狸穴ジャーナル・別冊『旅するタヌキ』

名古屋市芸術創造センター 《ホール音響Navi》

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Official Website  http://www.bunka758.or.jp/scd02_top.html

名古屋市芸術創造センターのあらまし

"芸術が生まれる。文化を感じる。名古屋の文化芸術創造拠点。"

<公式サイトより引用>

もしかしたら「芸術が埋もれる、文華を勘ぐる、名古屋の分化藝術想像キョトン?」...。

とにかく「愛知県芸術センター」(※ホールナビはこちら。)と並んで凄まじい施設!

ホールはもちろん、リハーサル室、会議室、果てはトイレに至るまでとことん6角形デザイン(※1)に拘った施設!

名古屋市芸術創造センターのロケーション

ところ 愛知県名古屋市東区葵一丁目3番27号

トリップアドバイザーの周辺口コミ ナビはこちら。

名古屋市芸術創造センターへのアクセス

最寄りの駅  名古屋市営地下鉄東山線「新栄町駅」下車、徒歩約3分。

名古屋市芸術創造センターこれまでの歩み

名古屋法務局の移転後の跡地を再開発することにより建設された。

1983年(昭和58年)11月3日に開館した。

名古屋市芸術創造センターが得意のジャンル

オーケストラコンサート、オペラ、バレエ,ミュージカル、Jポップ関係のコンサートや、往年のアイドル・エンタテイナーのワンマンショウ、ジャズコンサート、歌謡ショー、懐メロ歌手の歌謡ショー、、現代演劇、落語・演芸寄席、大道芸、パフォーマンス・ショーまでジャンルに拘らない幅広い演目でこのエリアの多くの人達に受けいれられている。

プロ演奏団体、以外にも数多くのアマチュア団体が利用している。

名古屋市芸術創造センターの公演チケット情報

チケットぴあ該当ページへのリンクはこちら。

施設面から見たホールの特色

(公式施設ガイドはこちら)

※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。

構造は鉄骨鉄筋コンクリート構造の地上6階、地下2階建て、客席数640席のホールのほかに、リハーサル室、練習室2室、大会議室、中会議室、小会議2室、資料室を備えている。

1983年11月3日に開館した?

1983年と言えば、東京文化会館が開館してから22年、ザ・シンフォニーホール開館の翌年、

なのに、当時すでに廃れかけていた打ち放しコンクリート、ブームが去りつつあった多角堂(※1)、アダプタブルステージ(※2)と思いつく限りのエッセンスを全て網羅し?一昔前のルナホール(1970年開館※ホールナビはこちら)のアイデアを借用し(市当局者への)受けを狙ったデザインでコンペに参加したのかもしれない?

6角堂&ホール客席周囲内壁5面全て打放しコンクリート????!!!!

もの凄い設えのホールである。

一事で言わせていただければ「巨大エコールーム擬き仕様」(※3)

2段階の「アダプタブルステージ」(オーケストラピット&拡張ステージ)

1階平土間席が490席432席402席と三段階に変化するアダプタブルステージを採用している。

立派な伝統芸能対応設備

大迫り、小迫りを備えた「奈落」が設備されている...

客席背後壁

1・2階共天井から続く「コーナー吸音板?」と1面音響簀の子?で表装された「吸音壁」と成っている...。(こうでもしないと...、ネ)

ただし余計な「おせっかい残響?」(※4)は制御出来ても、定在波(※5)解消にはならない!

トラスで表装?された吸音天井

こちらもトラス格子?で吸音材(圧縮ボード?)を支えている。

定在波対策?

客席周囲の壁面はプレーンな垂直壁で一見「定在波対策(並行面対策)」は全く施されていないように見えるが...

2層バルコニー形式で有るにもかかわらず各フロアー共に急峻なスロープで対抗面をキャンセルする作戦(※6)を取っている。

(※日本のモダニズム建築の始祖 故 山田守 先生の日本武道館(11964年9月完成)の「急峻なスタンド」からヒントを得た手法?)

まあ結果論として殆ど傾斜の無い天井と床面との対抗面対策にもなっている。

定在波対策のカラクリを解く

搖動式サイドプロセニアムと大向う両脇壁面

両脇座席6列から15列の下手側1~6番席と上手側の41番~46番席はスロープなので並行面はない。

2階バルコニー席正面席

2階スロープも急峻なために、対抗する上部プロセニアム上縁の垂直壁とは並行面はない。(ただし大向う通路を除く)

2階バルコニー席脇正面席

こちらも同じく対抗する、壁面キャンセルとは急峻なスロープで対応している。

デザイナーの浅知恵?

