狸穴ジャーナル『タヌキがゆく』

第65話 鉄治の夢 その1《連載小説》在る鉄道マンの半生 69年間待ち続けた男

※<本稿は03/24/2008に旧サイトで初稿公開した小説のお引っ越し掲載です>

ー 阪神・近鉄友情物語 ー 第65話

南紀の悲願 大阪"南北串刺し路線"「なにわ筋線」実現の夢


2008年3月11日「阪神なんば線地下トンネルが前日10日に貫通した」との知らせが鉄治のもとに入ってきた。


「後一息で長年の夢が叶うのか...」

徹路の脳裏には62年間の出来事が走馬燈の様に駆けめぐった。

思えば1997年(平成9年)3月8日のJR東西線開業により、改めて浪華 "串刺し路線"の存在意義が見直され、JR東西線の大成功が阪神なんば線実現に向け、地元(大阪市)の態度を軟化させた最大の要因ではないか、と徹路は考えている。

さらに現在、建設中の京阪中之島線完成後、阪神野田駅方面に延伸し、阪神ー京阪の相互乗り入れを実施する案も検討されだしていると聞いている。

国道1号線沿いに伸びた京阪と、同じく2号線沿いに伸びた阪神が結ばれれば、大阪近郊の交通事情は劇的に変わるであろう。

JRの前身国鉄でさえ実現できなかった、東西幹線国道沿いの"串刺し路線"が実現することになる。

ご承知の通り、東海道本線は、沿線住民の反対にあい、1国、2国から遠く離れた所に引かざるを得なかった経緯がある。

今でこそ梅田界隈は大阪を代表するキタの歓楽街として有名ではあるが、東海道本線が敷設された頃は、町外れの集落にしか過ぎなかった。

「地の果てにたどり着き、眼前に大海原が広がりでもしない限り、鉄道に終点は無い!」

というのが鉄道マンとしての徹路の哲学である。

ましてや、地の果てでもない近畿のど真ん中の大阪が鉄道の終点になり、乗り継がなければその先に進めないなど、徹路には容認出来ない事であった。

だから阪神ナンバ線を69年間も待ち続けることが出来たのである。

そして、徹路が更に69年間待つことになっても、実現して欲しいと思っている今一番の夢は、"南北串刺し路線"の実現である。

それはナニワ筋の地下に地下路線を建設し、近鉄・JR・南海が共同運行で新大阪駅に乗り入れて、

大阪南部と新大阪が一本の鉄路で結ばれる事である。


大阪市に阻まれ新大阪と大阪空港の両・交通結節点 へのアクセスに不便を強いられ、経済活動を著しく阻害されてきた和歌山市や堺市に取っては、乗り換え無しでアクセス・ハブへ直結することは長年の悲願でも有った筈である。


近鉄が音頭を取って、JR、南海、そして、奈良県、和歌山県、堺市、和歌山市などの周辺自治体、関電、NTT西日本、大阪ガス、住金、UFJ銀行...等など、関西の財界に働きかけ、関西の総力を挙げれば、㎞当たり500億円、総額5千億円超とも言われる建設費を集めることも決して夢ではないと徹路は考えている。


関西ゆかりの企業に出資を仰ぎ、浪華高速鉄道を立ち上げ、近鉄、JR、南海が共同運行で相互乗り入れを実施すれば、大阪の鉄道の歴史はじまって以来の快挙となるであろう。

<続く>

 

公開:2008年3月24日
更新:2022年9月 5日

投稿者:デジタヌ

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