NHKホール 《ホール音響Navi》国内屈指の規模を誇る『多目的ホール』
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1962年の東京文化会館に遅れること10年、1982年開館のザ・シンフォニーホールに先立つこと10年の1972年にHNK放送技術研究所が東京文化会館音響デザインで培った音響設計技法を更に発展させて、日本初の巨大ホールに挑戦した記念碑的作品。
第1楽章 NHKホールの音響
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
ビルの谷間にある小学校の校庭並みの巨大空間!
とりあえず都心の小学校の校庭並み幅・奥行き共に48mの巨大空間である、3階バルコニー席の最上段大向こう席になると、校庭の端にあるブランコで遊んでいる児童が4階の屋上にいる同級生を呼ぶような物である!?そう簡単には声が届かない!
エコー(初期反射波)が原因の定在波すら起こらない?!
パイプオルガンのいペダル音が鳴り響いたとしても、最低音約13Hz で波長約26m程度、そう簡単には定在波(※4)による影響(壁際の轟音、&客先中央部での「音響消失」等)も発生しない、とりあえず音を隅々まで行き渡らせる工夫に重点を置いているデザイン。
壁面に新建材やプラスターボード(※5)をふんだんに?使っているのも、初期反射さえ拡散させれば、エコーが続く心配どころか、「楽音」を客席隅々まで届かせることすら容易では無かったことを物語っている。
※4、定在波の悪影響に関する解説記事はこちら。
※5アクリルエマルションペイント仕上げのプラスターボードについての建材メーカーの解説記事はこちら。
3層(3スロープ2バルコニー)扇形多目的ホール
「天井の高い扇形ホール」の利点を最大現に活かし、各フロアー共に両翼を前方に張り出したデザインを採用している。
各フロアーの前方軒先高さ(開口部)は充分にとられ、2階以上のフロアー天井(上層部軒下)・軒先形状共に上反するようにスラント処理され、
1階フロアーに対する2階バルコニーのオーバーラップが最小になるように、1階フロアーの定員は抑えられている。
複雑に折れ曲がった壁面
壁面にはアンギュレーションをつけ、対抗する平行壁面の影響を緩和してすると同時に残響(※3)創出効果も狙っている。
※3、残響(初期反射と後期残響)についてのWikipediaの解説は
2重になった天井反響板
天井反響板はホール周辺部と中央部分に別れており、
ホール中央部分の巨大な3分割のセグメント部分は周囲より低く設定あされ、ホール中央部部分の音抜け?を補うような意図でデザインされている。
建設当初珍しかったパイプオルガン
パイプ数7,640本、ストップ数92、日本最大級のカール・シュッケ社製のパイプオルガンを装備している。
何週間にもわたって毎日深夜、室温・外気温(パイプオルガン空気取り入れ口周辺)が安定したときに「調律」した逸話は有名。
ホール音響評価点:80点
§1,「定在波対」策評価点:39点/40点満点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、天井形状、天井高さ、等の要素をそれぞれ減点法で算出。
- ※客席側壁がプレーンな垂直壁で「完全平行・平面」の場合は、満点x0.5=20点をベースに算出。
§2、残響その1 「初期反射」対策評価点:8点/20点満点
- ※壁面の素材・形状、客席配置、その要素で減点算出。
- ※(コンクリート、人造大理石、タイル・陶器製などの)硬質材の客先周辺壁材仕様は、満点x0.5=10点をベースにして減点算出。
§3,残響その2「後期残響」への配慮評価点:20点/20点満点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で減点算出。
§4,客席配置への評価点:13点/20点満点
- ※壁際席、大向こう席、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で減算。
- ※客席周辺壁材が硬質壁の場合は、満点x0.8=16点をベースに減点算出。
※関連記事「後悔しないコンサート会場の見分け方」まとめ はこちら。
第2楽章 NHKホールに係る数多くの逸話
NHK放送技術研究所は1970年代当時の最新技術を駆使して3000人超の収容人員を誇る「総合舞台芸術ホール」設計という「難題」に挑戦した!
とにかく「けた外れにデカい!」
NHK交響楽団でさえめったに使わない、巨大ホール!
世界中見渡してもパイプオルガンまで備えた巨大音楽ホールでこれだけデカいのは数えるほどしかない。
別格とも言えるロンドンのロイヤル・アルバート・ホール(収容数7,000人)がある程度。
オペラハウスでも...
