狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

岐阜県立・サラマンカホール/岐阜市内 《ホール音響Navi》

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岐阜県が世界に誇る「クラシック音楽の殿堂」

伝統芸能の盛んな岐阜県民の誇り中京地区を代表する「国内有数の施設」。

一見化粧美人なので、「ドキッ...」とさせられるが、時間がたつと素地が見えてきて、がっかりするタイプの目鼻立ちのしっかりした、スパニッシュ美人でもある?

サラマンカホールのあらまし

Official Website  https://salamanca.gifu-fureai.jp/

岐阜県とサラマンカ市の交流にちなんで名付けられた。

会館の裏庭にはオープンステージ・コロシアム風の数百人収容程度の広場があり、土・日・祝日などにイベントが開かれている。

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

音響デザイン面から眺めたサラマンカホール

(公式施設ガイドはこちら)

客席後方に向かって僅かに拡がったホール、1列の高い軒先の浅いバルコニー席、高い天井、1スロープ、広い壁際通路、装飾壁、装飾柱、装飾梁、回り込み・組格子天井、等など....

シューボックスデザインのお手本の様なホール?(※1)。

長田音響らしく音響拡散体てんこ盛り

前途したように、3層に分かれた側壁に配置された全周を取り巻くテラス、や最上層部の装飾マド、折れ上がった大ピッチの格天井、シャンデリア等々...、これでもか!と言わんばかりのありとあらゆる音響拡散体(※2)を散りばめた永田音響らしい「残響特殊メーク」の厚化粧!で仕上げたホールである。

『"壁面間隔20m超"のセオリー』を柱とするシンプルな定在波対策?

定在波(※3)に対する対策も長田音響らしく至ってシンプル?で、『"壁面間隔20m超"のセオリー』(※4)に従いオーディトリアム間口20mジャスト、奥行き約26mのサイズで水平方向の定在波周波数を可聴帯域(20~20KHz)外の低周波振動(幅方向約17.4Hz、奥行き方向約13.4Hz)に追いやっている。更に後半後半スロープ部は扇形配列座席の谷間効果で定在波障害を回避している。

但しステージ上は間口18.4mの完全平行壁面なので18.9Hz(28℃/1013hPa)の横断定在波が生じており、コントラバス奏者と指揮者?は(音量バランス)に難儀するであろう。

フロアー平面デザイン

メインフロアー

ステージ被り付き2列が平土間で3列目C列からG列までの5列が平土間に近い緩やかなスロープを持つ前半部7列と通路を挟んで12列12段の扇形段床で構成されている。

ホール後半部分は、永田音響の手がけた作品にしては珍しく、急峻な扇形スロープ上に配置した座席と両側壁間際に設けた通路のおかげで、比較的プレーンな凹凸の少ないプレーンな垂直壁を採用したシューボックスホール特有の「定在波」による「障害」(※5)を回避している。

2階テラス

2階部分にはメインフロアーを取り囲むように全周に木製の格子柵が付いた丁寧な設えのテラスが配置され、両側壁と大向こう壁面の3面には1列のテラス席が配置されている。

壁面デザイン

メインフロアー客席周囲壁面

メインフロアー客席周囲は、上部にアーチ状の装飾を配した装飾梁を5本の装飾柱の間に配し、額縁で縁取られたパネルをはめ込んで表装されている。

2階サイドテラス背後壁面

2階サイドテラス背後は1階同様に装飾柱と上部に欄間をはいした2段の装飾梁で表装され1階同様に額縁付きのプレーンな木質パネルで表装されている。

特徴的な最上層部

最上層部は小さなピッチのアーチ部を持つ装飾梁を支えるようなで装飾柱を配したダミー窓状に成型したプラスターボード反響板で表装されている。

天井デザイン

梁上部から折れ上がった格天井風の一体成型反響板を用いている。

大きなピッチの梁状のリブの中に小さなピッチの格子を組んだような凝ったデザインのプラスターボード製一体成型反響板となっている。

6か所にシャンデリア風の照明器具が吊られており客性平土間上部には流行の剥き出しの照明バトン類が吊られている。

岐阜県特産?パイプオルガン装備

スペイン・サラマンカ(Salamanca)市・大聖堂のオルガンに範を取った、白川町のオルガン制作者「辻宏」氏の手になるパイプオルガンを設備。

総評

残念ではあるが、このホールは厚化粧でごまかした、XX?であったようだ。

ロマネスク調度の厚化粧だが、基本的に並行面が多すぎ、スラント処理を施していない天井のために、場所(パ-ト)によってはステージ上でも、定在波が発生し障害が起こっていると察せられる。

残響(※6)がどうのこうのの前にしっかり定在波対策をとるべきではなかったのですが、ねえ長田さん?

