郡山市公会堂《ホール音響Navi》
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大正13年生まれの活きた文化施設
郡山市郡山公会堂のあらまし
1925年開館の活きた文化財!
1880年完成 豊平館/札幌市 (※ホールNaviはこちら)
1987年完成 旧東京音楽学校奏楽堂(※ホールNaviはこちら)
1916年完成 文翔館/山形市(※ホールNaviはこちら)
1917年完成 横浜市中区公会堂 (※ホールNaviはこちら)
1918年完成 大阪市中央公会堂 (※ホールNaviはこちら)
1927年完成「兼松講堂」(※ホールNaviはこちら)
1927年竣工「大隈講堂」(※ホールNaviはこちら)
等と並んで国の国の登録有形文化財となっている。
郡山市郡山公会堂のロケーション
ところ 福島県郡山市麓山1-8-4
郡山駅からフロンティア通りを西に1.8kmほど辿ったところの「はやま通り」から1区画下った一角の裏通りに面して郡山市中央公民館、郡山市歴史資料館と共に佇んでいる。
男女共同参画センター、福島中央テレビ、NHK文化センター、けんしん郡山文化センター、福島県郡山合同庁舎、福島簡易裁判所、郡山税務署、などがある市の中心部官庁街になっている。
又前途図書館の隣は麓山公園で道を挟んでその隣は21世紀記念公園、公会堂の南には、酒蓋公園、荒池公園、そして北西には野音のある開成山公園があるなど、一帯は市民の憩いの場ともなっている。
郡山市郡山公会堂へのアクセス
もよりの駅
郡山駅西口より徒歩約30分/1.8㎞
バス停
バス
郡山駅前1番バス乗り場からコスモス循環池の台回 →郡山図書館下車
マイカー利用の場合
すぐ東側に広大な公共施設共用駐車場があるのでマイカー利用も可
郡山南ICから内環状線経由 8㎞約16分
郡山中央ICから新さくら通り経由 6.2km約16分
国道4号線から文化通り経由 2.8㎞約9分
音響面から眺めた郡山市郡山公会堂
Official Website https://www.city.koriyama.lg.jp/soshikinogoannai/kyoikuiinkai/kominkan/chuokominkan_kinroseishonenho_mu/gomu/1/1/4813.html
※ご注意;以下※印は当サイト内の関連記事リンクです。
但し、その他のリンクは施設運営者・関連団体の公式サイト若しくはWikipediaへリンクされています。
フロアー構成
スタッキングチェアー168席を並べられるメインフロアーは、大理石張りで極々わずかな傾斜面となっており、2階後方に4段4列のバルコニー石が設けられ、両サイドには1列のサイドテラス席が設けられている。
基本メインフロアーは2階バルコニー席を支える6本の鉄柱の内側にスタッキングチェアーを並べて使用すし、2階バルコニー席の下部は通路として使用されている。
メインフロアー両袖、背後合わせて6本の柱で2階バルコニーを支えているが、2階バルコニー席にはホール内に突出した柱は無く2階バルコニー席の見晴らしは良い。
壁面
壁面は1917年(大正6年)開館の横浜市中区公会堂(ホールNaviはこちら)同様に、フロアレベルから概ね1間(約1.82m)ぐらいまでが丁寧に縁取りされた木質パネルで、その他の壁面は漆喰仕上げのプレーンな面で、両側壁合わせて12本の梁台座が付いた立派な柱の間は、二か所の非常口と明かり取りの窓になっており、窓の部分は分厚いカーテンが備えられている。
ステージ回り
プロセニアム
当時流行ったサブプロセニアムアーチを持つ、小さなステージで当時の目的が、観劇、音楽鑑賞ではなく「大正デモクラシー」の主役政党演説会?であったことをしのばせる。
天井
ホール全体は大ピッチの格天井(※1)で囲まれており、中央部分が折れ上がったヴォールト(※2)になっており、ヴォールト中央部も9面の格天井になっている、4隅と中央部分に行灯型の照明区具が備え付けられている。
想定定在波と対策について
客席間口約18.7m;約18.6Hz/1λ、約28Hz/1.5λ、約37.3Hz/2λ、約46.6Hz/2.5λ、約56Hz/3λ、
奥行き約26.4m(1階最大奥行き);約13.2Hz/1λ、約19.8Hz/1.5λ、約26.4Hz/2λ、約33Hz以上Hz/2.5λ、約40Hz/3λ、
1F最高部天井高さ約7.5m;約46.5Hz/1λ、約70Hz/1.5λ、約79Hz/2λ、約99Hz/2.5λ、約140Hz/3λ、
(※2階バルコニー席は段床なので定在波の心配は無い?)
