タヌキがゆく

【鉄道フィクション】69年間待ち続けた男、第61話 徹路の苦悩

※<本稿は 03/20/2008に旧サイトで初稿公開した小説のお引っ越し掲載です>

"阪神・近鉄友情物語" ー在る鉄道マンの半生ー【小説】69年間待ち続けた男。

徹路は寮に残っていた6人1人1人に頭を下げて回った

彼らは、徹路が近鉄の現場で監督をしていた頃からの長いつき合いで、何れも60才以上の高齢者だった。

復員兵で帰国し、戦後の近鉄の復興期から一緒に現場で苦楽を共にした仲間も居る。

彼らは、鉄路の旗揚げを知り全国から集まってきてくれた人たちであった。


『亀さん済まない、私の力がいたらなくて』
『イヤ良いんだヨ、俺れもこの辺りが引け時きかと思っていたんだ。』
『申し訳ない...』
『手を上げてくれ、徹路さんのおかげで年金も貰えるようになったし、田舎にでも帰ってのんびり暮らすことにするよ』
『亀さん...』


『建さん申し訳ない。』
『そうだよ、ひどいよ出てけなんて!』
『ほんとに済まない...。』
『俺はまだまだ働けるんだから...徹路さんも知ってるだろ?』
『ああ、よく判ってる、...』
『だったら、...』
『建さん、許してくれ、会社が...』
『会社って、徹路さんの会社じゃないか?』
『金造君に社長を譲ったモンだから...』
『ジャー、金造が(オレを)首にしろって言ってるのか?』
『イヤ、金造も辛いんだが、会社が左前に成ってしまって居るんだ...。』
『左前?』
『気楽に考えていた、ワシが悪いんだ許してくれ。』
『...まあ徹路さんにそう言われたら仕方無いけど、俺はまだまだ若いモンなんかに負けないくらい働けるんだけどな...』
『済まない...。』
その若い連中から、名指しで役立たず呼ばわりされている事など本人に言えなかった。

『作治さん、済まない』
『金造さんから聞いてるで、』
『聞いててくれたか、済まない。』
『まあエエがな、徹路さんとは、あちこちの現場で楽しゅうでけたし、もうエエ、思い残すこともないわ。』
『思い残すことだなんて、作治さん...』
『徹路さんのおかげで、小銭も貯まったし、どっか養老院にでも行くは...。』
『養老院だなんて、作治さん...』
『若いモンから役立たず呼ばわりされてることもしっとった。』
『...』
『実は、肝臓悪うしとって、最近めっきり身体が言うこと聞かんようになっとんたんや。』
『最後になって、徹路さんに心配懸けてもうたな...、堪忍してや。』
『作治さん、謝らなけりゃいけないのは、こっちのほうだよ。』
『徹路はん、かまいんネン、気い使わんといて...。』
『俺で、出来ることがあったら何時でも要ってきてくれ。』
『そやな、葬式の時に弔辞でも頼むは、ワ、ハ、ハ、...』

ただ1人74才になる山田耕筰だけは、身よりもなく「元気で働ける内は、徹路と一緒に近鉄の仕事をしたい」と言うので、バブルの時に作った、鉄路警備に移って貰った上でガードマンとして残って貰うことにし、徹路が保証人になって近所にかろうじて残っていた文化住宅を借り、住まわせることにした。


<続く>

公開:2008年3月20日
更新:2018年6月17日

投稿者:デジタヌ

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