第63話 徹路が思う20世紀を代表する日本の土木工事《連載小説》在る鉄道マンの半生 69年間待ち続けた男
※<本稿は 03/21/2008に旧サイトで初稿公開した小説のお引っ越し掲載です>
ー 阪神・近鉄友情物語 ー 第63話
土木学会の取材に来た業界紙の記者に20世紀を代表する土木工事について質問されたことがあった。
その時、徹路は以下の4つを取り上げた
青函海峡トンネル
1961年(昭和36年)3月近鉄で言うと中川短絡線が完成名阪ノンストップ特急の運行が開始された同月23日北海道吉岡で斜坑の掘削が開始され、1971年(昭和46年)11月27日に本抗の起工式が行われ、1985年3月10日14年の歳月をかけ貫通した青函隧道。
明石海峡大橋
1988年(昭和63年)5月2着工され1998年(平成10年)4月5日完成した明石海峡大橋。
瀬戸大橋群
1978年(昭和53年)10月10日坂出市で起工式が行われ11月に着工され、9年6ヶ月の歳月を費やし1988年(昭和63)年4月10日開通した瀬戸大橋群。
東京湾アクアライン
1987年(昭和62年)7月着工、1997年(平成9年)12月18日開通の東京湾横断道路。
これらの工事は20世紀を代表する日本の土木工事だと徹路は思っている。
勿論全国に伸びた、高速道路網と新幹線網も一つの事業だと考えれば日本の20世紀を代表する日本のビッグプロジェクトには違いない。
しかし徹路にとっては
この4つが一番記憶に残る土木工事だし中でも明石海峡大橋は20世紀を代表する日本の土木プロジェクトだと考えている。
鉄道技術者としては、鉄道・道路併用橋として建設され、将来は新幹線2線の増設も計画されている瀬戸大橋に魅力を感じないこともない。
しかし何と言っても、ほぼ10年の歳月を費やし、工事中に襲った阪神淡路大震災にも耐え、立派に完成した明石海峡大橋は、久しぶりに徹路に血湧き肉躍る感動を蘇らせた。
各地で開かれる土木学会の会合でこれら4つの現場には何度も訪れたが、明石海峡大橋だけは訪れる度に徹路の胸を強く打った。
青函トンネルや東京湾アクアラインは難工事には違いないが、やろうと思えば徹路でも完成させた自身はあるし鉄道屋としては瀬戸大橋群にも惹かれる。
しかしそのどれよりも明石海峡大橋には鉄治を奮起させる魅力があった。
おおむね㎝単位の土木工事にあって1/100ミリ単位の高精度、そしてその規模。
徹路があと40才若ければ間違いなく近鉄をやめてでも、この橋の建設工事に飛び込んだであろう。
それぐらい惚れ込んで要る建造物である。
徹路はその明石海峡大橋によくブラっと出かけた
未來のところの孫が小さかった頃は孫の手を引いてよく出かけた。
車の運転が出来ない鉄治は、近鉄、地下鉄、阪神、山電と乗り継ぎ明石まで行き、
ご存知"タコフェリー"で橋の下をくぐり下から眺めるのが好きであった。
往復数十分の船旅を孫と楽しみ、明石名物"明石焼き"を食べ帰ってくるのである。
短い船旅の間に、若い頃経験した土木現場を思い出し、あとは時の流れをのんびりと楽しむのであった。
<続く>
公開:2008年3月21日
更新:2022年9月 5日
投稿者:デジタヌ
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