赤字は可聴帯域内重低音
間口・奥行き方向共に1波長の基本定在波は可聴帯域(20~20KHz)外の低周波振動であり、柱間のカーテンを引いておけば、太鼓鳴り物?が無い小編成の弦楽アンサンブルであれば目に見えた(耳に聞こえる?)音響障害は生じないと思われるが...。
総評
格天井に平土間という「高さ方向定在波」が生じやすいデザイン(※3)で高さが7m、8mというのは実被害も生じやすいがデザインで、最低音のA音が24Hzまで出る「フルコンサートグランドピアノ」のリサイタルは避けたほうが良さそうである。
しかしピアノリサイタル」以外のチェンバロ等の演奏会では問題も生じずに往時をしのばせる「素晴らしい余韻」にしたれるホールであろう。
定在波評価について
ご老体?(歴史遺産)には少々厳しい評価かも知れないが、現代音響工学のお手本「大隈講堂」(※ホールNaviはこちら)が2年後の1927年に竣工し、設計当時にはすでに佐藤武夫先生が多くの論文を発表されており、現在の指標で評価した。
特別な定在波障害回避策(※4)は壁面間距離のセオリーのみで他に対策は見当たらず1階メインフロアー全席で高さ方向定在波が生じている可能性があり、基礎点は25点とし音響障害エリア点を1点減じたが、スタッキングチェアー席なので客席アレンジ(通路配置)には融通が利くので、音響障害席は"0"査定とした。
ホール音響評価点:得点62点/100点満点中
§1 定在波対策評価;得点21点/配点50点
- ※各フロアーの配置・形状、壁面形状、をオーディエンス周辺壁面(概ね人の背の高さ:約1.8mの範囲内)の設えで評価する。
- ※ホール床面積(or総客席数)の1/3以上に及ぶ範囲が「完全平行な垂直平面壁」で挟まれているときは、 基礎点25点に減ずる。
- ※但し、壁間距離が20m以上あり定在波周波数が可聴帯域外(20Hz以下)の場合は基礎点50点にすえおく。
- ※また扇形段床などの座席アレンジで、実被害を回避し、被害席が生じていない場合も基礎点50点にすえおく。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§2 残響その1 「初期反射」軽減対策評価;得点23点/配点25点
- ※木質パネル等の素材基礎点25点から硬質壁材基礎点12点の間5段階で素材基礎点を与える。
- ※障害箇所1点/1箇所で基礎素材点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§3 「音響障害と客席配置」に対する配慮評価;得点14点/配点20点
- ※壁際通路&大向こう通路の有無、天井高さ&バルコニー・テラス部の軒先高さ、平土間部分の見通し(眺望)不良、それぞれ-1点/1箇所で配点から減じて基礎点とする。
- ※基礎点に障害エリア客席数比率を乗じて算出する
§4 残響その2「後期残響」への配慮評価;得点4点/配点上限5点
- ※壁面形状、音響拡散体(相当要素)、テラス軒先形状、天井構成、その他の要素で評価。
- ※上限5点の範囲内で上記1点/1アイテムで加算評価。
算出に用いた値;
※関連記事 「ホール音響評価法についての提案」はこちら。
消防法(条例)遵守の届け出定員300席を基本に算出。
定在波評価
基礎点B1=基礎点25点ー障害発生エリア数3=21点
音響障害エリア;一階下手・中央・上手座席全席
定在波障害実被害席総計;0?席
初期反射対策評価
※障害発生エリア壁面材質がプレーンな木質プレートなので素材基礎点23点とした。
基礎点B2=素材基礎点23点ー障害発生エリア数0=23点
初期反射障害1 壁面障害席 ;0?席
初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0?席