メトロポリタン歌劇場が3800人で並ぶが、
他の老舗オペラハウスは大きくても2000人前後、たいていは1600人程度の施設が多い。
東京国際フォーラムホールAで5,012席
但しこちらはらラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンフェスティバルの時ぐらいしかクラシックの音楽会には使用されていない「同時通訳設備を持つ国際会議場」で普段はポップス系の音楽ショーが主体のイベントホール。
オルガン付きコンサートホールに話を戻すと
シドニーオペラハウス付属コンサートホールで2,679席。
最新のウォルト・ディズニー・コンサートホールで2265席、
パイプオルガンは無いが有名なカーネギーホールでも2804席、
音の良さで定評のあるフェスティバルホールで2.700席。
つまりは2,800席位が、PAを通さずに生楽器・肉声を響き渡らせる限界で有るとも言える!
原始的なPA設備しか存在しなかった時代背景
1970年代の設計当時は「PA」もさほど発達しておらず、1966年のビートルズ来日公演の時に当時の日本武道館の貧弱な「場内拡声設備」だけでは、エレキギターの音どころか「彼らの声すら」場内に充分に響き渡らず、「全く演奏の聞こえ無かった客席」が多数生じた逸話まで生まれた時代である。
つまり、設計当時は「音響支援装置=PAシステム(※1)」にも頼れない時代であった!
※1、PAの語句説明はこちら。
「NHK 放送技術研究所」の持てる総力を結集した記念碑的な作品!
『PAに頼らずに(頼れずに?)オペラ歌手やオーケストラの「アコースティックな生音」を4000人近い聴衆が入っているホール隅々にまでいきわたらせる』という命題への挑戦である!
当時の最新技術「1/30スケールモデル音響実験」で不可能に挑戦!
ザ・シンフォニーホール(1982年開館)に先立つこと十年、当時確立されていなかった「音響設計技術」に基ずき「1/30スケールモデル実験」など、当時としては先進的な手法を用い、「NHK 放送技術研究所」の持てる技術の全てを出し切った記念碑的な作品と言えるであろう。
このホールは、紅白歌合戦開催を前提に作られたホール?...
設計当時の1970年代初期、肉声で歌うオペラ公演やオーケストラコンサートは勿論、当時の「低出力アナログ拡声装置」を使っていた紅白歌合戦でさえホールの隅々まで音を行き渡らせる事はなかなか容易ではなかった。
現在でも勿論PA必携の「多目的劇場」で生音や肉声を使う「オペラやコンサートにはあまり適さないホールでもある。(※2)
※2,しかし「音より儲け」主義の呼び屋(weblio辞書)の(公財)日本舞台芸術振興会は新国立劇場(※当サイト紹介記事はこちら)を使わずに、NHKホールを御用達ホールにしている。マッタク演奏家・聴衆を蔑(ないがし)ろにしている団体ではある。
第3楽章 NHKホールの施設データ
Official Website http://www.nhk-sc.or.jp/nhk_hall/index.html
NHKホールのロケーション
ところ 東京都渋谷区神南2丁目2番1号
NHKホールへのアクセス
最寄りの駅 JR原宿駅・地下鉄千代田線明治神宮前駅から徒歩10分
NHKホールの公演チケット情報
NHK交響楽団でさえめったに使わない、(公財)日本舞台芸術振興会・オペラ興行御用達ホール。
2017年現在「コンベンションアリーナ」を除くパイプオルガン装備の「多目的芸術ホール」としては収容人員3,800人!で国内最大規模!を誇る。「紅白歌合戦」などの国民的イベントで知られている「多目的演芸場?」。
詳細データ
- 所属施設 NHKホール。
- 運営団体 一般財団法人NHKサービスセンター。
- 開館 1972年
- ホール様式 扇形プロセニアム型式多目的ホール。
- (公式客席配置図・座席表はこちら)
- 客席
最大幅 48m 最大奥行 48m
1F 890席 ピット オーケストラピット可動床部分160席
2F 1,335席
3F 1,175 席(補助席201席)
計 3,400 席(最大3,601席) - 舞台設備 、
固定プロセニアム 幅20m, 高さ10m
可動プロセニアムアーチ 幅22.3m~14.3m 高さ10.7m~7.5m
フライズ高さ 24.3m
奈落深さ 9.5m
メインステージ 幅25m、奥行20m 面積500m2
サイドステージ 面積800m2
バックステージ 面積185m2
エプロンステージ 面積105m2(オーケストラピット)
大ぜり 15m×5.4m 1基
小ぜり 1.8m×1.2m 3基
スライディングステージ 40.5m×5.4m 1基
オーケストラピットせり 18.8m×1.8m 3基
エプロンステージ上部可動天井 1基
可動音響反射板 1式
- その他の設備 パイプオルガン
- 付属施設 楽屋(個室x9、大部屋x9)、リハーサルルーム等
- 設計 日建設計
- 音響デザイン NHK放送技術研究所。
公開:2017年9月 3日
更新:2022年9月27日
投稿者:デジタヌ
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