問題なのはステージ・平土間部分と対抗する天井間での高さ方向定在波の存在

断面図をご覧になればおわかりの通り、反響板下面までステージ上で15.5m(約22.5Hz)平土間部分で16.2m(約21.5Hz)の重低音域可聴音定在波が生じている事。

座面までの高さ着座状態で410m程度、標準座高が75㎝程度と考えても耳の位置が床面+110cm位、全高(定在波波長)に対して1/15低度は浮かんでいるので「ミステリースポット」はかわしているが、多少迫力の無い重低音に?

最もこのホールに限らず、リリア 音楽ホール(ホールNaviはこちら)など一部の例外を除き(日本全国の客席1000席以下の小規模の「トラディショナル欧風シューボックスホール」は全てこの問題(高さ方向定在波)を抱えているようではある。

オルガン奏者(テラス)

オルガンテラス床→天井が約12.8m(約27Hz)で同じく耳高さが110㎝程度で波長に対して約1/12程度。

こちらも「ミステリースポット」はかわしているが、実際の音圧より多少小さめになり、ペダル音のプリセットには難儀するであろう。

今後の改修に期待

折角のロマネスク調度の壁面を改修するのは忍びないであろうが、ステージ側面は一般的なボックスホールのように、ステージ背後側を少し狭めm客席に向かってハノ字に広がった台形に改修すべきである。

難儀な天井改修?

オーチャードホール(ホールNaviはこちら)のように天井高さも20m以上取れれば別ですが、「欧風?シューボックス」に拘りフラットな天井と平土間(ステージ)の組み合わせは御法度破りの暴挙!ですよ。

鉄骨作りの変形アーチ屋根があるのに、態々天上反響板をフラットにしなくてもよかったのでは?

「すみだトリフォニーホール」(ホールNaviはこちら)のように全体片流れにするか、せめてステージ上部だけでも、スラントさせるべきではなかったのでしょうか?

前半部分の天井反響板改修

後半の格天井と違和感のないデザインの"スラント面"を持つ天井に換装していただきたい。

天井前半中央部の反響板「3モジュール」とステージ背後から折れ上がるパイプオルガン上部反響板を改装すれば上手くいくはず。

但し豊田市コンサートホール(※ホールNaviはこちら)で行ったような段付き天井は効果がないので念のために...。

ホール音響評価点:得点91点/100点満点中

§1 定在波」対策評価;得点44点/配点50点

  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な平面壁」で囲まれているときには 配点25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する

§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点25点/配点25点

  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する

§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点17点/配点20点

  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する

§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点5点/配点上限5

  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。

算出に用いた値;

定在波評価

※被害(サプライズエリア)が最前列2列と軽微?なので基礎点は50点で据え置いた。

基礎点B1=配点50点ー障害発生エリア数1=49点

定在波障害顕著席数;定在波の腹(サプライズエリア席)68席(14席/1階平土間AG列全席、/1階平土間C列両袖1・2・3&30・31・32番席)

定在波障害実被害席数;68席

初期反射対策評価

基礎点B2=素材基礎点25点ー障害発生エリア数0=25点

初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席

初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;0席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数1=19点

眺望不良席数;12席/1F平土間中央部B列11番~22番座席

音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;68席

音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席

音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足席;0席

重複カウント ;ー12席

音響障害席総計;68席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

リハーサル室

奥行9.7m、巾13.3m高さ3.15m床面積129㎡(約78畳)のリハーサル室がある.

ルーム音響評価点:24点

内訳

定在波対策評価点:12点/50点満点(ルーム低層部に1対以上のプレーンな並行壁がある場合は持ち点はx0.5と成ります)

残響その1(初期反射)対策評価点:12点/50点満点(ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は持ち点はx0.5と成ります)

サラマンカホールの施設データ

  1. 所属施設/所有者 岐阜県県民ふれあい会館/岐阜県
  2. 指定管理者/運営団体 ふれあいファシリティズ/岐阜県。
  3. 開館   1994年4月8日
  4. 設計  日建設計
  5. 内装(音響マジック) 永田音響設計
ホール様式

 『シューボックスタイプ』音楽専用ホール

オーディトリウムサイズ 推定間口W20mx最長奥行きD26.6m/オルガン背後壁面→1階大向こう壁面x高さ16.2m/最前列平土間床面→シーリング下面

客席

1フロアー(1スロープ)収容人員 708席、(内2階テラス106席)