音響障害席総計;0?席
客席配置評価
※座席配列は12席x14列のホール推奨配列を基準に算定した。
基礎点B3=基礎点20点ー障害発生エリア数3=17点
眺望不良席数;52席/1階平土間中央部座席2~14列5番~8番
音響不良席その1 定在波障害顕著席 ;0?席
音響不良席その2 初期反射障害1壁面障害席 ;0席
音響不良席その3 初期反射障害2 天井高さ不足(2.5m以下)席;0席
重複カウント ;ー0席
音響障害席総計;52席
算定式
評価点V=基礎点X(総席数ー障害座席数)/総席数
郡山市郡山公会堂の施設データ
- 所属施設/所有者 郡山市郡山公会堂/郡山市。
- 指定管理者/運営団体 郡山市。
- 開館/竣工 1925年開館/ 1924年10月完成
- 設計 荻原貞雄
- ゼネコン 清水組
講堂様式
公民館様式・プロセニアム型式舞台付き平土間2階バルコニー席付き2層型式
- 床面積 最大幅約23mx最大奥行き約33m、延べ床面積約759㎡
客席仕様
2フロアー 最大幅約18.8mx最大奥行約20m(26.4m/大向こう壁面→舞台背後壁面)、天井高さ(最高部)約7m
収容人員300席、大理石張り、
内訳
- 1階席X168席;1階可動席168席スタッキングチェアー、
- 2階席X132席;(2階サイドテラス席(桟敷席)X44席、、含む。
舞台設備
プロセニアム形式
- 有効幅約6.8mx(最大奥行き約6m)有効奥行き約4.6m/緞帳→ホリ幕、有効面積;、ステージ高さ;FL+約100cm、
- プロセニアムアーチ:間口約6.8m、高さ約3m、本舞台実用幅約6.8m、本舞台実用面積;約31.3㎡(約19畳)
- 吊りもの類 照明ブリッジ・バトン;サスペンションライトX?本、ボーダーライトX?本、プロセニアムライトx1、美術バトン;?本(幕装備除く)、
ホール付属専用施設
- 控室、X1室、出演者用トイレX1、
付属施設配置・見取り図
- 館内施設・フロアー配置図
施設利用手引き
- 全館(付属設備・機材・備品利用料金含む)利用料金案内はこちら。
郡山市公会堂のある郡山市とは
旧陸奥国安積郡にあった、仙台市、いわき市に次いで東北第3の人口を有する。郡山都市圏の中核市でもある。
推計人口、332,824人/2018年4月1日
郡山ー福島市 46分/840円/JR東北本線/46.1km
郡山ー東京 1時間21分/¥8200ー/新幹線
郡山市郡山公会堂のこれまでの歩み
1925年(大正13年)10月、オランダデン・ハーグの平和宮、および大阪市の大阪市中央公会堂をモデルに郡山市の建設された。
1998年頃 建築当初塔屋に設置されていた時計を復刻。
2002年、国の登録有形文化財に登録された。
2005年7月17日、音響、照明等設備のリニューアル改修工事竣工、建設当時の御影石の外壁、ルネサンス様式の天井、ステンドグラスをはめ込んだ窓など復元。
郡山市公会堂がお得意のジャンル
主にセミナー、講演会、市民団体の集会、お稽古事の発表会などに用いられ、ソリストのリサイタル、アンサンブルの演奏会、なども行われ、また展示会、パーティー・レセプションなどの会場としてもつかわれている。
参照欄
※1、格天井については 第4章第2節 伝統的手法『格天井』の音響効果 をご参照ください。
※2、「ヴォールト」デザインについてのWikipediaの解説はこちら。
※3 第4章第1節「高さ方向定在波の音響障害」回避策 はこちら。
※4 ホールデザインの基本"定在波の阻止・駆逐" 法はこちら。
公開:2019年5月14日
更新:2022年9月30日
投稿者:デジタヌ
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