1983年当時、は今ほどコンピューターも普及しておらず、音響シュミレーションどころか、CADすらあまり普及していなかった「計算尺と手書き図面」の時代?。

しかも、大学の研究室グループ程度では、構造計算も手分けして行っていたであろうし、できるだけシンプル?に6角形モチーフデザインを実現したかったのであろう?

ホール音響評価点:得点79点/100点満点中
§1 定在波」対策評価;得点50点/配点50点
  • ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
  • ※客席側壁が ホール床面積の1/3以上に及ぶ範囲を「完全平行な平面壁」で囲まれているときには 配点を25点に減ずる。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点10点/配点25点
  • 木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材12点の間5段階で素材基礎点を与える。
  • 障害箇所1点/1箇所で素材基礎点から減じて基礎点とする。
  • 基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点15点/配点20点
  • ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
  • ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価得点4点/配点上限5
  • ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
  • ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。

総評;滅多に使われないステージ反響板で悲劇が倍増!

はっきり言って急峻な1階スロープもステージ上では効果は無かったようで(当たり前)、「音とお金(使用料)と自己満足」を大事にする名古屋のアマチュア団体はステージ反響板は用いず、ホリゾント幕と「拡張ステージ」を用いているようである。

上部反響板で対抗するメインフロアー大向う背後壁との平行面キャンセルをするアイデアが生かされず、これがさらなる悲劇を招いていると言えなくもない。

最もステージ上では対抗するスロープとの関係で、大向う席の定在波障害には気が付かない!、それよりとにかくゲネプロ・ステリハのホール客席無人状態では「めったやたらと反響が強すぎ」ステージ上でさえ音量バランスがとりにくい?のであろう。

算出に用いた値;

※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。

定在波評価

※プレーンな垂直壁の6角堂だが、急峻なスロープで対抗面をキャンセルしているので配点は50点とした

基礎点B1=基礎点50点ー障害発生エリア数0=50点

定在波障害顕著席数;0?席

初期反射対策評価

基礎点B2=素材基礎点12点ー障害発生エリア数1=11点

初期反射障害1壁面障害 0席

初期反射障害2 天井高さ不足 38席(38席/2F、)

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;38席

客席配置評価

基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数2=18点

眺望不良席数;50席/1F平土間中央部座席

音響不良席その1;定在波障害席0席

音響不良席その2 ;初期反射障害1壁面障害 0席

音響不良席その3 ;初期反射障害2 天井高さ不足 38席(38席/2F、)

重複カウント ;ー0席

音響障害席総計;88席

算定式 

評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数

6角型のリハーサル室?

高い天井(4.8m)を持つ278㎡(約168畳)天井高さ4.8mのもの凄い音響のリハーサル室。

定在波のせいで、聞こえない「パート」が続出しているとか?

バレエ・ダンスレッスンバーを装備した壁面ミラー(カーテン付き)を備えている。

フルコンサートピアノ

全周有孔音響ボードで表装された遮音(吸音)構造を持ち、

ルーム音響評価点:24点

§1,「定在波対評価点:12点/50点満点

  • ※ルーム低層部に1対以上の並行したプレーンな垂直壁がある場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

§2、「初期反射」対策評価点:12点/50点満点

  • ※ルーム低層部3面以上がプレーンな垂直壁の場合は、満点x0.5=25点をベースに減点算出。

詳細データ

  1. 所属施設/所有者 名古屋市芸術創造センター/名古屋市。
  2. 指定管理者/運営団体  (公財)名古屋市文化振興事業団/名古屋市。
  3. 開館   1983年11月3日
  4. 設計  名城大学建築学科教員安藤洋、田賀幸子、及びゼミ学生で編成されたチーム。
  5. ゼネコン 淺沼組
  6. ホール様式 プロセニアム型式多目的ホール。
  7. 客席    2フロアー、収容人員 640席、可動床、
  8. 舞台設備 、プロセニアムアーチ:間口:19m 奥行:13、16、20.8m/三段階 (9.5m可動反響版使用時)高さ:8.6~約10m、ブドウ棚(すのこ)、小迫り、可動プロセニアム、エプロンステージ・オーケストラピット(可動床)、オーケストラひな壇(可動分割迫り)脇花道、
  9. その他の設備 付属施設  楽屋x6、スタッフルーム、リハーサルルーム、会議室x4、練習室x2、資料室
各種図面,備品リスト&料金表

デジタヌの独り言

見事に引っかかった名古屋市

1983年の作品だから致し方無いと言えばそれまでだが、第1次六角堂ブームが去って20年も経ているのに、全く「名古屋市」のデザインコンペ担当者(及び有識者メンバー)のセンスを疑いたくなる!

