ご自慢の施設。

長野市芸術館のロケーション

  • 所在地  長野県長野市鶴賀緑町1647

長野駅善光寺口から長野鉄道線通りを北に数分、国道19号線市役所前交差点ろ東に入ったすぐのところにある市役所第1庁舎と繋がった建物として佇んでいる。

国道19号線「昭和通り」を西に辿れば、長野県庁舎があり、辺りは長野市の中心街と成っている。

長野市周辺にある観光スポットのトリップアドバイザー くちこみ情報 はこちら。

長野市芸術館へのアクセス


最寄り駅

東日本旅客鉄道・長野電鉄「長野駅」から徒歩15分
長野電鉄長野線「市役所前駅」から徒歩5分
長野駅善光寺口から川中島バス 45~48系統に乗車、「市役所前」下車

長野市芸術館がお得意のジャンル

メインホール

オーケストラコンサート,バレエ公演以外にもミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、有名タレントの座長ショー、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショー等ジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

またプロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

アクトスペース

舞台演劇以外にも、Jポップ関係のコンサートや、現代演劇、伝統芸能、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショーまでジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

リサイタルホール

主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられている。又ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会等、小編成の室内楽コンサートなども行われている。

長野市芸術館の公演チケット情報

メインホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

リサイタルホールで催されるコンサート情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

アクトスペースで催されるコンサート情報

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長野市芸術館以外の長野県のホール

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施設データ

  1. 所属施設/所有者 長野市芸術館/長野市。
  2. 指定管理者/運営団体 (一財)長野市文化芸術振興財団/長野市。
  3. 開館   2017年5月8日(旧長野市民会館1961年4月8日開館 2011年3月31日閉館)
  4. 設計  槇(まき)文彦氏
  5. ゼネコン 
  6. 内装(音響マジック) 

メインホール

  1. ホール様式 、『シューボックスタイプ』プロセニアム型式多目的ホール。
  2. 客席   2フロアー 

    1292席
    1階席916席/2階席376席(うちバルコニー席10席)
    オーケストラ迫使用時:1階客席前4列・106席減
    車椅子席:最大20席(1階11列可動席を撤去)

    、可動床、1階平土間中央部千鳥配列、あゆみ板、
  3. 舞台設備 2面舞台相当(幅約40m)、プロセニアムアーチ:

    間口18m × 奥行16.4m × 高さ12.4m
    (※音響反射板使用時は、奥行:11m)
    客席床から舞台床までの高さ 90cm
    舞台―スノコ高 23m

    、可動プロセニアム、可動反響板。オーケストラピット可動床(間口19m × 奥行4.4m)
  4. その他の設備 、楽屋x6、控室、他

リサイタルホール

  1. ホール様式 。『シューボックスタイプ』音楽専用ホール。
  2. 客席   1フロアー 収容人員 293席

    車椅子席:最大4席(15列通路横に常設2席、2席は可動席を撤去)、中央部千鳥配列

  3. 舞台設備 オープンステージ形式:間口13m × 奥行7m × 高さ10m
    客席床から舞台床までの高さ 64cm、ブドウ棚(すのこ)
  4. その他の設備 、楽屋x3、

アクトスペース

  1. ホール様式 平土間多目的イベントホール。(間口17.94mx奥行き17.1m)
  2. 客席   1フロアー 収容人員 220名、ロールバック段床システム、
  3. 舞台設備 オープンステージ形式:間口:18m 奥行:7m 高さ:6.86m、ブドウ棚(固定簀の子高さ6.87m)、
  4. その他の設備 、楽屋x2、

付属施設・その他

  • 付属施設 リハーサル室x、音楽練習室x2、演劇練習室x2、バンド練習室x3、展示サロン、アトリエ、ミーティングルーム他
  • 施設利用(利用料金等)案内 詳しくはこちら

長野市芸術館これまでの歩み

1958年 長野市市制60周年記念事業としてそれまで農地だった旧鶴賀緑町1647番地に総工事費1億8千万円をかけて旧長野市市民会館を着工。

1961年(昭和36年)4月8日に当時長野県最大の施設として佐藤武夫氏の設計、の旧長野市市民会館がオープン。

2011年3月31日 老巧化の為に閉館・解体。

2016年5月8日 市民会館跡地に『長野市芸術館』がグランドオープン。

※参照覧

※1、定在波対策については『ホールデザインのセオリー その1 定在波対策 』こちらをご覧ください

※2、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー その4 ホール形式とディテール・デザイン』をご覧ください。

※3、鎧張り(下見板張り)についてのWikipediaの解説はこちら。

 

公開:2018年1月14日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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