舞台設備  

  • オープンステージ、間口:18.3m 奥行:9.7m,高さ15.5m/ステージ→シーリング下面、ステージ高さ;Fl+0.7m、照明ブリッジX4本、
  • その他の設備 パイプオルガン

各種・図面・備品リスト&料金表
  1. 座席表(客席配置図)はこちら
  2. 楽屋、などのフロアー配置図 はこちら
  3. 施設別図面setはこちら;(舞台平面図舞台仕込図反響ホール(客席)断面図
  4. 舞台設備・機材・備品;設備リストはこちら、使用料金表はこちら。
  5. 照明設備・機材;設備リストはこちら、使用料金表はこちら。
付属(共用)施設 

施設利用ガイド

サラマンカホールのある岐阜県・と岐阜市

岐阜県

ほぼ令制国美濃国と飛騨国で構成されている。

推計人口、2,001,230人/2018年4月1日。

岐阜市

岐阜県の中南部に位置する、同県の県庁所在地。
推計人口、402,491人/2018年4月1日

岐阜ー(名古屋)ー品川 2時間10分/11,510円/在来線ー新幹線/389.5km

サラマンカホールこれまでの歩み

1994年4月8日、国道21号岐阜バイパス沿いの副都心?にオープンした。

サラマンカホールのロケーション

所在地  岐阜市藪田南5丁目14番53号

県庁、岐阜アリーナ、岐阜県総合教育センター、岐阜県福祉・農業会館、岐阜県警察本部などのある町外れ?の第2都心?にある「岐阜県県民ふれあい会館」の中にある施設。

トリップアドバイザーの周辺口コミガイドはこちら。

サラマンカホールへのアクセス

  • JR西岐阜駅より約2キロ
  • ふれあい会館バス停(JR 岐阜駅より「岐阜バス」で約25分)

サラマンカホールが得意のジャンル

コンサート以外にも、ソリストのリサイタル、アンサンブル団体の演奏会、伝統芸能、歌謡ショーなど、幅白く利用されている。

サラマンカホールの公演チケット情報

2015年から取り組んでいる事業としてサラマンカホール・レジデント(専属)・カルテットを擁している。

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら

デジタヌの独り言

名古屋からJRで470円/21分/30.3kmの名古屋の近郊都市?と言ってもよい岐阜市にある、

大阪・いずみホール(※ホールNaviはこちら)と並んで良きにつけ悪しきにつけ、個性の強い白人系の美人に例えることができるだろう。

シューボックスコンサートホールの、良い点も悪い点もしっかり持ち合わせたレガシータイプの「あくの強いホール」と言えるだろう、いずれにしても日本を代表するシューボックスコンサートホールであることには違いが無い。

  1. 最大欠点;公共アクセスの悪さ!

岐阜県民・愛知県民(尾張人)双方にアクセス・利便が悪すぎる!

JR 岐阜駅から「岐阜バス」で約25分の市外地から遠く離れた町外れの農地が残る「岐大バイパス」沿いの庁舎街?にある。。

平日日中1時間に4本程度、最終OBKふれあい会館発が20:30 土・日祝が19:53とコンサート対応していないのが難点。

  1. 潤沢なパーキング?

公共交通機関の貧弱さに比べ、町外れの立地を活かし?周辺にある県の公共施設と共用の広大な駐車設備(1万台前後収容)が拡がっている。

岐大バイパス沿いという立地でもあり、

「お越しの際は、公共交通機関を避け?マイカーをご利用願います!」

と言ったところか。

参照覧

※1 壁面については 第9章 各部の意匠その1 壁面第2節 シューボックス特有の壁面処理 をご参照ください。

※2、音響拡散体については、『ホールデザインのセオリー 第9章第3節第1項 音響拡散処理と音響拡散体となる要素』をご参照ください。

※3、定在波対策については『第4章 セオリーその1 "定在波の駆逐" と "定在波障害の回避策"』をご覧ください

※3-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※3-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※4、関連記事『"壁面間隔20m超"のセオリー』「音の良いホールの条件とは」はこちら。

※5、定在波障害の実被害については『ホールに潜む ミステリー ゾーン (スポット)とは?』をご参照ください。

※6、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

 

公開:2017年11月 8日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


村国座/各務原市  《 多目的芝居小屋音響Navi 》 TOP不二羽島文化センター /羽島市《ホール音響Navi》 


 

 

 



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