確かに前年の1982年と言えば、ザ・シンフォニーホール が出来てやっと残響の概念と共に「現代音楽ホールのデザインセオリー(音響設計)」(※7)が確立しかけていた時期なので、致し方無いと言えばそれまでだが、1960年の旧京都会館建設以来20年以上経過していたわけで、音響的に「大成功を納めた」ホールが皆無と言って良い状態で「六角堂信奉」もやや「??」の時代になって来ていたのは(学習して)経験的に知っていたはず!

イクラ音響音痴?のど素人グループの「策貧?」にしても酷すぎる。

ホールは「演ずる場所」で単なる「モニュメント」では無い!と再度申し上げておく。

《ホール管理者への要望》

料金設定の見直し要望

もともと脇舞台も含めバックステージが狭いホールなのだから、利用団体のニーズを尊重しエプロンステージを標準設定とし、組み替え時間料金の負担が利用者に生じない様な配慮(※8)が必要であろう。

ここを利用するような「マイナーなアマチュア団体」にとっては収容人員よりステージが広い方が都合よく標準設定552席(現標準640人)になったほうが集客もたやすく、都合がよい!

更に付け加えるなら、この残狂?環境では、繊細なタッチの差による「ニュアンスを伝える」ことなど不可能で、腕に覚えのあるソリスト(アーティスト)は他の「プレミアムホール」を利用している。

改修要望

1983年建造なので、新建築基準法の耐震補強規定には合致しているはずだが、今後ともに施設を継続使用するなら以下の改修は実施してほしい。

プロセニアム前縁コーナー反響板の設置

現在プロセニアム上縁はノッペラボウの打ち放しコンクリートだが、この部分(平土間オケピット上部迄)に使いもしないブドウ棚を廃止してでもプラスターボード製(※9)のコーナー反響板を設置し、平土間部分及び2階バルコニー大向うとの対抗平面対策実施する。

壁面スラント処理

各ブロアー周辺部にはかなり巾に余裕ある通路が設けられているので、これを利用して、通路床面から1.8mの高さ以内に、最低でも壁紙表装の一般建築用石膏ボード+合板(宴会場仕様)かプラスターボード製、できれば最新のグルービング材をスラント(傾斜)設置すべし!

平土間(オケピット)部分中央部座席の千鳥配列化

この部分50席は奇数列3席が減少しても千鳥配列に変更すべし!

現在改修工事中の1930年10月開館の名古屋市公会堂(※ホールNaviはこちら)ですら前回の耐震補強を主とした改修時にメインフロアーの中央ゾーン全席を「千鳥配列」に改修している!(※両脇の「ハノ字配列」座席エリアを除く中央部2エリア全席!)

※参照覧

※1、「夢殿」は夢見ても設計するな!はこちら。

※2、現代の3大迷発明!「珍妙からくり(残響調整装置、可変段床設備、可変吊り天井)」に関する記事はこちら。

※3、エコールームに関する「音工房Z」さんの解説記事はこちら。※本物のエコールームでは定在波対策(平行壁面対策)はしっかり施されています。

※4、直接音、初期反射音、残響音についての(株)エー・アール・アイさんの解説はこちら。

※5-1、定在波の悪影響に関する一般人向けnatuch音響さんの解説記事はこちら

※5-2、定在波に関するWikipediaの(技術者向け)解説はこちら。

※6、定在波対策については『ホールデザインのセオリー その1 定在波対策 』こちらをご覧ください

※7、『藝術ホールデザインの セオリー その5 ホール設計における禁じ手・御法度集』はこちら

※8、杉並公会堂(ホールNaviはこちら)ではエプロンステージ、および客席組み換え費用は加算していない!

※9、アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら

 

公開:2018年1月 3日
更新:2022年9月30日

投稿者:デジタヌ


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