呼吸法と姿勢その1《 ホルンの奏法 と習得術 》腹式呼吸法の嘘とは...?
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横隔膜を意識した腹式呼吸法の謎?
クラウド・ゴードンさんの著書「金管演奏の原理」でも批判されていたが、舞台俳優や、アナウンサー等の声を出すことを生業としている人々を中心に「横隔膜を使った腹式呼吸法をすべし」なる信奉がはびこっている。
さまざまな教義があるが、なかでも一番非論理的で不可解なものの一つが「横隔膜を使った呼吸をせよ」と言うくだりである。
小生も、色々やってみたが無理だった。
聡明な読者はご存じだと思うが、横隔膜は随意筋ではなく単なる膜である。意図的に動かせるはずもないものだ。
横隔膜呼吸教の方はこのことを知っておいでなのか?(特に徳光さんにきいてみたい)。
まあ、一つ医学的にはっきりしていることは、人間誰でも「眠っているときは腹式呼吸をしているらしい。」ということである。
ということは眠りながら声を出す...?つまり寝言。
それこそ寝言を言うな!!
である。
確かに「充分な息の支え」のもとに声を出さないと、張りのある良く通る力強い声が出ないうえにすぐに喉を痛めてしまう。
だが、いったいどういう風に「意識」し「鍛錬」すれば「いわゆる複式呼吸」ができるのか、具体的な記述がある呼吸法に関する本には今のところ巡り会えていない。
なぜか洋の東西を問わず、呼吸法に関しての説明は「観念的な表現」が多いようで、いまひとつ理解に苦しむことが多い。
邦楽の尺八では「ケツの穴を締めろ」と指導されるらしい。
ちょっとこれだけでは小生には理解しがたい。
「観念」より「概念」を重んずる理科系出身の小生は「息の支え」を作るには脇腹の筋肉が重要であると理解している。
美人トランペッターのアリソン・バルサム嬢、ベルリンフィルのホルン奏者サラ・ウィリス嬢、お二方とも横から見れば、出るところは出、引っ込む処は引っ込むいわゆる「女性的なスタイル」だ。正面から眺めれば和服が似合いそうに見受けられる(サラ・ウィリス嬢の着物姿のホルン演奏がYoutubeにあった)。
脇腹の筋肉がかなり鍛錬されて発達しているのかもしれない。
話は女性の体型にそれてシマッタ?...が、呼吸法に話を戻すと。
エンジン(レシプロ圧縮機)にたとえると、
アクチュエーター(駆動部分)は「脇腹の筋肉群」であることは間違いなさそうだ。
袋でしかないの肺(シリンダ)の容積を自在に変化させるためには、肋骨という外枠で肺を固定し、ピストンである横隔膜を、コネクティングロッド(連接棒)である内蔵を脇腹筋肉群で上下させるということになる。
ところが99パーセント水分の内臓組織そのものは概ね非圧縮(体積が普遍)に近いが、胃が空っぽになっていて中に「ゲップ」でも貯まっていようものなら、ゲップは気体なので圧縮変形(体積が変化)してしまい、コネクティングロッドに必要な「剛性」が不足しアクチュエーターの微妙なコントロールをシリンダーとなる肺に伝えにくくなってしまう。
声楽家や管楽器奏者は、本番直前はあまり重い食事は取らず、スープか飲料だけにしておく人も多い。
これは、食事をたっぷりとってしまうと消化のために胃の蠕動に伴う容積変化がコネクティングロッドとしての機能を損ない、アクチュエーターによる微妙な息のコントロールを阻害すると考えれば納得がいく。
演奏中の水分補給は欠かせない!なぜなら唇の乾燥対策だけでなく胃の体積を大幅に変化させる「吞気(胃の中に空気がたまること)現象」の対策にもなるからだ(当然、炭酸飲料や"発泡酒"はを胃の中に気体がたまる原因になるので、"演奏前"も含めて御法度!)。
公開:2017年4月 2日
更新:2018年12月15日
投稿者:デジタヌ
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